第427話~新たなる側室?~
妹のことがあって数日。
「こんにちは」
「ホルスト様、ようこそおいでくださいました」
俺は嫁たちとネイア、それに子供たちを連れてエリカのお父さんの屋敷へやって来た。
今日ここへ来たのは、妹の件のお願いとネイアの件の報告だ。
あともう一つあるが、それはこの屋敷以外での話なので、とりあえず置いておく。
いつもの様に執事さんに案内されて奥へ行くとお父さんが待っていた。
「よく来たね」
いつものようにお父さんは笑顔で俺たちのことを出迎えてくれたので、俺とエリカの二人でまずは妹のことについて話すため席に着く。
他のメンバーはリビングの隅っこで、エリカのお母さんと一緒にホルスターや銀と遊んでいてもらうことにする。
席に着くと同時に俺はお父さんに謝る。
「この度は申し訳ありません。うちのバカ妹のことでお父さんに迷惑をかけてしまって」
「何、気にすることはないよ。それよりも金貨三十枚か。レイラちゃん、結構な金額の詐欺に遭ってしまったね」
「ええ、その通りです。あの妹のために金貨三十枚も払うとか本当に腹が立ちますね」
「まあホルスト君のいらだちはわかるけど、とりあえず払っておくしかないよ」
「それはそうなんですけど、俺に余計な出費をさせてくれた詐欺業者共をこのままにしておくつもりはありません。まあ、そのうち目に物を見せてやりますよ」
お父さんに言った通り、妹の借金は一応払っておいたが、このままにしておくつもりは無い。
絶対に詐欺業者共は酷い目に遭わせてやるから覚悟しておけ!
「それで、お父さん。レイラの相手は見つかりそうですか?」
「まあ、何とか候補は見つけているよ。数名に目星をつけているけど、どの子も中々将来性がありそうな子たちなんだ。そのうち君たちにも紹介するから、もう少し待っていなさい」
「ありがとうございます」
俺は妹のために骨を折ってくれているお父さんにお礼を言った。
今回妹のせいでお父さんに迷惑をかけてしまった。
申し訳なさ過ぎて、本当に頭が上がらなかった。
「それで、お父様。頼んでいたレイラさんのパーティーの子たちのお婿さん探しの方はどうですか?」
「ああ、レイラちゃんのパーティーの子たちの結婚の件だろ?そっちの方も順調だよ。むしろレイラちゃんよりも順調だよ。何しろレイラちゃんのように評判が悪くなるようなことをしていないし、ホルスト君たちと縁ができるからね。だから是非にという親が多いんだよ」
ふーん、そうなのか。
まあ若い騎士たちの親としては、息子に俺との縁ができるとなったら出世の糸口ができて嬉しいだろうからな。
「そうですか。ならば良かったです。では、お父様。そちらの方もお願いします」
「ああ、任せておきなさい」
★★★
さて、妹たちの件の話が終わったので今度はネイアの話の番だ。
「ネイアさん、こっちへ」
エリカがネイアを席に呼び、ネイアが席に着いたところで話の再開だ。
「お父様、ご存じだとは思いますが改めてご紹介させてもらいます。今度旦那様の側室になってくれることになったネイアさんです」
「会長、お久しぶりです。今度ホルストさんの側室になることになったネイアです。改めてよろしくお願いします」
そう言いながらネイアさんはお父さんに対してぺこりと頭を下げて挨拶する。
それに対してお父さんは大きく頷き、優しく声をかける。
「そうか。ネイア君もホルスト君と結婚するのか。それはめでたい話だ。これで、エレクトロン家は家族が増えそうで何よりだ。まあ、頑張りなさいよ」
「はい、頑張ります」
「しかし、ネイア君が結婚するとはヒッグス商会としては残念なことだね。ネイア君は仕事ができるからヒッグス商会で活躍してくれると思っていたのに。それが結婚して退職するのは残念だね」
「あのう、会長。お言葉ですが、私、仕事は辞めませんよ」
「え?そうなの?」
ネイアが仕事を辞めないと聞いてお父さんが驚いている。
まあお父さんがそう思うのも無理はない。というのも。
