15-2 VRボックスから、『リアル・ファンタジー・ワールド』へ




〈VRグラスをかけずに ボックスの中央に 立ってください〉


 ナビゲーターの指示どおりに、中央に立った。

 ぼくは部屋の中を見た。

 室内は薄暗く、

 5メートル位の高さはある四角い個室だ。

 全面が黒い壁で、

 狭くはないけど閉塞感がある。

 

 

〈リアル・ファンタジー・ワールドを プレイしますか?〉


「はい」と返事をした。

 相手は人工音声だけど、

 本物の女性の声のように上品だった。


〈初めてですか?〉


「はい」


〈あなたの装着品は VRグラス VRグローブ VRスティック VRタクタイル全身スーツで よろしいですか?〉


「はい」


〈冒険者ネームを 決めてください〉


 ウエスギ、にした。


〈アバターを作成するため あなたの身体をスキャンします〉


 ライトが360度、

 あらゆる方向からぼくの身体を照らした。


〈スキャンが完了しました  VRグラスを 装着してください  仮想現実に入ります〉


 VRグラスを顔にかけた。

 眼前を見た。

 体育館くらいの広さの部屋の映像が映っている。

 あたりまえだが実際は、

 5メートルのボックス内にいるのだが。


〈ゲーム世界でのアバターは どのタイプにしますか?〉


 視界中央に、

 半透明の三つの文字パネルが表示された。

  


《1 アニメ化アバター》

《2 実物化アバター》

《3 既存アバター》



 アニメ化アバターにした。

 自分がアニメのキャラクターになるアバターだ。

 実物化アバターは主にビジネス用で、

 自分とそっくりの顔と身体が造られる。

 リアルすぎて、ぼくには気持ちが悪い。

 既存アバターとは、ゲームに、

 あらかじめ準備されているキャラクターだ。

 エルフから獣人まで満載にある。


〈こちらのアバターで よろしいですか?〉


 真向かいに姿見が現れ、

 ぼくのアバターが映っていた。

 VRタクタイル全身スーツを着て、

 VRスティックを持ち、

 VRグローブをはめている。

 そして、ぼくは驚いた。


「おお、すごい、ぼくをアニメ化したのか?」


〈はい 素敵です〉


 鏡には、

 アニメキャラクターに変身した、

 自分が映っていた。

 顔はディフォルメされて、

 ファンタジーアニメに登場しそうな風貌だ。

 自分の顔だと認識できる原型が十分にあり、

 体格と筋肉のつきぐあいも同等だ。

 オプション機能があり、

 パーツごとに調整ができるが特にしない。



〈自分の声を使用しますか?  それとも 他の声を選びますか?〉


「自分の声で」


〈職業はどれにしますか?〉


 戦士、魔法使い、魔術師、商人、鍛冶屋、

 建築家、洋裁師、など数多く提示された。

 適当に《賢者》を選んだ。













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