閑話休題64~その頃の妹 破滅へのカウントダウン~

 レイラ・エレクトロンです。


 やばい、やばい、やばい。

 本当にやばい。


 私は養殖業者に投資していて、その養殖業者からの配当で稼がさせてもらっていた。

 しかし、先日その養殖業者が倒産してしまった。

 おかげで配当がもらえるどころか、出資金さえも返って来るかどうかわからない状態になってしまっている。


 まあ、それだけなら出資金を諦めればよいだけの話なのだが、私の場合、出資するに際して自分のお金だけでなく借金したお金までつぎ込んでいる。


 しかも、そのお金は十日に一割という高利貸しから借りていた。

 だから、私がお金を返せず、どうしようかとあれこれ模索している間にもどんどん借金が増えて行っていた。


 その金額は既に軽く金貨三十枚を超えている。

 元々借りたのは金貨十枚だったから、もう三倍以上の金額になっていた。


 そんな大金、私には返すあてがない。

 本当にどうやって返せばよいかわからない。


 え?兄貴に頼ればいいんじゃないかって?

 それはダメだ。

 そんなことをすればあの怖い兄嫁に全部バレてしまう。


 万が一そんなことになったら私の人生終わりだ。

 絶対に座敷牢に放り込まれるか、もしくはあの修道院に送り返されて再びの修業の日々を送る。

 そんな未来が待っているに違いなかった。

 そんな未来、私には耐えられそうになかった。


 そうやって追い詰められた私は全力で頭を使い、そんな未来を回避しようと考えに考える。

 そして、一つのアイデアを思いつく。


「……そうだ。あの養殖業者と高利貸し。裏で手を組んでいる可能性があるんだった」


 町の噂で聞いた養殖業者と高利貸しが手を組んで、出資者に詐欺を仕掛けたという話を思い出す。


「もしかして、その点をつけば借金を返さなくてもよいかも」


 もし、本当に養殖業者たちが裏で手を組んでいたとしたらそれは立派な犯罪だから、その場合私の借金もチャラになる。

 そう考えた私は、早速高利貸しの所へと乗り込んで行くのであった。


★★★


 結論から言うと、この交渉には失敗した。

 高利貸しに行き、詐欺の話をすると。


「何をバカなことをおっしゃるんで?そんな証拠はあるんですかい?」


 そうやって高利貸しに鼻で笑われた。


 よく考えたら当然の結果だった。

 私は彼らが詐欺をしたという証拠を何一つ持っていない。

 そんな状況で交渉しても、交渉のテーブルにすらつくこともできず、一方的に追い出されるだけであったのだった。


「また、来ます」


 ということで、私はしょうがなしに帰ることにしたのだが。


「ちょっと、待ちな」


 そんな私を高利貸しが呼び止めた。


「何でしょうか?」

「金を返すあてがないんだったら、金を返せるような仕事を紹介するぞ」


 どうやらお金が無い私に、借金を返すことができるような仕事を紹介してくれるらしかった。


「本当にそんな仕事があるんですか?」

「ああ、あるぜ。姉ちゃん、顔は悪くないから稼げると思うぜ」

「そうですか?それでは話を聞かせてください」


 そんなわけで、私は高利貸しの話を聞くことにしたのだった。


★★★


 その晩、私は家に帰ってから吐いた。


「おげえええ」


 トイレにもたれかかって、大量の吐しゃ物をトイレに流す羽目になった。


「レイラ、大丈夫?」


 そうやって仲間たちが心配してくれたが。


「大丈夫。昼間食べ過ぎただけだから」


 と、誤魔化しておいた。

 そうやって一通り吐いた後は自室に戻り、吐いた原因について考える。


 私が吐いた原因。

 それは、高利貸しに紹介された仕事が原因だった。


 高利貸しに紹介された仕事。

 それは、ベッドの中でナニをする仕事だった。


「へへへ。姉ちゃん、かわいいから、たくさん稼げるぜ」


 高利貸しは笑いながらそう言っていたが、そんな仕事、冗談ではなかった。

 自分がそんなことをしていると想像するだけで気持ち悪かった。


 だから、家に帰ってから吐いた。

 胃ごとぶちまける勢いで、胃の中が空になるまで吐いた。


 吐いたことで一時的にすっきりしたが、それで借金が無くなったわけではない。

 もし、借金を返せないとなれば、私のようなあまり能の無い人間が借金を返すにはそのくらいしか手段が無いのだから、最終的にはその仕事をしなければならないだろう。


 ここで私は考える。

 素直に兄貴に事の次第を話して何とかしてもらうのと、その仕事をするのと、どちらが良いのかを。


 考えた結果、兄貴に話そうと思った。

 そちらの方がまだましだと思ったからだ。


「よし!明日、兄貴の所へ行こう!」


 そう決めた私は、明日に備えてそのまま眠ることにした。

 眠る前にこう祈った。


 ああ、どうか借金の話をしても、兄貴や兄嫁たちがあまり怒りませんように!


★★★


 と、一旦は思ったものの、朝になると兄貴たちが怖くて結局兄貴の家に行けなかった私なのでした。

 ああ、本当に私って情けない。

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