閑話休題65~その頃の妹 花嫁修業~

 レイラです。


「それじゃあ、皆、行こっか」

「「「うん」」」


 今日も私たちは冒険者ギルドの仕事を終えた後、私たちは兄貴の家へ向かった。


「まずは、馬の世話をやっちゃうよ」


 そして、いつものように兄貴の馬の世話をした後、家の中へ向かう。

 すると、兄嫁のエリカが家の中で待っていて、私たちにこう言う。


「よく来ましたね。さあ、花嫁修業のお時間ですよ」


 ということで、私たちの花嫁修業の時間の始まりだ。


★★★


 私たちの修業はまず家の掃除から始まる。

 とりあえず家の外に出て窓ふきからする。


「もっと腰に力を入れて拭かないと、汚れは簡単に落ちてくれないですよ」


 そうやって兄嫁に指導されながら私たちは掃除をする。

 最初のころは窓拭き掃除一つ満足にできなかったのが、最近は「まずまずですね」と、兄嫁に言ってもらえるくらいにはできるようになった。


 窓ふきが終わったら庭と玄関の掃き掃除だ。


「ほうきを使う時は隅の方から真ん中の方にごみを集め、そこでまとめて取るのですよ。特に玄関はお客様が真っ先に見るとからね。お嫁に行っても一番気を付けてお掃除するのですよ」

「「「「はい」」」」


 そんな風に兄嫁に言われた通りにやる。

 これも最初のころは適当にやっていて、「そんな事では家の恥になりますよ」と、兄嫁に怒られていたのですが、近頃は手順通りにできるようになった


 さて、こんな感じで外の掃除が終わったので、次は家の中の掃除だ。


★★★


 家の中では雑巾で拭き掃除をする。


「雑巾がけをするときは、床に顔が映るくらいピカピカにするつもりでやりなさい」


 そう兄嫁に言われながら一生懸命拭く。

 最初は面倒くさいなと思っていたのですが、段々と慣れて行くうちに床がピカピカでないと気持ちが悪くなるくらいには一生懸命磨くようになっていた。


 床掃除の後はゴミ捨てだ。


「ごみは分別して捨てなさい。この町だと、日によって燃えるゴミだったり燃えないゴミだったりを回収してくれます。ヒッグスタウンでも同じようになっていますので、今から慣れておくのですよ」


 ふーん。そうなんだ。私たちが嫁ぐ予定の旦那様たちはヒッグスタウン住まいなので、こことシステムが同じなのなら慣れておくのも悪くない。


 え?そのヒッグスタウンに住んでいたのにそんなことも知らないのかって?

 だって、家でゴミ捨てなんかしたことが無いんですもの。

 実家では、全部お母様とメイドがしてたし。


 ついでに、この町に住んでいるのにゴミ捨てはどうしてたのかって?

 私たちのアパートには共同のゴミ捨て場があったので、そこに適当に捨てていたから、一軒家のごみの捨て方なんか知らないし。


 ということで、兄嫁の掃除の指導はとても役に立ちそうだった。


★★★


 さて、掃除が終わったら兄嫁の料理教室の番だ。

 まずは近くの商店街まで食材の買い出しに出掛ける。


「このポテトは表面が滑らかで固くて新しそうですね。これを買いましょう」

「こっちのごま油はとても香りが良いですね。これを買いましょう」


 そんな風に食材の選び方から指導してくれ。


「さあ、コツは教えたので自分で選んでみなさい」


 と、私たちに実際に選ばせてくれる。

 兄嫁に教えられたとおりに食材を選ぶと美味しい料理ができるので、この知識は結婚しても役に立つと思う。

 食材を買って帰った後は料理をする。


「フレデリカさん、食材は均等に切らなければなりませんよ。さもないと煮たち焼いたりした時に、熱の伝わり方にばらつきが出ておいしくなくなりますからね」

「はい、気をつけます」


 そうやって材料の切り方から始まり。


「マーガレットさん。肉を焼くときは火の加減に気をつけなさい、最初は強火で焼いて、表面がある程度焼けたら、火力を弱めて中の方を焼くのです。こうすれば肉の味がしっかり残るのでおいしいのです」

「はい、頑張って練習します」


 肉の焼き方。


「ベラさん。スープを作る時は灰汁が出るので、しっかりとりなさい。灰汁が残っているとスープの味が落ちますよ」

「はい、頑張ります」


 スープの作り方。


「レイラさん。そんなに雑に盛り付けてはダメですよ。料理は印象一つで味の感じ方が変わるのです。ですから盛り付けを工夫して、皆においしそうだと思ってもらうようにしないといけませんよ」

「は~い」


 盛り付けの仕方まで手取り足取り教えてくれるのだった。

 そうやってできた料理は、兄貴たちと一緒に食べる。


「いただきます」


 兄嫁の熱心な指導もあって私たちもそれなりの料理を作れるようになった。


「これならもう少し練習したらお嫁に行っても大丈夫そうですね」


 そう兄嫁が言ってくれるくらいには上手くなった。

 しかも材料費は兄貴持ちなので、私たちは毎日ただ飯を食べることができるのだった。


 この点でも、兄嫁の花嫁修業は私たちにとって好都合だった。


★★★


 そうやって一日分の花嫁修業が終わった後は給料をもらって帰る。


「まあ、一応家の仕事もしてもらっていますからね」


 ということで、馬の仕事の給料の他に家事手伝いの分も給料をくれていた。

 これも結婚へ向けてお金を貯めている私たちには嬉しい扱いだった。


「さようなら。また明日」


 そして、私たちは家へ帰るのだった。

 本当、花嫁修業も悪くないと思った。


★★★


 ……って、これで本当に良いのだろうか?


 私の目的は、自分はあまり働かずに楽に生きることだったはず。

 それなのに、この調子で行けば結婚して、一生懸命働きながら生活してなければならない未来が待っているだろう。


 そんな未来、私の望んだものではない。

 結婚するにしても、家事はメイドに任せるなりして、私は楽に生きたいのだ。


 しかし、このままではそれは無理そうだった。


「何か手はないかしら?」


 そして、よせばいいのに、何か手はないかと、悪あがきを続けるのであった。

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