2章22話 模擬戦
「あーお腹痛いw」
「笑うな!で?雪君はどうなの?」
俺の番になったがまだ2人に伝えてない事があり申し訳なさそうに伝える。
「まず、あの紹介で言った能力は嘘言ってるんだ。実は3つ能力がある。」
「はあ!?能力は持ててもメインとサブの二つまでだろ!?」
「よく分からないんだけど能力の得方が特殊だったからとかじゃない?まあ、これは他の人には言えないからここじゃ言えない。後でね。」
「とりあえず分かったよ。それで雪君、血液操作は紅さんと同じだろうから出来ることだけ教えて?」
「まあ、見せた通りある程度の操作はできるって感じ。【血刀・血桜】」
俺が詠唱すると手元に鍔のない抜き身の血刀が出現する。
「これはとにかく切れ味を追求した技ってところかな。」
「カッコいい!これ私持ってみたい!」
「ごめん、流石にまだ手から離すのは難しい。」
嘘である。俺は父さんから学校では模擬戦などもすることを聞いてある程度能力を隠すつもりだ。
「残念、じゃあ吸血は?」
「血が美味しい!」
「それだけ?もっと何かないの!?眷属にしたりとか!」
「・・・・冗談だよ。吸血は血を吸う事で血に含まれる魔力を吸収して強化する事ができるんだ。例えば吸収した魔力で身体強化したりね。
秘密にしときたかったけど2人も教えてくれたし一つ応用技を見せてあげる。【血刀・血桜】+【吸血】 【簒奪刀】」
俺の持っていた血桜に禍々しい光が灯る。
「この技は血桜に吸血の効果を付与する事で切った相手から魔力を奪える。文字通り魔力を簒奪する剣だ。」
「なるほど放出系と特殊系の能力の合成か。考えたね。」
流石司、賢い。俺の考えた技をすぐに見破るなんて。
「でも、血を吸わなくても吸血って使えるの?」
「そこは朝、母さんに血を貰ったから。吸血で得た魔力で刀を強化して付与するんだ。だから何もなしではできないね。」
(これは本当。流石に全部嘘でしたとかないしな。)
「おーいお前らそろそろ授業開始するってー!」
クラスメイトが呼びに走ってきた。
「おそらく楽しい事が待ってるよ?」
何か知っていそうな綾と司は先に歩いて行った。
「いつもみたいに能力向上訓練をするとこだがまだ血桜の課題が分からんから模擬戦をしてもらう。誰か相手したい奴いるか?」
楽しいことってこれか!司がニヤニヤしてやがる。でも俺も戦ってみたいんだよな。今の俺がどの程度なのか試したい。
「私が相手する。」
すぐに手を上げた人物に目を向けると符堂さんだった。俺が何をしたんだか。
「絶対負けないから!勝負しましょ。もし勝ったら勝者の言うことを一つ聞くと言うのはどう?」
何故か敵対心を燃やしてる符堂さんが相手として模擬戦が始まった。
「はじめっ」
「【血刀・血桜】」
「【五行 土礫】」
とてつもなく速い土の塊が俺めがけて飛んできた。密かに目に吸血で得た魔力を流す。礫が良く見えるっ。
俺は血桜で礫を打ち払う。
「ハァッ!このくらいなら何とかなるな。こっちからも行くよっ!」
足に魔力を溜めて一気に突撃する!
「【五行 土石流】」
つもりだったけど近寄らせてくれない!やっぱり実戦経験の差が痛いなぁ。
「あなたは遠距離攻撃を持たないみたいだから近寄らせずに魔力切れを狙うわ。」
なんて的確な予想!確かに遠距離、投擲武器はまだ作れない。マズイな、ジリジリ追い込まれてる!
そうして、しばらく戦っていると勝敗は誰の目にも符堂さんに傾いているとみられていたのだった。
「もう、魔力が無くなりそうね。目にも使っていたようだから早く切れると思ったわ。」
強い。限りなくねられた観察眼だと思った俺は切り札を使うしかなかった。どうにか傷さえ出来れば!
「ハァッ!切れた!」
全力に近い速さで符堂さんとの距離を詰めた俺は符堂さんの肩を切ることに成功した。これで簒奪刀が作れる!
俺が反撃に出ようとしたのに符堂さんはつまらなそうな声でしゃべりだした。
「どうやら最後の力で傷をつけたみたいだけどもう終わりね、魔力が底をつく寸前じゃない。これで私の勝ちよ、司君は諦めて。」
「は?」
これから逆転しようかと思った矢先訳のわからないことを言われて気力が削がれる。え、何?こんなに符堂さんに目の敵にされてるのってやっぱりあのイケメンのせいなのかよ。
「あー勘違いがあるみたいだけど司とは幼馴染なだけだから。そう言うのじゃないからね?」
今まで俺を女子だと勘違いして突っかかってきた女子に対して言っていた言葉を口にする。
「呼び捨てにするなぁー!羨ましくてしょうがないんだから!幼馴染ってだけで近くに居られるとか妬ましい!さっさとやられろー!」
「最後の八つ当たりでしょ!?さっさとおわらせよう。【血刀・血桜】+【吸血】 【簒奪刀】 ハァッ!」
「【五行 土石流】!えっ、割れた!?」
そう、この【簒奪刀】は魔力を吸う能力があるため能力に当てれば切る事ができる。これはできるだけ取っておきたかったんだけどなぁ。
「きゃあ!」
俺は簒奪等を符堂さんの首元に突きつける。確実に俺の勝ちだ。あ、そういえば男だって言わなかったから今まで伝えても諦めてくれなかったのか。クラスの奴ら以外知らなかったからなぁ。
俺は中学時代のことを思い出していた。まるで昔のことみたいだな。
「勝者、血桜 雪!2人ともいい試合だった。」
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