第431話~一角獣の角をゲットせよ! 後編~

 一角獣が現れた!

 一角獣は居場所が推定できても中々姿を現さない魔物なので、捜索開始から一日余りで発見できたのは僥倖だと思う。


 ……って、そんな感傷に浸っている場合ではない。

 早速戦闘準備だ。

 まずは全員を一か所に集め。


「『神獣召喚 海の主 海竜の加護発動』」


 俺の魔法でバフをかける。

 『海流の加護』は海での戦闘力をアップさせてくれる魔法だ。戦闘力を上げる他にも水中で呼吸ができたりと色々特典がある。


 え?ここは海じゃなくて湖じゃないのかって?


 まあ確かにそうだが、この魔法は別に海でなくても水の中なら効果があるから問題はない。

 それにこの湖って海と川で繋がっているからその点で海の一部とみることもできる。


 さて、そうやって魔法をかけた後は配置の指示だ。


「エリカとホルスターと銀とレイラは雷属性の魔法で一角獣を攻撃だ!」

「「「「はい」」」」

「リネットとマーガレットとベラは、雷属性を帯びた矢で一角獣をけん制してくれ!」

「「「了解!」」」

「フレデリカは『風の小精霊』でリネットたちの攻撃をアシストだ」

「はい」

「ヴィクトリアは魔法で船を守れ」

「ラジャーです」

「ネイアは一角獣が雷属性の攻撃で怯んだところで、『気弾』を叩き込め!」

「わかりました」


 そうやって全員に指示を出し終えた俺は、自らも剣を抜き、戦闘準備を整える。

 さて、いよいよ一角獣と勝負だ!


