転生英雄はハーレムを求めて無双する ~胎児の頃から精霊召喚してワンオペで領地を豊かにしていたボクを生後30分で追放!? 『召喚師は他力本願の卑怯者』ってそれ本気で言ってるの?~
第4話 痛恨のミス! 転生する性別を間違えた!
第4話 痛恨のミス! 転生する性別を間違えた!
さて。
落ち着いたところで自分の状況を整理してみよう。
まず、転生に成功した。
受精卵のときから意識はあったけど、実際に生まれるまで不安だった。だけど、こうしてボクはちゃんと二本の足で歩いている。
前世の記憶があるというのを、家族に受け入れてもらえた。
普通の子供として過ごすのは無理だと、胎児のときから思っていた。
どう演技しても、ボクの異常性は早い段階でバレるに違いなかった。
だったら自分から事実を言ったほうがいい。
受け入れてもらえなかったら、赤ん坊のまま独り立ちする覚悟だった。
それが、ここまでスムーズに行くとは思わなかった。受け入れてくれた母と祖父に感謝だ。
父? そんな奴もいたっけ?
ルルガと出会えたのも嬉しい。主人とペットという関係だけど、友達として仲良くしたいと思う。
もう、今の段階で転生できてよかったと心の底から思える。
ボクは幸せだ。
けれど、ボクは大きな野望をもって転生したのだ。
それは……女の子にモテモテになることだ!
前世のボクは、はっきり言ってモテなかった。
その理由は単純。
分厚い筋肉を持ち、顔も野性味があるワイルドなもの。
大昔は、そういう容姿が男らしいとモテたらしい。
だが、時代は変わっていく。
丸太のような腕は怖いと言われ、細身の体が好まれるようになった。
濃い顔より、薄い中性的な顔がモテた。
ボクは魔王の部下を倒しまくって尊敬はされたけど、女の子にモテなかった。
顔は生まれつきだからどうにもならない。そしてトレーニングをしなくても勝手に筋肉が発達する体質だった。
魔法で容姿を変える技術を身につけたのは、死の直前。
前世には間に合わなかった。
しかしボクは転生した!
さっき「この家に転生したのは偶然だった」という話をしたけど、それは半分本当で、半分は嘘だ。
女の子にモテモテな、かわいい系の顔に産んでくれる両親という条件を指定した。
ボクはまだ自分の新しい顔を見ていない。
だけど母上は最高の美人だ。父上も顔だけはイケメンだ。
ならボクは間違いなく超イケメン。
今度こそ女の子にモテまくって、ハーレムを作る!
魔王を倒すまで死に物狂いで頑張ったんだ。
そのくらいのご褒美がなきゃ、逆におかしいだろ!
そんな煩悩の塊みたいなことを考えながら、母の部屋に入り、大きな鏡の前に立つ。
おお、綺麗な顔立ちだ。
母上譲りの金色の髪は、絹糸のような質感を感じさせつつ腰まで伸びている。
きめ細やかな肌。骨格レベルから整った顔。見開いたわけでもないのに大きな瞳。
女の子に好かれそうな、女性的な容姿――。
いや、待て。
ボクは股間に視線を落とす。
ない。
大切なものがないぞ!
「女性的って言うか、女の子そのものだぁぁぁっ!」
しまった。
転生魔法を使うとき、容姿だけこだわって、性別を指定しなかった。
これは……仮に女の子にモテモテになっても、なにもできないのでは!?
だって、ない!
前世でやりたかったことをやりたいのに、やるためのアレがない!
ど、どうしていいか分からない。
魔王と戦ったときよりもピンチだぞ……。
「かわいすぎて、なにを着せても似合うけど……今日はこのドレスにしましょうね。もう夜だからすぐパジャマに着替えるんだけど」
母に女児用のドレスを着せられたボクは、圧倒的な美少女だった。
将来有望だ。
もう何年かすれば、男たちが放っておかない。
前世のボクだって目をギラつかせる。
ああ、こんな美少女と仲良くなりたかった。
その美少女に自分がなってどうする!
「ご主人様。どうして頭を抱えるでありますか? とっても似合っているであります」
「ええ、ええ。いきなり娘が大きくなって戸惑ったけど、一番手間がかかるところを飛ばして、かわいがるだけでいいんだから。初心者ママの私としては助かるわ」
ルルガも母も、着替えたボクを見て大喜びだ。
二人にボクの苦悩を説明しても分からないだろう。
男として大切なもの……ある意味、自分自身を失ったにも等しい衝撃を、分かってもらえないだろう。
し、仕方がない。
今はとにかく『生きている』という状況を楽しもう。
前世は、それさえ叶わなかったのだから。
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