1章12話なんでわかるの!?

「あまり眠れなかった・・・」


 能力を持っているなんて言われて無理だと思った学校にも通えることになった俺はさながら遠足に行く小学生のように目が冴えて眠れなかったのである


「歯磨きして着替えるか、後1時間もすれば母さんか父さんがくるだろ」


 そうして、洗面台の前に立つと


「やっぱり、起きたら夢なんてことないよなぁ」


 目の前には母親似の少女の姿があった。起きたら男に戻っているなんて期待をしたがある意味能力があることの裏付けでもある為複雑な心境であった。


「まあ、なったもんはしょうがないか!確かこの袋の中に着替えがあるんだよな。はあ!?」


 俺にコレ着ろって言うのか!?ハードル高すぎるぞ!


 袋の中に入っていたのは膝くらいまでのスカートとTシャツだった。

 

 でも、これ以外ないし患者服で出て行くわけにもいかないしな


 意を決して着ようとしたところドアがガラッと開いた。


「血桜さーん入りますねーあっちょうど着替えるところでしたか。昨日お母様に着ないかもしれないから強制的にでも着替えさせてくださいってお願いされたので来ました!」


 母さんが頼んだこと全部バラして若干天然そうな看護師が入ってきた。


 まずい、ただでさえ女物の服を着るので精神が死にかけてるのに女性に着替えさせられるなんて、恥ずかしくて死にたくなる!!


「あっ昨日の看護師の、ッ!いえ自分で着替えられますから!」


 自分が女物の服を着ようとしているところやら知らない女の人に着替えさせられる羞恥心やらで混乱している内に、


「それっ!おー綺麗な肌ですねー赤ちゃんみたい。わっ弾力もスゴイ」


 すでに脱がされて肌を触られていた。


「これを着るんですねーきっと似合いますよー♪」


 なす術もなく着替えさせられ呆然とするしかなかった。これがプロか。

 無抵抗のまま俺は服を着せられていく。流石に下着は遠慮したけど。結局脱がされた。


「いやー眼福でした!これのために看護婦やってるといっても過言ではないですね、それでは私は仕事に戻ります。」


 彼女が出て行くのと入れ替わりで父さんと母さんが入ってきた。


「まぁ!可愛い!小さい頃の緋真みたいね!まあ、緋真のおさがりだから当たり前だけど。」


「紅さん、雪放心状態で聞いてないよ。雪!おい雪!」


「・・・コロ・・・シテ」


「大丈夫!キズは浅いぞ!これから朱音に会うんだから気にしてたら先に進めないよ?」


 俺は父さんの言葉で正気に戻った。いや、ある意味正気に戻らない方がよかった。

 だってこれから妹に姉になりました!って報告しなくちゃならないんだから。


「そうだった、これからさらに地獄があるんだった。」


 正気に戻った俺は荷物をまとめて立ち上がる。やけに重く感じるのは俺が女になったからだろうか。


「外の駐車場に車を止めてあるからそこまで歩こうか。忘れ物は無い?」


「大丈夫、それより早く行こうあの看護婦が来る前に」


 俺は完全に看護婦がトラウマになった。また会うことはないと願いたい。

 そんなこともありながら俺は退院した。

 数十分後、久しぶりに帰ったような気がする我が家が見えてきた。


「雪、先に荷物を家に持って行くから紅さんと後から来てくれ。」


 そう父さんは言うと俺の荷物も持って家に入って行った。

 駐車場に車を止めた後、母さんと俺は玄関を開けた、すると朱音が飛び出してきた。


「お母さんおかえりなさいっ雪兄は?一緒に来るんでしょ?」


 俺の姿を探す朱音は、少し戸惑いながらも探し当てた。


「雪、兄?お、お帰りなさい!」


「なんでわかるの!?」


今日、雪兄を迎えに行くってお父さんが言ってた。買い物に行った2人が魔物に襲われて病院に入院したって聞いた時はとても心配だったけど、昨日お母さんに会えて雪兄も心配いらないって言ってくれて安心して寝れた。


(確か9時ごろ退院するんだよね?あと少ししたら帰ってくるかな?)


 ソワソワしたながら待っていると玄関が開く音がした。


「ただいまー今帰ったよ」


 お父さんが家に帰ってきた!


「お母さんと雪兄は?一緒に帰ってきたんでしょ?」

 私が2人がいないことを確認するとお父さんは、「今車を止めてるところだからすぐくるよ」って言ってた。

 そうしたら玄関の扉が開いた。私はすぐに飛び出して二人を迎えに行く。


「お母さんおかえりなさいっ雪兄は?一緒に来るんでしょ?」


お母さんが帰ってきた。でも雪兄の姿が見えない。心配になって探すと後ろに私より少し背の高い女の子がいた。


「雪、兄?お、お帰りなさい!」


姿は全然違うけど雰囲気が雪兄そっくりだった。



 朱音にすぐに見破られた衝撃の後とりあえず荷物を片してリビングにあるソファに全員腰掛けた。


「とりあえずお母さん、雪兄?退院おめでと!それでなんで雪兄が雪姉になってるのか説明してくれるんだよね?」


 朱音が予想はしてたけどこの体になった経緯について尋ねてきた。やっぱりそうくるよなぁ、俺だって聞くし。


「勿論、まずは事件のことから話さないとね、私と雪は・・・」


 母さんが病院で確認した事件の概要を黒ローブの人物を除いて朱音に説明した。


「ちょっと待って、色々衝撃すぎてパニックになりそう。えーとつまり、雪兄がワイバーンに襲われてお母さんが戦って、毒を受けて雪兄が吸い出したら女になったと。ドユコト(゚∀゚)」


 朱音が某宇宙猫のような顔をした後、


「そう言う訳だから雪はこれから女の子として生きて行く訳だけど服が無いから買いに行ってほしいんだよね。」


 父さんが1番考えたく無いことをサラッと言いやがった。確かにそうなんだけども。


「絶対愉快なことになるとか思って言っただろ!嫌だ!行きたく無い!」


「ダメよ、女の子なんだからオシャレしなきゃ♪」


「そうだよ、雪姉この後ショッピングに行こ!」


 周りに味方はいなかった。綾と司なら助けてくれるのに、いや綾は母さんたちに混ざって大変なことになりそう。司は父さんと後ろで笑うな、絶対。


 妹に完全に姉と認識された事はもう諦めてこのあと待ち構える地獄のことを考えていた。






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