第7話
階段を降りると紅茶のいい香りがし始めてきた。棗先生がドアを開けるとさらに深い匂いに包まれた。
「すみません、やってるかしら?」
老年夫婦と店員がこちらを見た。
「ああ、申し訳ないです。当店予約...。」
店員は焦った顔つきで俺の顔を見てそう言いかけたが、棗先生の顔を見て何か見つけたといった顔をして口元が一瞬ニヤッと笑った。
「本来予約制ですが、10分ほど暇を潰してきていただければご案内致しますよ。何せ、一組分しか入らない店内でして、店内でお待ちいただくのも難しいかと。」
ヘラヘラとしながらその店員は言った。
「わかりました。10分後またきます。」
棗先生は踵を返して登って行ったが、テーブルにはまだ何も置かれていない。ちょうど飲み終わってゆっくりしていたのだろうか?
店員に近づいて耳打ちした。
「いいんすか?予約制なんでしょ?しかもこちらの方..。」
「大丈夫ですよ。お待ちしております。」
妙に余裕で肝が据わっていると言うか。これが大人の余裕ですか、そうですか。年は俺とそう変わらなさそうなのに、なんか羨ましい。
一礼だけして俺は上の階へと急いだ。
「遅い。おじいちゃんが私の担当者だったってわけ?」
ニヤァとしながら女は言った。
ほんんんんんんんんんんとにムカつくなあ!!!!!刑法がなければもうこの場でドロップキックしてやりたい、くぅうううう!!!!
ま、やったことないけど。
「あの店予約制みたいですよ。店員さんが気を利かせてくれなかったらどうしてたんすか。」
「その時は違う店を探すまでよ。でも悔しいわね。一組しかいないから話のネタになるような人様の会話で作るのは無理ね。」
はいはいそうですね。
でもこの女書く気はあるってことか。なんか行き詰まってんのね。
まあ20代だし?経験少ないし?10代は高校出てからすぐ銀行員してやめて、この業界って言ってたからネタがないのか。
しょうがないねえ、アドバイスおじさんになっちゃおうかな?
「棗先生、ネタに困ってるの?」
棗先生を人差し指でくるくるしながらニヤニヤと話した。
「うっさい。」
なんで俺がデコピンされんだよ!!!!!!!
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