第32.5話


 家族全員が早起きで、初日の出を見るなんてはじめてだ。みんなで窓の外を眺めることにする。


 暗かった空がだんだんと、明るくなってくる。そして、地平線から少しずつ太陽が顔を出すのだった。


「「「「わぁ〜、きれぇ〜」」」」


 見事に家族全員がシンクロする。でも、そんなことしか言葉にならないぐらいに綺麗だったのだ。


 日の出なんて、毎日365日見えるじゃないか、という人もいるだろう。私もそう思っていた。見てみたいとは思うがどうせ、という気持ちもあったのだ。しかし、そんな考えはいい意味で裏切られたのだ。


 たかが、1年の最初の日の出、365日の1日のはずなのに凄く綺麗に見えるし、特別感があるのだ。これは、元旦という祝日に早起きしたというのも、プラスされてのことかもしれない。


 来年も見たい。毎年見ているという人の気持ちがよく分かったのだった。


 私たちが眺めていると、完全に日も出で空は明るくなっていた。さっきまで暗かったのが嘘のように、晴れ晴れとした空だ。


 これから始まる1年を祝福しているのようないい天気の中、私は深呼吸する。


 うん、いい空気。


「よし、じゃあ朝ごはんにしよっか」


 日の出を見てからすぐにキッチンに戻っていたお母さんが私たちを呼ぶ。


「「はーい!」」


 目もしっかり覚めた私たちは、元気な返事をしてお母さんの方へ向かう。


「僕は、もうちょっと寝てるよ」


 お父さんは、その言葉通り眠そうにしている。そのまま、二度寝に入るようで布団に向かっていった。


 と、いうことで3人での朝ごはんを食べる。朝から餅は食べづらいと考えたのか、お母さんは私たちの前にお吸い物を持ってくる。


 優しい味だ。どうやらお母さんは、お昼の分も作っていた。これにお餅を入れるのかな?それでも美味しそうなので期待しておこう。


 私がつけてから、つけっぱなしになっていたテレビから各地の日の出映像が流れる。


「全国の初日の出の様子ですね。全部の同じ太陽のはずですが、見る場所によって違う顔を見せてくれるのは凄いですね」


 テレビのキャスターさんが、映像を見ながらそういう言っている。私もそれに本当に同意する。日本内でも時差が存在するし、場所などによっても見え方が変わる。それによって感じかたや受ける印象も変わるだろう。


 そんな事を考えながら、私はさらなる疑問を抱く。来年、再来年と年が変わってきても受ける印象は変わってくるのだろうか?まだ、1年しか見てない私だからという疑問だろう。


 そこまで考えて、私は来年の初日の出を楽しみにするのだった。


〜初日の出 1時間〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る