転生歴史IFモノとして、長尾晴景を主人公に据えた選択がお見事。
とりあえず、有名な上杉謙信と親子ほども年の離れた兄、晴景を軸に据えて、しかも上杉謙信が表舞台に立つ前に大活躍させるという設定は目からウロコでした。
下克上の代表格とまで言われた強者の父、長尾為景の後、史実では穏健な政策を取った文弱なイメージのある晴景が、めっちゃ強くなって富国強兵のような過激な政策に舵を取っていたらどうなるか?という展開だけでもちょっと楽しいIFです。
その上で本作は、転生歴史IFモノの作品でよく不自然になりがちな、やや一般知識よりも専門的な難度の「現代知識の導入」と「歴史の知識」を生かした環境改善のシーンで、「なぜこの作品の主人公はこんなにも詳しい知識を持っているの?」という点の大半を、「主人公の地元愛」で綺麗に片づけていたりして、IFモノの持つ不自然さを感じにくい作りにしている点にも、今のところ好感を持っています。
今後の更新が楽しみです。
歴史に詳しくとも楽しめ、歴史に疎くても分かりやすい説明と早い展開で読みやすく仕上がっています。
歴史ものあるあるで、多くの出来事を同時進行で伝えすぎてカオスになるあの現象はありません。
あくまで一つの出来事を進行させて解決させていくスタイルなので、読みやすく、登場人物も厳選されているので「アレ?お前誰だっけ」となりません。
小説の中心人物の上杉晴景は荒れ狂う乱世のなかを、必死にそれでいて人間くさく生きていきます。その中で民に寄り添い、笑って生きることのできる世界を実現していきます。知識チートは若干ありますが、そこは重要ではありません。最も重要なのは景虎ちゃんがとても素直に育ってくれていることです。あのような子が私も欲しい。