第46話


「「うぅ〜、さむい」」


「もう少しだから、頑張ろうね」


「「うー」」


 2人でお母さんに文句を言うもの仕方ない。だって、今日は12月31日大晦日なんだから。えっ、それだけじゃ理由になってないって?


 いやいや、分かるでしょ。大晦日で寒いって言ったら、2年参りだよ。2年参り。だから、今は家の近くにある神社に向かっている途中なのだ。真夜中に車で行くのも危ないし、止めるところが無くてもいけないと言うことで、歩いて移動中だ。


 夜中に歩くのも十分に危ない気がするんだが、家族みんなで行くなら大丈夫だろうと言うとこで出発した。


 そこまではよかったのだが、何せ寒い。家で体をぽかぽかにして今も、もこもこの状態なのに意味を成していない。わたしと結心はぴったりくっつきながら、歩いている。


 そこはこの寒さにも感謝している。でも、感謝しきれない点が多すぎるのが難点なのだ。


 結局、神社についた時には家族みんなが寒さにやられそうになっていた。しかし、そんなことに反して、神社には多くの人がいて、甘酒や豚汁の提供もあったりした。


「結笑、結心。豚汁のむ?体あったまると思うよ」


「「のむ!!」」


 お母さんも気遣いに爆速で答える私たち。そして、温かな豚汁をもらって体の芯から、温め直す。それはそれはお父さんも一緒だった。


「あったまるなぁ。ここまで頑張った甲斐があるってもんだなぁ」


「これがなかったらと考えると、家に帰るまで、寒さが蓄積していっちゃうしね」


 それにお母さんが、甘酒片手に答える。お母さんは豚汁じゃなくて、甘酒にしたようだ。わたしはまだこの体になってから、甘酒って飲んだことないから、どんな味がするんだろう。


 そんなことを思っていると、お母さんから紙コップが差し出される。


「どうぞ。これ飲んでいいやつだから」


「ありがとう」


 わたしの心を読んだようなお母さんの行動に驚かされながら、紙コップを受け取って甘酒を飲ませてもらう。


 うん、ちょっとどろっとしてるけど美味しい。しかも。あったかくて優しい味がする。


「おねえちゃん、わたしにもちょうだい!」


 私が美味しそうに飲んでるのが、羨ましくなったのだろうか。結心が私が持っている紙コップに手を伸ばしてくる。


 うん、かわいい。


 わたしは紙コップを結心にわたしながら思う。新しくもらうとかじゃなく、わたしから貰おうとするところが、またかわいい。


 そんな、結心と一緒に甘酒を飲みながら、ゆっくりしていると、周りの声が大きくなり始めた。


 どうやら、もう少しで今年も終わるようだ。もう少し経てば今年も終わり、来年になる。そして、今年は去年になる。


「あと10秒だって、カウントダウンしよっか。じゃあ、今から、」


「「「「5、4、3、2、1、、、」」」」


「「「「明けましておめでとう!!」」」」


〜今年も来年もこの場所で 1時間前〜

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