1章9話事態の把握

「なんでこんな体に・・・」


 そう言いながら自分の病室に入って行った。気を利かせてくれたのか、一人部屋だった。

すると、父さんだけでなく母さんの姿もあった。


「良かった無事だった」

「良かった無事みたいね」


 俺と母さんはほぼ同時に同じことを喋った。

 すると父さんが「仲が良くて何より。おそらく雪は色々聞きたい事があると思うけど、僕も詳しくは知らないから検査の結果が出るまで事件の整理も兼ねて考察した考えを共有しようか」

と言い出した。

 確かにあの事件がこの体になった原因だとは思うので小さく頷いてベットに座る。


「朱音は居なくていいの?」


 朱音がまだ来てないけど良いのか?もしかしてあいつに何かあったわけじゃないよな。


「当事者の僕達が朱音に説明したところで僕達自身まだ事件のことについてよくわかってないからうまく説明できないと思ってね、整理してから伝えようと思う。パニックになること請け合いだからね」


 良かった、無事みたいだな。確かに俺も自分の体についてよくわかってないのに説明できる自信なんてない。父さんのいう通りにしよう。


「まず、うちの家族が3人兄弟から三姉妹になった。その原因を考えていこう。雪、まず二人はショッピングモールの魔道具店に居たんだよね?」


「その前に三姉妹っていうのやめろ、コラ」


 俺と朱音には姉がいる。今は大阪辺りに仕事に行っていて居ないが魔防隊のエース級だとか。世界ってのは不平等だ。兄弟だってのにこんなに違うんだから。


「まあいいや、そうだよ。母さんと別れて1人で魔道具を見てた。そしたら上からワイバーンが突っ込んで来たんだ」


 あれは本当に避けられて良かった。もし、当たってたらと思うと・・・。


 俺は身体がが震えるのを感じた。それに手から嫌な汗も出てくる。


「よく避けられたね、アレはかなり速いから危険なんだよね」


「なんとなく悪寒がしたから。それであいつが引っかかって動けないうちにエスカレーターまで行ったんだ。そしたら」

「ゴリラがいて私が倒したのよ。」


「なるほどね、かなり危なかった訳だ」


「その後は私が説明するわ。ワイバーンが雪を完全にマークしてたから守るために【血霞】で覆ったの。それで私【鮮血監獄ブラッディジェイル】でワイバーンを閉じ込める事には成功したのよ。」


「紅さんがアレを出すほどの敵だったのかい?」


 父さんが結構驚いた表情をした。それほどやばい相手だったのか。俺に能力があれば一緒に戦えたのに!

 俺は自身の力の無さを呪った。いつでも家族のためになろうと思ってきたのに一番大事な時に全く役に立たなかった。むしろ足手まといだった。


「雪を守るためと最初の攻撃でただの拘束ではダメだと判断したの。けど尻尾に魔力を込めて一点突破されて腕を掠ってしまったのよ。その時に毒を受けたのね。」


「確か魔力に反応して悪化すると言っていたね。」


「ええ、魔力を高めるほど毒の回りが早まって解毒しようとすると毒の効果が強くなるみたいなの」


 だから俺には効かなかったのか。俺、魔力ないから。まさか魔力がないことに感謝することがからなんて。


「解毒を試みたところで効かなかった時に黒いローブを着た人物が来たの。奴は自分はワイバーンを作った、製作者だと名乗ったわ。毒の名は【魔毒】。本来は毒に罹った人をこの病院に溢れさせて私を足止めさせる目的だったみたい。」


「黒ローブは何故君の元に来たか言っていたかい?」


「ワイバーンを回収しに来たのと、毒を食らった私を見に来たと言っていたからそこまで目的があったとも思えない。でも、私の【鮮血監獄ブラッディジェイル】を片手で壊したから危険な相手よ」


「あれを片手でか・・・中位はもちろん上位も相性とかが良ければ抑え込めるアレを。用心した方がいいな。でもここまで雪が女の子になった原因は無さそうだ。」


「その後、黒ローブは何処かに行ってしまって私も意識を失ったからそこから先は雪の話を聞きましょう。」


急に自分に振られるとは思わなかった俺は「私!?」と声を張り上げた。

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