386 示威
「返答や如何に?」
ロジャーのおっさん言い方かっけぇーー!
俺だったらこうだな‥‥
「応えてみよ。さもなくば漆黒のジャベリンを撃ち込んでくれようぞおおおおおぉぉぉぉぉー‥‥」
やめとこ。これ以上はまたシルフィに笑われるだけだし……。
「あんた厨二かよ!」
「えっ!?なんでシルフィはそんな言葉を知ってんだよ!やっぱり俺の頭ん中覗いてたんだね?!」
「あたぼうよ、べらんめぇ!」
鼻先をクイクイッとして、いきなりシルフィが吠えた。
ああもうやめてよ!俺の頭ん中覗くのは!しかもなんで江戸っ子なんだよ!そんな精霊なんか古今東西絶対いないって!
そんなふうに俺とシルフィが言いあってるうちに……。
ロジャーのおっさんは全身にハッキリと高濃度の魔力を激らせたんだ。
おっさん、あんなふうだけどヴィヨルド領の偉いさんでもあるみたいなんだよね。まあ何より王国内ならどこででも通じる「救国の英雄」って2つ名があるくらいだもんな。
えっ俺?悲しくなるからやめてよ……。
でもさ、そんなロジャーのおっさんと衝突するってことはアザリアとヴィヨルドとの全面戦争を意味することになるのに。さすがに戦争になるのは騎士団を含めて多くの領民は反対するんじゃないのかな?ヴィヨルドの武力から思うに戦争っていうか間違いなく蹂躙になるだろうし。
「ほほぉ」
するとテンプル先生が感心して声を上げた。それはロジャーのおっさんの剣気に触発された領都騎士団員が構えをみせたからなんだ。
カチャッ‥
カチャッ‥
カチャッ‥
カチャッ‥
カチャッ‥
アザリア領の騎士団にも気骨のある騎士が何人かいたんだ。刀の柄に手をおいて鞘から本身をださんばかりにして構える騎士が何人もいたんだ。
でもさアザリアの騎士団の人たち、なんで戦うのか意味わかってんのかな?ふつう騎士って信念に基づいて行動するんじゃないの?ミリアのお父さんみたいに。まさか水樽に忠誠を捧げる‥‥うん、それは絶対にないな。
「お、おい‥‥ありゃなんだ?」
「ま、まさか‥」
「俺たち本物の英雄と闘るのか‥」
ロジャーのおっさんの全身から激る高濃度の魔力はやがてハッキリと視認できるようになってきた。
もわんっ もわんっ もわんっ もわんっ‥
全身からもわんもわんと湯気のように滲みだすのは闘気だ。
(えーっ?!うそ!なにこれ!ロジャーのおっさんの闘気見えてるじゃん!闘気全身に纏ってるじゃん!すっげぇーーー!今まで俺には隠してたのか!くそー。どうせ俺は小物だよ!
そういやロジャーのおっさんのガチムチのガタイに短髪のいかつい顔‥‥こっ、こっ、これはまさかラ◯ウ?マジか!?これ絶対ラ◯ウ様じゃん!じゃあまさかヴィヨルドからここまで来た馬って‥‥)
「(よしアレク、私が見てきてあげる!)」
そう言ったシルフィがぴゅーっと翔んでいった。なんだよシルフィ。俺も見に行きたいよ!
あっ?えっ?
でも俺何にもシルフィに言ってないけどな。でもきっともう俺の頭ん中で観てきてるんだろうな。ってことはラ◯ウ様の馬の映像までシルフィは知ってるよな。これは……シルフィが何を見てくるのか正直楽しみだぜ。
全身から湯気を立ち昇らせるように闘気を立ち昇らせたロジャーのおっさん。それは一騎当千どころか個人で1国と闘えるレベルとも評される戦闘力なんだ。多少なりとも武芸をかじった者ならロジャーのおっさんから漏れでるその圧倒的な力に驚きと恐怖心を禁じ得ないことだろうな。うん、これじゃ本当にここにいる騎士程度では大人と子どもだな。
ロジャーのおっさんとアネッポ領領都騎士団。それは絶対に勝てない天と地くらいの彼我の差。
周りにいる貴族や家臣にしたら震えて逃げたいだろうな。だけど逃げられない。おそらく腰が抜けたみたいに足が動かないんだよね。言うならば蛇に睨まれた蛙状態なんだ……。
カランッ
カランッ
カランッ
カランッ
カランッ
ご領主様の背後に控えていた儀仗兵が皆、手にした棍を自身が自覚せぬ間に落としたんだ。そしてその恐怖は当然伯爵にも影響したんだ。
「アワアワ、アワアワアワアワアワ‥」
どすんっ。
後ろ向きにひっくり返る伯爵。泡を拭きながらそれでもギリ意識を保ってるよ。でも‥‥
じゅわわわわわぁぁぁぁぁぁ‥
あーーみるみるズボンにシミができちゃってるよ。
「め、め、め、めっそうもない。ロ、ロ、ロ、ロジャー殿とお、お、お客人に刃を向けるなどとは‥‥こ、こ、此奴らなど知らん。お、おい!早く此奴らを」
「はい父上」
ザスッッッ!
「お助けをジュニア様‥」
ザスッッッ!
「どうかジュニア様!」
ザスッッッ!
「お慈悲をジュ」
ザスッッッ!
あっ!おぼっちゃまが殺っちゃったよ!
おぼっちゃまは床に臥せっていた部下の男4人の胸元に躊躇なく刀を刺したんだ。父上と呼んだっていうことはこのおぼっちゃまはジャビー伯爵の息子だったのか。歳のころは20歳くらい。水樽の父親と異なり細身の長身。ただ父親同様に感情(表情)に乏しい顔だちは共通してる。てかもっと伯爵より強烈な印象なんだ。薄い目は爬虫類のような冷たさを感じる。おぼっちゃまを言葉にすると、浮かぶ言葉は冷徹、冷酷だな。
実際酷いよな。部下に躊躇なく刃を刺しやがって。愛情はないのかよ。でも‥‥このおぼっちゃま、ロジャーのおっさんの気に当てられてないのかな。ひょっとしておぼっちゃま、強いのか?
「ほう。そうきたか……」
「だな老師」
「「ワハハハハ」」
不敵に笑うロジャーのおっさんとテンプル先生。
しーーーーーーん
謁見の間に静寂が訪れた。
「まぁまぁロジャーそのくらいにしてはどうかの」
「うん?老師、俺?俺何かしたか。何もしてねぇぞ」
うわっ、ロジャーのおっさん煽っちゃってるよ!でも‥‥騎士団を含めて今も誰もロジャーのおっさんを直視できないでいる。こりゃ闘る前から勝負あったな。俺の出番はもちろんないみたいだし。こんでよかったんじゃない?あとは水樽がごめんなさいして終わりだよ、きっと。
と。あっという間に戻ってきたシルフィが言ったんだ。
「あーあ馬鹿ねーアレクは。そうやって勝手に思うからフラグが立っちゃうんだよ。あ、それとねロジャーが乗ってきた馬、普通の馬の倍くらいある大きさだったよ。アレ、まさに●王だね」
「えーーーーーーーっ?!」
2重 の意味でびっくりした。フラグに●王。シルフィさんあなた精霊だよ?わかってる?本当にやめてくれよ……。
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