第7話 青天
「なるほど……分からん」
僕はまず、暴れていた領民たちから事の顛末を聴取する。
その結果、大半の領民たちは何が原因かも分からないままに殴り合いをしていたことが判明した。
どうやら、脳ミソまで筋肉という人々は本当にいるようだ。
「はあぁぁぁっ、分かってはいたけどね……」
僕が思わずそう独りごちると、ひとりの好々爺がやってくる。
「ホッホッホ。それは仕方のないことじゃ。こんな辺境で生きる者たちじゃ。どこかおかしいに決まってろうが」
総白の髪を後ろで束ね、長い髭が特徴の小柄な
老人。
それが、かつては祖父の懐刀とも呼ばれた【ミザール・フォン・アーサーメイジャー】元男爵であった。
「『ミザ爺』」
僕はようやく話が分かりそうな人物の登場に胸を撫で下ろす。
どうやら、何とかなりそうだ。
ミザ爺は、領民たちのよきまとめ役として顔が広い上に情報通でもある。
さすがは
僕が日頃から頼りにしている人物のひとりであった。
「そちらの商会の者が、取引の関係で一方的に無理難題をふっかけた挙げ句、護衛を使って脅しをかけようとしたら返り討ちにあった……と、聞いておるが?」
「えっ?取引……と、いうことは」
「【ジュバ】じゃな……。あやつはどうした?」
そうミザ爺が問いかけると、周囲の人々が反応する。
「ジュバかぁ?アイツは弱えくせに真っ先に飛びかかって行ったから……」
「ああ、あそこ。あそこでひっくり返ってるよ」
やれやれ、いつまでも状況が掴めないはずだ。
当事者がやられてひっくり返ってるとは……。
普通、取引の当事者が殴りかかるか?
僕は肩を落としてため息をつくのであった。
「いやぁ、面目ねえッス。紙一重だったンスけどねぇ」
「何が紙一重じゃ。
そう、あっけらかんと話している犬族の獣人が今回の当事者である【ジュバ】
今は痣が残る顔を濡れタオルで冷やしながら、ミザ爺の冷たい視線を一身に浴びている。
祖父とともに開拓を行った入植組やその子孫とは異なり、彼はいわゆる移民組にあたる。
もともとは、王都にあるスラムの住人であったのだが、
移民組は、この領地に来たばかりのときは、周囲の
しかも、入植組とは異なり、戦闘力は皆無のくせに何かあれば飛びかかっていくようになるのだ。
かつて僕は、本気でこの土地には人を狂わせる何かがあるのではと調べたことがあったくらいだ。
…………まぁ、周りの住民がみんな
いわゆる『朱に交われば赤くなる』といったところか。
ちなみに、ミザ爺が話していた『
青い空を見上げるように倒れる姿は、尚武で知られるこの領地では最大の屈辱とされていた。
…………どうせ殴りかかるなら、勝ってくれよと思う僕も、ずいぶんとこの領地の雰囲気に染まっているような気がする。
閑話休題。
ともかく、ようやく当事者が判明したのだこれまでの経緯を尋ねることにしよう。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
もう、相手はボコボコです。
今後の展開にご期待下さい。
モチベーションに繋がりますのでレビュー、あるいは★での評価をお願いします。
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