2章24話 お風呂で再会

 普通に迎え入れるつもりで連れてきた。だが、幼馴染とはいえいつもは雪か司の部屋どちらかに集まっていたため流石に綾も緊張している。


「へぇーかなり広いな。ベットもあるし机もある。服をかけるクローゼットまであるじゃん!かなり揃えられてんな。」


 雪がこちらの方を見て何か言わないかドキドキしていた。するとやはり


「やっぱり女の子だけあって可愛いもの多いし片付いてるなぁ、私なんか必要最低限なものくらいしかないから。」


(きた!雪君に部屋見られるくらい大丈夫と思ったのに顔熱い。どうしよ、バレたらマズイ!)


 会話を変えないといけないと思った綾は寮母の話を思い出して寮の案内をすることにした。


「よし、荷物も置いたし寮を案内するよ!着いてきて!」


 逃げ出すように外に出る。前から見られたらいけない気がして。


「あ、おい先に行くなよ。追いかけるかぁ、にしても初めて綾の部屋に入ったな。緊張してるの伝わってないといいんだけど。」


 そう言いながら部屋を出る雪もまた耳が少し赤くなっている。


「というわけでここがみんなの共有スペースでよく話したり休憩したりするところ。

あっちには食堂があって京ちゃんの料理が食べられるよ。あとあの扉の奥が脱衣所になってて奥にお風呂場があるからあとで入ろうね。とりあえずはこのくらいかな、あとはおいおい説明しよう。」


流石にいっしょには入らないよな!?小さい頃入ったっきりだし、今は女とはいえ元男と入るわけないよな!


 とてつもなく不安な言葉を聞いた気がするが聞き返すのも危ない気がして聞けなかった。

 それからしばらく部屋で綾と話していると

「よし!お風呂行こうか!着いてきて?」

 そう言うので着替えを持って着いて行った。


「ここが脱衣所で、雪君銭湯入ったことあるよね?あそことルールは同じだよ。体を洗ってから入る、走らない、タオルはお湯に入れない。それじゃ入ろう!」


 そういうと綾は服を脱いだ。いやいやいや、何脱ぎだしてんだ!?

 すかさず俺は止めに入る。


「いや待て!?私がいるのに入るの!?別ではなく!?と言うか気にしないの!?」


「うーん、昔入ってたし、雪君なら安心だから大丈夫。流石に他の人だと無理だけど。」


確かに入ってたけど……それって小学生の低学年までだろ!?


「私でもダメだろ・・・うわっ」


「さあさあ!脱いだ脱いだ!いっくよー!」


 俺は綾に強制的に脱がされ風呂場に押しやられる。しょうがない、もう男に戻れないし割り切るしかない。


 俺は女俺は女俺は女俺は女


 体を洗っていると綾が俺の体に触ってくる。びっくりした。


「雪君ってすごく肌綺麗だよねー赤ちゃんみたい!触らして!お願い!」


「いいよ。」


 俺は女子ならこう言うこともするのかと了承する。


「ぷにぷにだー!それにそれっ!お胸も小さくてかわいいー!」


「!?何!?」


 流石に胸を触られると思わなくてびっくりする。それに胸のことで起こるのも変な話だがむかついた。


「別に小さくない!綾がデカすぎるだけ!いくつあるんだよそれ。」


「んー?ヒミツ?それより入ろっかお風呂。」


 明らかに話題を逸らされた気はしたが踏み込み過ぎた気がしたので従う。


(はあー極楽。)


「ここのお風呂きもちいいでしょー疲れた体に効くんだー。」


「そういえばあのドアの先どうなってるの?サウナ?」


 俺は奥にある扉を指さして聞いてみる。窓もなくて奥が見えない。


「いや、あの先は温泉の露天風呂だよ。十代くらい前の寮生が温泉好きだったみたいで有志を集めて温泉が使えるところまで転移してくれるの。」


「変な人もいるもんだね。」


「それで言うと寮の部屋の空間拡張もそうだよ?男子は寮自体は学校で拡張してるけど部屋はしてないから。」


 ここに来て女になったことに感謝することになるとは。


(それにしても大きいと浮くんだな。)


 綾に言ったら殺されそうなことを思いつつ風呂を楽しんだ。俺が露天風呂に行こうと言うと

「雪くん先に露天風呂行ってて?後で行くから。あ、それと寮の人とか学校の人の前で君付けだとまずいからちゃんに直すね。」

とそう言っていた。綾の中ではもう女として扱うつもりなのだろうか。



「雪ちゃん綺麗だったなぁ。肌も綺麗だし、胸も張りも柔らかさもあって可愛かった・・・」


(って何言ってんの私!?相手は幼馴染の雪君だよ!?そりゃあ私が男の子だったら彼女にしたいくらいだけど男の子だったんだし今は女の子だし、幼馴染で親友にそれ以上なんて感じてない!!断じて違う。ただ感想を思っただけ!そうそうだよ!)


顔を真っ赤にして湯の中で暴れる綾は言い訳じみたことを言いながら親友が女の子になっただけと思うことにした。そう思うなら胸のサイズを誤魔化したりしないような・・・いや、知られたくなかっただけだそうだそうなのだ。



 扉を開けると明らかに寮のあった土地とは違う場所にある露天風呂が目の前にあった。


「おーここが露天風呂か。すごい綺麗!景色見ながら入ろう。あ、先に人が来てる。」


 半ば自己暗示的に女になることを決意した俺は先に風呂に入っていることなど気にしないで入る。が、相手側がこちらに寄ってきた。

 流石にやってこられて意識するとまだ恥ずかしさやら居てはいけない犯罪感が出てきてしまう。


 ちょっと待ってまだ心の準備が―———


「あなたを待ってた。ここにいれば会えると夢に出たから。」


 俺を待ってた?それにしてもこの声どっかで…… 


 湯気で隠れて相手の顔が見えない俺は目を凝らす。するとだんだん見えてきて見覚えのある美少女がいた。


「あ!あなたはデパートであった人ですよね?でも私を待ってたってどう言うことですか?」


「私は怜。【銀嶺 怜】予知夢であなたといると私の願いが叶う夢を見たから会いにきた。」






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