2章20話 転校生
雪くんが事件に巻き込まれてから1ヶ月が経った。雪君が退院したって報告は紅さんからされたから元気になったのは嬉しいし安心した。
でも私と司は寮から外に出られないから会いに行くことができなかった。
「はぁー会いたいなぁ雪君」
「おいおい、朝からため息かよ、幸せが逃げるぞ。それと今日は転校生が来る日だろ?」
「え!?そうなの?雪が退院してからずっと会いたくて聴いてなかったよ。」
「うん、そうな気がしてたから今言った。転校生が来た時に声出したら恥ずいだろ?」
「うん、今聞いてなかったら転校生来るなんて聞いてないとかいう気がする。」
私は今日来る転校生がどんな人なのか考えながら司と学校に向かった。
教室に着くといつもより騒がしい。
「なぁ女子と男子どっちだと思う?俺は女子がいいな!」
「俺も!特に可愛い系がいい!」
「カッコいいイケメン来ないかなー」
など転校生の話で持ちきりだった。
雪君じゃない分私のテンションはいまいち盛り上がらない。
しばらくして一限のチャイムがなるとみんなは期待した表情で席につく。
先生が扉を開けて入ってきてすぐに
「おーしお前らこの前話した転校生を紹介するぞ。」
「先生!女子ですか?男子ですか?」
「女子だ。」
教室が沸き立つ。特に男子がうるさい。
「はぁ」
(あれ、なんで落胆したんだろ。あ、そうかなんかの間違いで雪君が来ないか期待してたんだ。そんなわけないのにね。)
「さて、じゃあ入ってきてくれ。」
転校生に悟られないように表情を戻すと入ってきた転校生に見惚れた。
(うわっ可愛いッでもなんだろう?紅さんに似ているような?)
そう思ったのは私だけではないようで司君もそう感じたようだ。
「じゃあ自己紹介してくれ。」
その後に黒板に書かれる名前を見て私はあり得ない光景に驚いた。だって絶対に書かれるはずのない名前だったから。
「はい、諸事情で入学が出来なかったんですが編入させてもらいました。"血桜 雪"と言います。これからよろしくお願いします!」
雪くんと同姓同名の少女が目の前にいたのだ。
(いや、雪君は女の子じゃない・・・よく間違われるけど男だ。でも、血桜なんて苗字、雪君たち以外に聞いたことない。)
そんなふうにパニックになっていると先生が連絡を伝えてくる。
「血桜は最近あった事件に巻き込まれて入院してたそうだ。もう健康らしいが気にかけてやってくれ。一限だが授業変更だ。訓練場で自己紹介を兼ねた能力訓練に変更する。ほどほどにして第一訓練場に集合な。」
そう言って先生は出て行った。それからすぐに転校生はクラスメイトたちに囲まれた。
でも、何故か雪くんの雰囲気を感じる転校生と話したくて私は気づいたら転校生を引っ張って屋上まで来ていた。
「ったく綾、転校生連れてこんなとこまでくるなよ。いきなり走り出しやがって。」
司くんもついてきたらしいけどそれよりも!
「あなた、雪君、なの?どうしてもあり得ないと思ってもあなたが雪君なんじゃないかって気がしてならないの。」
そんな相手からしたらよく分からない質問をしてしまった私はどうしようか悩みながら返答を待った。
「いや、マジか。流石にこの早さでバレるとは思わなかったわ。よくわかったね、綾。」
なんと肯定したのだ。
「えーーーーー!?ほんとに雪君なの!?なんで女の子に!?というか能力無いんじゃないの!?」
いろんなことが一気にきすぎてパニックになった私は取り敢えず
「元気でよかった!雪君!」
思いっきりハグをした。
「まさか紹介された後すぐにバレるとはな、幼馴染恐るべし。」
咄嗟に抱きついてしまった羞恥心からか顔を真っ赤にした綾とニヤニヤしてる司にこれまでのことを雪は分かりやすく説明した。
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