第5話絶体絶命
何が起こってるんだ?
母さんが霧のようなものを俺に付けてから周りが全く見えないし聞こえない。衝撃のようなものは感じるからまだ戦っているのか?
あれ、衝撃が止んだ?
「終わったのか?母さんが負けるわけない。あのワイバーンの攻撃も防いでたんだし」
霧が晴れてきた。そこで目にしたのは母さんが腕から血を流しながら倒れている姿だった。
なんで!?母さんなら大丈夫だって言ってたじゃないか!
俺はすぐに母さんの元まで駆け寄る。まるで動けない様子の母さんに俺はパニックになる。
「母さん!!どうしたんだ、ワイバーンは!?」
「ご、めん、ドジ踏んじゃった。ワイバーンはどっかに、いった、よ。」
ならどうして!?怪我をしてるけどほぼかすり傷じゃないか!
「私にも、解毒でき、ない毒で、ゴフッ、ね。もう後数分しか、持ち、そうにない」
母さんは口から血を吐き出す。苦しそうに顔を顰めている。呼吸が荒い。
「何弱気になってんだよ!?病院に行けば何とかなるって!」
母さんがそういうならそうなのか?いや、何俺まで弱気になってんだ!?くそ、俺に母さんみたいな能力があれば!
そうだ!毒蛇に噛まれた時は傷口から吸い出せばいいって聞いた。やるしかない。
もう母さんはほぼ意識がないな。絶対助ける!起きていたなら間違いなく激怒される行為だけどやるしかない!
俺はすぐに母さんの傷口に口を当てて血を吸い出す。少しでも毒を吸い出せるように懸命に口の中に血を溜めて行く。
もし毒を吸い取れたとして飲み込んでしまえば吸い出した方も毒に侵されてしまう。
半ばパニックになっている俺にはそんな考えは浮かばなかった。
吸い出さないと母さんは死ぬ!
そうして腕に口をつけて血を吸い出したその時、何処かで爆発が起きた。
ゴクンッ
「ヤバイ!飲んじゃった!ど、どうする!?俺には解毒する力なんてないぞ!?」
しかし、雪が飲んだのは【魔毒】
魔力がないものには回りが遅い為すぐには効果が現れなかった。
俺は毒を飲み込んだはずなのに身体に異常がないことに気がついた。
「あれ?確かに飲んだはずなのに何ともない」
この毒に耐性があったのか?とにかく母さんか ら毒を吸い出さなきゃ!
何度か血を吸い出した俺に異変は起きた。
ズキンズキン、ズキンズキンズキン!
「なん、だ!?頭が割れるッいや、身体中が痛いッ!はあはあ、血を吸い出さなきゃ」
くそっ体が動かない!ダメだ。吸い出す力も出ない。
俺の体は意志に反して倒れ込む。身体が張り裂けそうな痛みに視界が歪む。力が抜ける。
「ごめん、母さん。助けられなかった、ごめん父さん、ごめん司、綾また会うって約束守れそうにない」
そう言い残し、意識を手放した。
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