第430話~一角獣の角をゲットせよ! 前編~

 さて妹の件も片付けたことだし、ギルドの依頼でもこなそうかと思う。

 妹の借金も肩代わりさせられてしまったし、他にもこの先出費がかさみそうな感じだからここでガツンと稼いでおこうと思う。


 ということで、冒険者ギルドに行って依頼を探すことにする。

 昼ご飯を食べた後の昼過ぎ頃、皆でギルドへ出かける。


「うん、何と言うか。昼時のギルドの掲示板の前って人がいないよね」


 リネットが言う通り昼時のギルドには人がいなかった。


 まあ依頼は朝一に張り出されて、良いものから受託されて行くからな。

 昼時に残っているのは安すぎて割に合わない依頼か、報酬は良いけれど難しくて誰も受けたがらない依頼ばかりだからな。

 人がいないのは当然であった。


 もっとも俺たちにとってはそちらの方が都合がいいけどな。

 俺たちは基本報酬の良い依頼しか受けないからな。どんな難易度の依頼だって問題ない。

 今の俺たちの能力ならどんな依頼でも軽くこなせてしまうからだ。

 それに人がいない方がゆっくり探せるからな。

 だから俺たち的にはこっちのほうが良いのだった。


 ということで、全員で手分けして依頼を探すと、リネットが良さげな依頼を見つけた。


「ホルスト君。この依頼何か良さそうじゃない?」

「リネット、何かいいの見つかったのか?」

「うん。『カイザー湖にて一角獣目撃の情報あり!一角獣を捕えて一角獣の角を回収してほしい。報酬金貨50枚。一角獣の角の大きさによってはボーナスあり』だって。これ何か良くない?」

「一角獣の角の回収の仕事か。確かに良さそうだな」


 一角獣は頭に大きな角を生やした魚の魔物だ。

 その角はエリクサーの材料になると言われており、とても高値で取引されている。

 ただし、一角獣はとても神出鬼没であり発見が難しく、しかもとても強い魔物で、おまけに敵のフィールドである水の中で戦わなければならないため、角の回収は非常に困難であった。

 その難易度はSランクの冒険者でも受けたがらないほどであった。


 まあ、俺たちには関係ないけどね。

 一角獣ごときにビビっていては邪神の封印などできはしないからな。

 だからこの件に関しても、一角獣か……次の目的地は海底だし水の中での戦闘の練習にちょうどいいんじゃね、というくらいの感想しか抱かなかった。


「よし、それではこの依頼にしようか」


 ということで俺たちはこの依頼を受けることにしたのだった。


★★★


 翌日、俺たちはカイザー湖へ向けて出発した。

 カイザー湖は以前一度遊びに行ったことがある。

 確かエリカのお父さんたちと一緒にお父さんの別荘に泊まり、その時に湖の上でヴィクトリアに大胆なことをされた記憶がある。

 あの時のヴィクトリアは今思い出してもかわいかったと思う。


 それはともかく、今回行くメンバーとしては俺に俺の嫁たち四人、ホルスターと銀、それに妹のパーティーの四人の合計十一人だ。

 うちの家族はともかく、妹たちまで連れて行くのは結婚資金を稼がせてやるためである。


「今回、お前たちには船の操縦や食事の準備を主にやってもらいたい。それと一角獣が現れたら支援を頼むよ。それだけやってくれたら一人金貨二枚払ってやる」


 そうやって高額のアルバイト料を提示したところ。


「「『「もちろん、行きます」」」」


 と、喜んでついてきた。

 まあ、結婚したら生活費に出産費用、子育てにといくらでもお金がかかるからな。

 妹たちも稼げるときに稼いでおきたいのだと思う。


 さて、メンバーも揃ったことだし、出発するとしよう。


★★★


「『空間操作』」


 魔法で一瞬でカイザー湖に着いた俺たちはすぐに行動する。


「ヴィクトリア、あれを出せ!」

「ラジャーです」


 俺に言われたヴィクトリアがそうやって収納リングから出したのは……。


「え?お兄ちゃん、これって船だよね。お兄ちゃん、船何か持っていたの?」

「ああ、『エリュシオン号』って言うんだ。中々のものだろう?」


 俺たちの愛船エリュシオン号だった。


「「「「もっと近くで見てもいいですか?」」」」


 船が珍しいのだろう。

 妹のパーティーの子たちが早速船に乗り込んで行ってべたべた触っては、「すごい!」、「私、船って初めて乗るわ」、「私はお父様たちと乗ったことがあるけど、もっとぼろかった」、「お兄ちゃんがこんなの持っていただ何て……ちょうだい!」と、はしゃいでいる。


 というか、妹よ。ちょうだいって何よ。

 これは俺たち家族の大事な財産だからな。絶対にやらないぞ!


