第7話 好感度7

「……はぁ……ほ、ほら……買ってきたぞ」


 俺は疲れ切った状態で、教室に戻ってきて、手にしたジュースを氷川に差し出した。


「どうも」


 まるで感謝していない様子で氷川は俺にそう言った。


 氷川は俺に「なんでも言うことを聞いて下さい」と言ったが……まさか、パシリにされるとは思わなかった。


「運動不足なんじゃないですか? この程度のことで随分疲れていますね」


「悪かったな……運動なんてほとんどしないからな」


「それは良くないですね。頭も悪いんですから、健康くらい気をつけたほうがいいですよ」


 氷川は言いたい放題俺に言ってくる。


 というか、こいつ、こんなに喋るやつだったのか……言われたい放題で怒るはずだったが、むしろ、俺は驚いてしまっていた。


「……なんですか? 私の顔になにか付いていますか?」


「いや、お前……そんなに喋るやつだったんだな、って思って」


 俺がそう言うと呆れた様子で氷川は俺を見る。


「私だってできるならば、アナタなんかと喋りたくありません。しかし、アナタが一体何を考えているのか、私に隠れておかしな真似をしようとしないか……それを知るためにアナタと仕方なく喋っているのです」


「あ……。そう……」


「そんなことより、ほら」


 そう言うと氷川は俺の机に小銭置いてきた。


「……なんだこれ?」


「デザートが食べたいです。早く買ってきてください」


 俺は怒りたい気分を抑えながら、小銭を握って仕方なく立ち上がり、デザートを求めて再び食堂へ向かう。


 俺はスマホを確認した。増加値は確かに「7」となっている。


「……やっぱ、これ、失敗しているんだろうなぁ」


 おそらく、効果はないのに数値だけが増加しているのだろう。かといって、もはや元の状態に戻ることはない。


 大人しく、氷川の従僕として頑張るしかない……自分への罰だと思いながら、俺は食堂へ急いだのだった。

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