凛々しい女主人公のレイア。幼い頃の"空白の記憶"を求め、武術の腕を磨きながら生活していた彼女が偶然助けたのは、侵略された人魚の国の王子様だった——!?
カンペルロ王国に囚われている仲間達を救い出し、自国であるアルモリカ王国を取り戻したいという彼・アリオンの願いにレイア、そして彼女の幼馴染で医術師のセレナ、槍使いのアーサーが協力して旅に出ることに。
腕にはめられた腕輪のせいで思うとおりに人魚の力を使えないでいるアリオンと、それぞれの持つ力を発揮して皆で助け合いながら旅を進める一行。
このキャラクター達皆が魅力的で、ちょっとした掛け合いやご飯のシーンではとてもほっこりと癒されること間違いなし。
情景や色彩の描写も美しく、人魚という不思議な存在を宝石のような眩さと共に想像できるはず。
やがて彼らはアルモリカ王国へ辿り着き、この争いと悲しみの連鎖を生み出した悪王の元へと向かうことに。
一人の男の欲深い所業が生み出した多くの悲劇、それは果たして終わりを迎えるのか。
強い能力を持ちながらも仲間を愛し、それが時に脆くも見えてしまう主人公達の人間らしさが話を読み進めていくほどにとても愛おしいです。
果たしてアリオンは国と、囚われた民を救うことができるのか。
そしてレイアは自身の記憶と、大切な何かに気づけるのか。
蒼い海のさらに深く深く底の碧。
その、まさに人魚達にしか触れられないような奥深い美しさの中に、読者自身も潜っていけるような作品です。
最終話まで読みました。
良い点
・色彩の表現がとても上手いなと感じました。どこかオペラ調な雰囲気と、色味ある文章は必見。書ける気がしないけど参考にしたいです。目で読むよりも、口に出すと気持ちが乗るような文体でした。そこら辺がオペラ調っぽく思いましたね。タグにもあるように「飯テロ」で、聞き馴染みのない単語から作られる料理が出てきます。それだけだと目は滑りかねませんが、作者は創造意欲掻き立てるような、楽しめるような書き方でとてもよかったです。文章も助長でなかったです。
・ストーリーは50話ほどで、無駄がない仕立てなのも良いです。メインキャラクター(4名)は有能の体現者かのように感じ、サクサクと前進するストーリーです。満足感ある内容で、ダレる感じ(話の緩み)がないのも素晴らしいと思います。女子陣も可愛らしく強い。男子陣はカッコよくて強い。無駄がないですね。また、真っ直ぐ芯があり目標も最初からあるのも良かった。読者の気の乗りも生まれるし、大切な要素だと思います。
・私のタイトルにあるように、悪滅もスカッとしました。重要人物のアエス王は、癪ですがこの物語で重要な役割、「悪オブ悪」で良いキャラをしていました。全く好感の抱けないキャラを作るのも大変で、ドクズすぎても読者は離れるし…でも、良い塩梅を突いていて良いと思います。アエス王の行った残虐シーンからの、ラブラブな会話や星マーク⭐️は話に彩も与えてくれました。ストーリーに爽快感も与えるので読後感も良好ですね。
・以下、殴り書きで具体的に良かったところ。始まりは伝記っぽく思いました。2話目でも本筋はじまるぜ感が良かった。1話1話のテンポも良く、11話では単語の気持ちよさを念頭に置いたような文章が良かった。そして、会話続きが多かったけど、特別気にはならなかった。21で、あまり飲みたくない味って文章は可愛らしさ満点でクスリとした。また、凄惨な状況と反する、神秘的な王のみ入れる空間は表現的にも良質だった。アーサーがまさしく横やり状態で面白かった。本編では一回?のレイア視点(現在)も、違和感なく読めた。終話のセレナの首筋の赤みという文章も、キャラが生きている温かみがあって良かった。
気になる点
・ほぼない。ただ、44や45で本編と離れちゃった印象が出ました。腰を折られた感じで残念でした。(最終で団欒感が出ていたので、そこまで悪印象でない)
・悪いわけではないけど、右右左下みたいな表現は結構印象深い。
一言
・コンテスト通過おめでとうございます。男人魚という設定は珍しいながら、面白かったです。文章面でも参考にしたいです。番外編は読んでいませんが、また次回の企画で会えたら嬉しいです。
・固定ファンが付いているのか、イラストもかなりあった。いざこざ?もあったようだけど、イラスト込みで楽しめました!