★★★


「『重力操作』」


 俺は魔法を使ってヴィクトリアの精霊が指示する方へ向かう。

 そんなに離れた場所ではない。大体船から二百メートルほどの場所だ。


「いた!一角獣だ!」


 その場所に着くなり水中に一角獣らしき影を発見する。

 頭の先にある長い角を前面に押し出して優雅に泳いでいた。

 一角獣の全長は角の長さが十メートルくらい本体が二十メートルくらいで、合計三十メートルくらいあった。

 やはり一角獣と言うだけあって体の割に角が長いようだった。


 さて、標的を発見したことだし早速攻撃開始だ。


「『天雷』」


 雷属性の魔法で一角獣を攻撃する。

 とはいっても、威力は弱めだ。


 なぜなら一角獣という魔物は数が少ないからな。だからなるべく殺さないようにして角だけいただくというやり方が推奨されている。

 角だけいただいて本体が無事ならそのうちまた角が伸びるからな。

 そうしたらまた角を回収してエリクサーの材料が得られる。

 そういう訳で弱めの魔法で攻撃しているという訳だ。


「とある異世界の公園では大きくなった鹿の角を切る行事があるそうですが、それと似たようなものですね」


 とかヴィクトリアは言っていたが、それで概ね合っていると思う。


 それはともかく、俺の魔法を食らった一角獣は電気でしびれたのか、その場から逃走を始めた。

 この行動は俺の予定通りだ。


「『天雷』、『天雷』」


 立て続けに魔法を放って、一角獣が逃走する方向を誘導して行く。

 もちろん誘導するのは俺の船の方だ。

 十分に船に近づいたところで捕えて角を切る。そういう作戦なのだ。

 魔法を放ち続けて五分後。


「今だ!お前ら!一角獣を攻撃しろ!」


 船に十分近づいたところで仲間に攻撃を命令する。


「『電撃』」

「『電撃』」

「『電撃』」

「『雷光術』」


 まずエリカたち魔法使い組が雷属性の魔法で攻撃する。

 もちろん威力は弱めだ。

 というか、エリカが本気で魔法を放てば一角獣など一撃で死んでしまうからな。弱めでちょうど良い。


「……」


 正面から雷撃が飛んできたことに驚いた一角獣が進路を変えようとするが。


「マーガレット、ベラ。行くよ」

「「はい」」


 リネットたち弓組が一角獣が移動しようとした先に雷属性を帯びた矢を放つ。

 バチンッ、バチンッ。

 雷属性の矢は水面にあたる度にそうやって派手な音を立てながら電気を放出し、一角獣が逃げられないようにする。


 もちろん、一角獣も黙っているわけではなく水中で急旋回を繰り返しては逃げ道を探ろうとする。

 しかし。


「『風の小精霊』よ。矢の軌道を変えて!」


 フレデリカが『風の小精霊』に命じて矢の軌道をうまく調整して、決して一角獣を逃がさないようにしている。


「……」


 完全に追い詰められた一角獣は、一か八か船に突撃してこの窮状を打開しようと試みる。


「『極大化 防御結界』」


 だが、船の前にはヴィクトリアが魔法で防御壁を構築しているのでそれ以上先には進めない。

 ガコンと大きな音を立てながら障壁にぶつかり派手な音を立てただけだった。

 しかもその際に脳しんとうでも起こしたのか、一角獣はひっくり返って、腹の方を水面に向けるという醜態を晒してしまう。


「『武神昇天流奥義 気弾』」


 そんな風に隙だらけになった一角獣にネイアが気弾の技を放つ。


 『気弾』はネイアがジャスティスから教わった技で、生命エネルギーの塊を飛ばして攻撃する技だ。

 結構な威力の技で、弱い魔物なら一撃で吹き飛ばすくらいのことはできる。

 実際、ネイアの気弾をもろに食らった一角獣も、それきり体をぴくぴくするだけで身動きが取れなくなったしね。

 どうやら一角獣の意識を刈り取ることに成功したみたいだった。


「やったな!作戦成功だ!」


 こうして俺たちは一角獣を捕獲することに成功したのだった。


★★★


 さて獲物も捕らえたことだし、収穫物の回収のお時間だ。


「『重力操作』」


 まず俺が一角獣を魔法で空中へもち上げる。


「リネット。それじゃあ、頼むぞ」

「任せて!『真空断』」


 そこへリネットが必殺技を叩き込む。

 するとスパッと一角獣の角が両断されるのだった。


「それでは私が回収させてもらいます」


 その角をヴィクトリアが回収して今回の依頼は完了だった。


 その後は俺が一角獣を湖の真ん中まで連れて行って。


「達者でな」


 と、ひと声かけ、そこに置き去りにして終わりだ。

 こうしておけば、そのうち意識を取り戻した一角獣はどこかへ逃げて行き、また大きくなった角をもってどこかに現れるという寸法だった。


「それじゃあ、ノースフォートレスへ帰るぞ」


 このようにして一角獣の角を手に入れた俺たちはノースフォートレスへと帰ったのだった。


★★★


 結果から言うと、今回の依頼で俺たちは金貨八十枚の報酬を得た。


「この一角獣の角。標準の物よりだいぶサイズが大きいですね」


 ということで、ボーナスとして金貨三十枚を追加でもらえたからだった。

 そんなわけで妹たちに給料を支払ってやる。


「今回は頑張ってくれたからな。ボーナス込みで一人金貨五枚ずつやろう」


 そう言いながら、一人一人順番に手渡しして行く。


「「「ありがとうございます」」」


 もちろん皆ニコニコ顔で受け取って行くのだが、妹の番になった時、俺は金貨を渡すのを止め。


「お前にはこっちだ!」


 代わりに銀貨十枚が入った袋を渡す。


「え~何でよ~。私にも金貨ちょうだいよ~」


 当然妹のやつは文句を垂れるが、そんな妹に俺はこう言ってやる。


「うるせえ!エリカにきつく言われているんだ。お前に大金を渡すなってな。この前みたいに投資で大金をすられたらかなわないからな。だから、今からエリカとギルドへ行って、強制的に貯金して来い!」

「そんなああ~」


 ということで、妹のやつはこの後エリカに強制的にギルドの銀行へ連れて行かれあのであった。


★★★


 その日の夜は家族と妹のチームの子たちと一緒にギルドの酒場で一杯やった。


「さあ!今日は好きなだけ飲んでくれ」

「ありがとうございます」


 たくさんの酒と料理を注文し、飲みに飲み、食べに食べた。

 残った料理は妹たちに持って帰らせてやった。


「ゴチになります」


 それを妹たちは喜んで持って帰っていた。

 一角獣の角も回収できたことだし、本当よい一日だったと思う。

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