005 弟
父上が再婚した。
それから半年ほどして、弟のシリウスが産まれた。
(若干計算が合わない気がするが…)
俺は頭だけは日本生まれの日本育ちのただのガキである。
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3年が過ぎた。
俺は年相応になんでもできるようになった。
ただやはり女神様が告げられたとおり、チート無し・特典無しなのであくまでも平均的な3歳児である。
転生以前の記憶はしっかりとあるが、それが何かの有利、役に立ったことは1度もない。
やっぱりただの3歳児である。
「シリウスかくれんぼして遊ぼう」
「うん、兄様」
同年の生まれということもあり、弟のシリウスは同学年である。
見た目はぜんぜん似ていない。父親は同じだから、少しは似たところがあってもよいものだが。それでもかわいい弟には違いない。
いずれは隣り合わせの机で仲良く学校生活を送りたいものだ。
当初は2人並んで育てられたが、1年も経つと、扱いに変化が生まれた。
「シリウスちゃんこっちにいらっしゃい」
「なーに母上。今から兄様とかくれんぼするんだ」
「ダメよシリウスちゃん。シリウスちゃんはね‥」
だんだんと継母のオリビアが弟だけを溺愛するようになったからだ。
仕事で忙しい父上は、屋敷に居ないことが多かった。
「父上お帰りなさい」
「おおショーン元気にしてたか?」
「はい父上。でも父上は‥‥」
「少し忙しすぎるかな。ははは、息子に心配されるようではまだまだだな。
だがお前の顔を見ると元気が出るぞショーン」
父上は帰る度になんだか顔色も良くなく痩せていっている気がする。とても心配だ。
「「「わははは(フフフフ)」」」
「まぁショーン様ったら!」
継母のオリビアは父上がいる前では、俺に向き合って笑うこともあった。なんなヨイショしてる気もする。
「‥‥チッ!」
が、父上が不在となると、途端に口数も少なくなった。俺に鋭い眼差しを向けるようにもなった。
継母はますます弟のシリウスにつきっきりとなり、いつのまにかシリウスとの距離も開いていった。
「シリウス?シリウスどこ?」
「‥‥」
「あっ!シリウス!」
「ショーン様ダメです!」
「えっ?なんで?」
俺はそれでも弟が可愛くて仕方がなかったので、屋敷内で弟を探してはかまっていたが、これも継母のオリビアに阻害されるようになっていった。
「アダムあのね‥‥」
「ショーン様、仕事の邪魔をされますな」
家宰のアダムもだんだんと俺を冷遇するようになった。
「シリウスちゃん、シリウスちゃん‥」
「シリウス様、シリウス様‥」
継母のオリビアも家宰のアダムも父上の不在時には、殊更弟のみを可愛がるようにもなった。
同腹でないとはいえ、それでも俺は弟のシリウスが可愛いかった。
「シリウスかくれんぼしよう!」
「兄様と遊ぶと母上が怒るから嫌だ」
「えっ‥‥!?」
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