294 シャンク覚醒
「やめろー!」
「セーラ!」
金のゴーレムが鉄のゴーレムを掴んで放り投げた。それは5、6階建のビルの屋上から鉄製の相撲レスラーマンを勢いよく落とす以上に危険度の高い光景だ。(ちょっと分かりにくいよね、うん‥。でもそんな感じなんだよ)
そんなのが降ってきたらどうする?俺だったら?うん迷わず逃げる!たぶんセーラの障壁なら大丈夫なはず。魔力は使うだろうけど。可能なら逃げてほしい。
セーラの障壁の前に立ったシャンク先輩は盾を構えて叫んだんだ。
「セーラさん僕に任せて!」
鉄人形が降ってくるんだよ。鉄だよ鉄。それも大きな鉄のゴーレムなんだよ!
シャンク先輩はそれを盾でカッコよくパリィ‥‥と思うよね、ふつうは。パリィはタンクの見せ場なんだから。でもそうじゃなかったんだ。
昔じいちゃん家に遊びに行ったときにね。田舎だからゴッキーがよく出没したんだ。都会っ子の俺は怖いからすぐになんとかしてくれよとじいちゃんを呼ぶ。するとニコニコしたじいちゃんはスパーンっとスリッパでゴッキーを叩いたんだ。そのときのうわっ、こわっ‥ってシーンがなぜか甦った。
鉄のゴーレムをパリィするって思ったシャンク先輩。
現実には歯を剥いたシャンク先輩がゴキ叩きをしたんだ。
ガアァァァァーーーーッ!
ダァァァァーーーーーン!
それくらい強力に盾でゴーレムをたたき落としたんだ。
「えっ!?‥‥」
「あぁ!?‥‥」
思わずセーラと顔を見合わす俺。
(うわっ!シャンク先輩ガアッって歯を剥いたよ!)
「熊の子上手くなったわ」
(えーなんで冷静に見れるんだよシルフィ!)
「ナ、ナ、ナイスですシャンク先輩‥」
「あのね、僕40階層でちっちゃかったころのことを思い出したんだ。あのときちょっぴり蜂蜜を舐めたんだけどね。テヘッ」
何がテヘッだよ!
怖いわ!ちびるわ!やっぱり陰の実力者はシャンク先輩なんだろうな。本当はマリー先輩でさえも従えてたりして。やっぱり絶対シャンク先輩を怒らせたらダメだな……。
シャンク先輩のゴッキー叩きを見たおかげですっかりリラックスした俺。たぶんマリー先輩もそうだと思う。半笑いをしながら着実にゴーレムを倒しているよ。キム先輩なんかジリジリとシャンク先輩から距離をあけてるし!
よし俺も太陽男を倒そう。
「土遁!外堀の術!」
ズズズーーーッ
金のゴーレムが立つ地面の半径1mを一気に掘り下げた。もちろん穴の底には槍衾が待ち構えるゴーレム撃退仕様だよ。
でもね、それでも太陽男はカッコいいんだよ。だから後ろには逃げ道を作ったんだ。前に行っても横に行ってもダメ。でもUターンして下がれば大丈夫。このまま帰ってくれたら追撃はしないよ。
「なあサンシャイン、ひいてくれないか?俺お前と闘る理由がないんだよ」
「‥‥」
太陽男は考えたんだと思う。たぶんね、こう言ったと思うんだ。
(好敵手よ、我らが闘う運命は避けられない)
(なんでだよ!)
(それが運命だからな)
(そんな運命なんて変えればいいんだよ!俺たち‥もう友だちだろ!)
(フッ。もっと早くお前と会っていたら)
ポカポカポカポカ
シルフィが俺の頭を叩くから目が覚めた。
「ちょっとアレク!いつまで夢を見てんのよ!早く目を覚ましなさい!」
ハッ!
ヒュンッ!
ヒュンッ!
ヒュンッ!
金礫が放たれた。あぶねー!
太陽男は真っ直ぐ前に向けて‥
ズルッ!
ズドォォォォーーンッ!
あっ!落ちた‥。
ゴキッ!
太陽男の頭部が離れた……。
なんだよお前は!あっけなさすぎだろ!
「‥‥さっ戻るわよ」
「待ってよシルフィ」
「早くしてよね」
金のゴーレムの2体め。また頭をゲットした。
そういやまだ小学生のころ驚き男チョコのシール集めてたのを思い出したよ。いかんいかん、また夢の中にいってたらシルフィに怒られる。早く魔石と頭だけ持って帰ろ。
「重っ!」
やっぱ金って重いよなぁ。
「2体めね。帰ったらみんなで山分けましょうね」
「はい」
「そんなもん要らねえぞチキショウ」
「えっ?何セーラ?」
「ふん!なんでもないです!」
余談だが、持ち帰った金頭の2個は商業ギルドで換金。学園に寄付する分を除いて等しく10人で割った。10人で割ってもすごい金額だ。女神教教会の関係者であるオニール先輩とセーラの2人は悔し涙をながしながら寄付の手続きをしていた。
ビリー先輩は買えなかった本をいっぱい買えると喜んでいた。
俺?俺は村の教会、のんのん村の教会、ニールセン村の教会、ヴィヨルドの領都教会のそれぞれに寄付したよ。
【 ブーリ隊side 】
ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ ズーーンッ‥
後方からも岩ゴーレムがやってくる。迎撃できるのはリズだけだ。
ゴーレムの放つ岩礫の射程距離となる20メル前に倒さなければならない。
「グラビティ!」
グラグラグラグラグラグラッ!
沈む地盤が岩ゴーレムを直撃する。
ドオオォォォーーーンッ
バラバラバラバラバラバラ
「ふんなの」
「「「おぉ〜!」」」
「すげぇ。さすがリズだぜ」
「オニールはもっと私を崇めるの」
「ははーリズ様ー」
わははは
フフフフ
ギャハハ
「でもよ、延々とおわらねぇなぁ。いつまで続くんだ?」
「「ああ」」
「ほんとだね‥」
「ギャハハさすがに参るよな‥」
「「「‥‥」」」
だんだんと。ブーリ隊も心を削られていくのだった。
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