第12話 アレにはオリハルコンが含まれている

「ステラ……済まなかった。生まれたばかりのお前を捨てたのは本当に謝る。召喚魔法は素晴らしいし、お前自身も偉大な魔法師だ」


 お母様にアレを渡した次の日。

 父はボクの部屋に来て、そんなことを語り出した。


「相手があなたであっても、褒められると悪い気はしないね」


「そ、それなら頼む! せめて脱着式はやめてくれ! ないならないでハッキリして欲しい。アリアがやりたいときだけ装着させられて、終わったらまた外されるなんて……これじゃ俺はまるっきりオモチャじゃないか!」


「同じ男として、あなたの境遇には同情する」


「おお、ならば!」


「けれど、ボクはあなたの尊厳よりも、お母様がずっと大切だ。なのでお母様が満足してるなら、あなたの状況を改善するつもりはない」


「本当に血も涙もないようなことを言う! こうなったら次にアリアが求めてきたとき、アレに火をつけてやる」


「無駄だよ。アレにはオリハルコンが含まれている。魔王の炎でも簡単には燃えないし、伝説級の剣でも素人じゃ切断できない」


「なに考えてそんなの作った!?」


「どうせアレを作るなら強靱なほうがいいかなと思って……」


「限度があるだろ!」


「やる前から限界を決めていたら、魔法も錬金術も発展しない!」


「くっ……アレの話なのに、アレスター・ダリモアにそう言われると反論しにくい……しかし俺はオモチャになるつもりはないぞ。次はアレを窓から投げ捨ててやるからな!」


 そのとき、廊下の奥からお爺様がやってきた。


「話は全て聞かせてもらった! エディ、貴様、もしアレを投げたり、そのほかの手段で紛失や破壊をしたら、この家から追い出すぞ!」


「そんなの酷すぎる! 俺にだって人権があるはずだ。俺がなにをしたっていうんだ!」


「ワシの初孫を森に捨てて殺そうとした男がなにを言う! こうして呼吸するのを許されているだけでもありがたいと思え!」


 お爺様は父を杖でバシバシと叩き、追い払った。


「やれやれ。あやつめ、そのうち許してやろうと思っていたが、まだまだ反省が足りないようじゃ。しばらくは付けたり外したりという待遇にしておくか。それにしてもステラ……アレを作ってくれて、ありがとう。これでワシは二人目、三人目の孫の顔を見れそうじゃ」


 父には厳しかったお爺様の表情だけど、ボクには笑顔を見せてくれる。

 優しいお爺ちゃん。


「喜んでもらえて嬉しいよ。ボクも兄弟が欲しいし」


「うむ。じゃが……あの男のアレを用意できたのに、お前自身のはまだ無理か……」


 お爺様はボクに同情的だ。

 ボクがアレを手に入れられたらいいと、心から願ってくれているらしい。

 お母様もルルガも分かってくれないから、この件に関して味方はお爺様だけだ。


「気長にやるよ。前の人生と違って、今回は長生きするつもりだから」


「そうか、そうか。ならワシも長生きして、曾孫を楽しみにしようか」


 そう言ってお爺様は去って行く。

 曾孫……それはボクが種をつけるほうだよね? ボクが産むんじゃないよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る