 ちなみにネイアもエリュシオン号を見るのは初めてで、「すごく立派な船ですね」と、驚きを隠さないでいる。

 そして、ネイアは船を見ていてあることに気がついたのか俺に質問してきた。


「そういえば、この船って帆とか櫂(かい)がついていないですね。どうやって動くのですか?」

「簡単な事さ。この船には新技術魔道エンジンがついていて、それで船の下にあるスクリューを回して動かすのさ」

「スクリューですか。すごい船ですね。さすがはホルストさんたちの持ち船ですね」


 と、褒められた俺と他の嫁たちは大層気分が良くなるのだった。

 こんな感じで船も出したことだし、そろそろ湖に乗り出して行こうと思う。


★★★


 さて、船に乗り込んで出港したことだし、ネイアと妹のパーティー、それぞれ顔見せというか、紹介しておこうと思う。

 まずネイアを妹たちに紹介する。


「こちらが今度俺の側室になってくれるネイアだ。よろしく頼むな」

「ネイアです。よろしくお願いします」

「ホルストの妹のレイラです」

「レイラとパーティーを組んでいるマーガレットです」

「同じくベラです」

「同じくフレデリカです」

「「「よろしくお願いします」」」


 そうやってお互いに挨拶が終了したところで、簡単な自己紹介を兼ねた雑談をしてもらう。


「ええ!ネイアさんって、エルフの国の神官長だったのですか。凄いですね」

「おまけに国営のダンス団のリーダーもしていたなんて多彩ですね」

「今度、ダンス教えてください!」

「ネイアさんのような人、お姉ちゃんの嫁にはもったいない」


 雑談と言っても主にネイアが質問攻めにされているだけだがね。

 でも仕方ない。

 何せネイアは美人さんで多才な子だから目立つからな。他人にいじられるのはしょうがなかった。


 というか、妹よ。ネイアさんが俺にもったいないとはどういう意味だ?

 その辺、後で話し合おうか。


 それはともかく、こんな感じでネイアと妹たちの顔見せは終わったのだった。


★★★


 さて、船に乗り込んだ以上妹たちにはきっちりと船の仕事もしてもらう。

 その為に大金で雇ってきたのだからな。

 きっちり働いてもらう。


 まずは船の操船方法を教える。


「いいか、舵はゆっくり動かすんだぞ。さもないと舵がおかしくなる可能性があるからな。気を付けてやれ!」

「エンジンも急には出力が上がらないからな。航行中は常に動かして待機状態にしておくんだ。そうすればエンジンに無理をさせずに済むからな。覚えておけよ」


 そんな感じで船の操作方法について教え、ネイアと妹のパーティが船を使えるように仕込んでおく。

 結構難しいことを教えている感じがするかもしれないが、これでも他の船に比べると全然簡単なのだ。

 他の船だと風に応じて帆の向きを変えたり、帆のたたみ方、帆の展開の仕方、マスト上での作業とこの船よりも覚えることが多いのだ。

 この船など大分自動化できているので、操船方法は素人でもできるくらい簡単な部類なのだ。


 さて、そうやって操船方法を教えた後は船内の仕事を教える。

 甲板掃除に食事の準備など基本的なことを教えて行く。

 これはエリカがきっちりと教えている。


「さあ、あなたたち!気合いを入れて食事を作って、掃除をするのですよ」


 と、気合十分な様子で四人に教えている。

 この雑用には四人の花嫁修業という意味もあるみたいだから気合も入るのだと思う。

 現に家にいる時だって、時々四人を呼び出しては。


「ほら、出汁の取り方がまだまだですね。そんなことでは旦那様や子供たちにおいしい料理を食べさせてあげられないですよ」

「ほら、窓を拭くときは隅の方まできちんと拭くこと。隅の方の汚れって、目立たないようで結構目立つんですよ。気をつけなさい」


 そんな感じで厳しく四人に指導しているからな。

 ちょっと厳しい感じもするが、エリカがかつてヴィクトリアやリネットに指導していた時にもこんな感じだったと思うから、エリカの中ではこれが普通なのだと思う。

 まあ、俺的には頑張れと応援するくらいしかできないから、頑張ってほしいものだと思う。


★★★


 ところで、船は基本四六時中動いているので、夜でも誰かが艦橋に立って見張りをしなければならない。

 それで、今は俺とリネットが見張りをしている。


「春とはいえ、夜は冷え込むよね」

「全くだな」


 二人で一枚の毛布にくるまり、仲良く見張りをしている。

 ただそれでもまだ寒い。


「ちょっと待っていてね。お茶淹れてくるから」


 そこでリネットが立ち上がって、環境に設置してある魔道コンロを使ってお湯を沸かし、温かいお茶を淹れてくれた。


「どうぞ」

「ありがとう」


 体を寄せ合いながらリネットが淹れてくれたお茶を二人で飲む。

 とても体が暖まって心地が良い。

 そして、その高揚感の赴くままにリネットを抱きしめる。


「ホルスト君、仕事中だよ」


 リネットはそう言いながら一旦は拒否するものの、結局欲望には抗えず、最後は俺とべったり抱き合うのだった。

 環境で過ごす二人きりの夜。

 結構燃えることができて良かったと思う。


★★★


 その翌日の昼間。

 艦橋でネイアとともに見張りをしていたヴィクトリアから報告が上がって来た。


「ワタクシが警戒に出していた水の精霊から報告です。一角獣が現れました」

「いよいよ出たか。皆行くぞ!」


 ヴィクトリアン知らせを受けた俺は武器を取ると、立ち上がるのだった。

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