6
「――はいっ、髪乾かし終わったよ」
ドライヤーのスイッチを切り、雫が僕に向かって声をかけてくる。
いま僕たちは部屋にいた。で、濡れた髪を雫に乾かしてもらったところだ。
「あ、ありがとう……」
「なにちょっと恥ずかしそうにしてるの? お風呂じゃもっと――」
「わーわー!? 言わないでよ!」
思い出さないようにしてたってのに、雫のせいで蘇ってきてしまった。
あのあと、身体を泡まみれになったおっぱいで洗われて、我慢できなくなって挟んでもらったり。まだ元気があったせいでシてもらったりと、散々にご奉仕されたのだ。
もう夫婦(仮)なんだからと容赦なく攻め立てられて、こっちは逝くかと思ってしまった。実際、べつのいき方をすることにはなったんだけど……。
慌てふためく僕の頭をなでなでしながら、雫が笑う。
「ふふ、紺太はいつまでも変わらなくて、可愛いよね」
「それ成長してないってこと?」
「そんなことはないかな。こことか」
「ちょっ、せっかく鎮まったんだから、刺激してこないでよ……!」
「ごめんね? じゃ、ほんとのとこ。成長はしてるよ」
「ど、どこら辺が?」
「やっぱ一番は覚悟決めてくれたことかな。このまま三大欲求を満たす都合のいい幼馴染みって思われるだけで過ごすかもしれないって、考えたこともあったの。別に好きでやってることだからいいんだけどね?」
「それは、ごめん……。でも僕は、ずっと、雫のことが好きだったよ……?」
「っ、やっぱ、言葉にされると嬉しいね」
雫がホッとしたように笑いながら、僕を抱きしめてくる。
背中越しに伝わる心臓の音は、すごく速くて、心配になっちゃうくらいだ。いろいろムリさせちゃってただろうし、ほんと申し訳ないな。
そんな僕にできることと言えば、彼女をたくさん思いやることだけだろう。
僕は後ろ手に回された腕を掴み、雫にも聞こえるようにささやく。
「……あのさ、このあと帰っちゃうでしょ」
「うんっ、紺太がちゃんと眠りについてから、だけどね」
「て、提案があるんだけど……」
「んー、なに?」
「……同棲しない?」
「なーに、もっと成長したとこ見せようって魂胆?」
「そういうことじゃなくて……僕は、雫とずっと一緒にいたいから。一緒に暮らして、一緒の楽しみを見つけたり、隣で笑い合ったり。あ、もちろん家事を手伝ったりもするから」
「で、朝からずっとセックスしたり?」
「……う、ん……っ」
「そっか」
雫が噛みしめるように呟いた一言が、静かな空間に溶けていく。
触れている腕、背中越しに感じる雫の体温が、さっきよりも熱い。抱きしめる力がより強まって、まるで離したくないって言ってるみたいだ。
「いいよ」
「え……?」
「だから、いいって言ったの。同棲、しよ?」
「ほんと?」
「その前に紺太のご両親を説得しなきゃとか、ウチの家族にも分かってもらわなきゃとか、やらないといけないことはあるけどね」
「そうだね、そこは僕が」
「ダメダメっ、こういうことは二人でやった方がいいに決まってるじゃん」
僕の後ろで雫が小さく笑う。
それから急に身体が引かれて、二人してベッドに横になった。
「紺太、こっち向いて」
「うん……」
「ちゅっ」
「!? またいきなりっ」
「ふふ、だってしたかったんだもん。私あんたのこと、大好きなんだから」
「ぼ、僕も雫のこと、愛してるよ?」
「もう~っ、すぐそうやって私のスイッチ入れるんだからぁ」
「え? なに、なんの話――うわっ!? なに急に馬乗りになんかなって」
「今夜は、寝かさないから」
「いやその、明日も学校がある……って、聞いてるの!?」
雫にたくさん気持ちよくされながら、僕は考える。
この先の人生、どんなに辛いことがあったとしても、二人でなら乗り越えていけるんじゃないかなって。
――あ、それより、明日を無事に迎えられるかの方が、心配だけど。
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