第12話

「はーい、ではお待たせしました!こちらワッフルでございます。お兄さんにはすもものワッフル、お姉さんにはりんごのワッフルでございます。」


そう言ってそれぞれ出してきた。

こんな泣いている時にワッフルなんて...。


「...では、ごゆっくりお寛ぎください。」


そっと彼女側にティッシュも置いていった。

彼女はそれも使わなかった。

ただよくわからない一点を見つめていた。


俺はいうだけ言ったからちょっとスッキリしていたので、出されたものは食べる精神の元ナイフとフォークで一欠片をつくり、すももとやらを乗せて口に運んだ。

甘酸っぱい。

でも何処か塩味も感じる。

ワッフルが甘いから塩を入れて甘さを強調する狙いか?わからないが、まあ、美味い。


出されている水を飲んでそのまま食べ進めた。

その間彼女は食べもせず、少し落ち着いてきたのかティッシュで涙やらぐしゃぐしゃになったものを拭いた。


会話しないのはもうどうでもいいや。冷める前に食えばいいのに。折角の料理が勿体ねえ。

なんとなく頭が冷えていってる気がする。よくわからないが。食は人の身と心を満足させるのかもなぁ。

次の仕事どうすっかな、俺もいい年だからそろそろ転職とかキツイよなぁ。


すっかり食べ終わって口を拭いた頃には俺は満足していた。


「はぁ。マスターうまいっすわこれ。」


「そうですか?ありがとうございます。」


にこやかにしていた。

カウンターのせいで手元で今何をしているかわからないが、まあその所謂チャイを作っているのだろう。


「あの、私。」


聞いたこともない鼻声が聞こえた。女がなんか喋ろうとしている。


「なんだよ。」


もう俺は辞めるって、もう担当降りて、違う何か探さないといけないんだって。


「...ごめんなさい。担当してほしいと編集さんに頼んで偶然を装ったの。」


「え?」

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