「はい。仕事の方は頑張って続けるつもりです」
「でも、それだと子供とかできたらどうするの?後、ネイア君の場合は世界各国へ赴任したいと言っていたけど、それだとホルスト君と離れ離れに暮らさなきゃならなければならないけどどうするつもりなの?」
と、そういう事情があったからだ。
そのお父さんの疑問に対してネイアはこう答えた。
「大丈夫です。私はノースフォートレスの町に住んで、仕事にはホルストさんが連れて行ってくれるという話になっていますので」
「ああ、そういうことね」
そのネイアの答えにお父さんも納得したようで、ウンウンと頷いている。
ネイアの言う通り俺たちの予定では、ネイアは頃合いをみて俺たちと同居して俺の家から職場へ通う予定だった。
もちろんその際には俺が魔法で職場へ送って行くつもりだ。
まあ、ちょっとあまり聞かないやり方だが、このやり方ならば仕事と家事を両立できるはずだった。
それに、うちにはネイア以外にもたくさん嫁がいるし、俺もいるからな。
家事も育児も皆で分担してやればいいのだ。
これならばネイアも仕事を続けながら子育てもできるはずだった。
「まあ、家族の形はいろいろあってもいいと思うから、ホルスト君の所がそれでいいというのならそれでいいと思うよ。僕としてはネイア君の仕事に多少配慮してあげることくらいしかできないけど、まあ頑張りなさい」
「ご配慮ありがとうございます。できる限り仕事に家事にと頑張るので、応援よろしくお願いします」
★★★
さて、これでネイアの件の報告も終わったので、そろそろもう一つの用事の方へ行こうかと思い、席を立とうとすると、お父さんがエリカにこう言って来た。
「ところで、エリカ。一つ頼みがあるんだが」
「何でしょうか、お父様」
「ホルスト君に側室を増やすのは別に構わないのだが、ホルスト君の側室って全員ヒッグス一族以外の人間だろ?」
「それが何か?」
「いや、ホルスト君の側室に一人もヒッグス一族の人間がいないとうるさい連中がいるのさ。今は何とか僕が押さえつけているけど、このままだとそのうち不満が爆発するかもしれない。だから一人でいいから、ホルスト君の側室にヒッグス一族の娘を置いてくれないか?」
「ヒッグス一族の娘を旦那様の側室にしろと仰るのですか?」
お父さんの話を聞いて、エリカが渋い顔をする。
まあ、エリカは俺に冷淡だった一族の連中のことが基本嫌いだからな。
いくらお父さんの頼みでも、一族の娘を俺の側室にするのにあまりよい顔はできないのだと思う。
ただ、放置してもめても困ると思ったのか、しばらく考えた後、こう返答した。
「わかりました。お父様がそこまでおっしゃるのなら検討しましょう」
「おお、考えてくれるのか」
「ただし、側室にするのは私や他の側室の子が気に入った子にしますからね」
「気に入った子って……それだと重臣クラスの家から、『何でうちの娘はダメなんだ』と、言われそうなんだが」
「そんなのは知りません。この条件を吞んでいただけないのなら、この話はなかったということで……」
娘にそこまで言われたお父さんは、「ちょっと」と慌てた様子を見せ、しばらく考えた末に結論を出す。
「わかった。その条件で良い。まあ、一人もいないよりは大分状況はマシになるだろうから、それでよい。お前の好きなようにしなさい」
「では、そのようにさせてもらいます」
と、エリカとお父さんの間で話し合いがまとまったのだった。
というか、俺の新しい嫁の話なのに、俺が全然話に噛ませてもらっていないんだが。
う~ん、これはさすがに……、とも思うが、よく考えたらこれは政略結婚の一種でもあるから俺個人の意見などガン無視ということなのだろう。
まあ、いいか。俺も女の子が側にいるのが嫌なわけではないし。
それよりも、どうせ側室にするのならかわいい子を選んでくれ。
俺はエリカにそう願うのだった。
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