第37話


 本格的な夏は過ぎ去ったはずなのに、まだ少し暑さの残るこの頃。9月に入りました。


 今年の夏は本当に暑かったね。もう、私なんてクーラーと結婚しちゃんかと思ったもん。これはマジで、命の危機を感じちゃうよね。


 お母さんの買い物についていく時や、祖父母の家から帰るときに外を通るけど、自分が溶けてなくなるかと思ったもん。実際、30分ぐらい外に出てたら、汗びちょびちょだったしね。そのまま、本体までって考えるとちょっと怖いよね。


 おとっと、話がどんどん逸れていっちゃった。私がなんでこんな話をしているのかと言うと、今絶賛、外で自転車の練習をしているからです。


 あれだね。めっちゃ前に詩織さんと一緒に行ったところだね。と言っても、赤ちゃんのプルンプルンな脳みそでの記憶だから、もうほとんど覚えてないんだけどね。


 それは当たり前だから、良いとして、私は今苦戦しているのだ。前世ではしっかり乗れていたはずの自転車も乗れなくなってしまっている。スライダーとはまた違い、ペダルがついていることによって、こんなにも難易度が変わるものなのか。


 本当に補助輪のありがたみを感じる。今は外して練習しているから、あの安定感が恋しいな。


 私の体は転んだり、転けたりで土がつきまくっていたり、擦り傷、切り傷だらけだ。


 しかし!私は諦めない。後ろの方でお母さんが心配そうな顔で見ている。お父さんは後ろで今日はもう、、。見たいな顔で見ている。結心は、、、、砂遊びに夢中で私のこと見てないけど、砂でお城作っている結心が可愛いからいいだろう。


ドシャ!


 痛い。買ってもらって今日まで補助輪で支えられていた車体が地面に倒れる。これは帰ったらちゃんと拭いてやらないとな。私は自転車を起こしながら、気を入れ直す。もう少しで感覚が掴めそうなのだ。


 前世の経験と体の記憶力を信じて、、あっ、そういえばこの体じゃなかったか。


ガシャん!


 痛っ!集中しないといけないときに変なことを考えてしまったからだな。この失敗の要因は。


 集中だ。集中。ペダルを踏んで、車体のバランスをとることだけを意識するんだ。私は出来る。出来る。乗れる、乗れる。


 自分に自己暗示をかける。


 そして、ペダルに足をかけて、一歩目を踏み込む。


 重い。でも、ここで負けちゃダメだ。ゆっくり、ゆっくり私の乗った自転車は動き出す。


 車体がふらつく。私は一生懸命2歩目、3歩目を踏み込んで前に、前にと進もうとする。車体も安定し始める。


 よし!良い感じだ。このままだぞ、自分。


 そして、4歩、5歩と踏み進めることで自転車が進む。


 ここで初めて実感する。私は今、自転車に乗っているのだ!


〜自転車に乗れた! 1時間前〜

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