第423話~ネイアさんとのデート 後編~
「うわー、ここが水族館ですか。たくさんお魚さんが泳いでいてきれいですね」
ネイアさんを水族館へ連れて行くと、とても喜んでくれた。
エルフの国という山国育ちのネイアさんは、魚と言えば川魚くらいしか見たことが無いらしい。
だから、ここの水族館にいるような暖かい海特有の色とりどりの魚を見るのは初めてらしく、物珍しさもあってとても喜んでいるようだった。
「ネイアさん、とても楽しそうだね。そんなに喜んでもらえると俺も嬉しいよ」
「はい。とても楽しいです。こんな素敵な場所へ連れて来ていただいて、ありがとうございます」
ネイアさんはそう言いながらとてもにこやかに笑うのだった。
そして、ここで大胆にも俺の腕に抱き着いてきた。
ネイアさんの柔らかい胸が俺の腕にピッタリとくっついて来て、ちょっと戸惑ったけれど、俺も男。
ここで間違った行動をしてネイアさんを辱めてはならないと思い、今度は俺の方からネイアさんの肩を抱きに行く。
その行動に対してネイアさんはちょっと驚いたような顔をしたが、すぐに俺の胸に顔を埋めてきて、一言「嬉しいです」と言ってくれた。
その言葉を聞いた俺は、こんな可憐な生き物を抱きしめることができて嬉しいと素直に思うのだった。
★★★
水族館を出た後は、ナニワの町の観光地を回った。
前にも行ったことがある海の見える丘や博物館などに行った。
そのように観光地を一通り巡った後は商業区で買い物をする。
「うわー。噂通り、フソウ皇国の風俗って独特何ですね」
商業街へ行くと、ネイアさんが物珍しそうにして商店で売っている品を見学している。
まあ、この国の品物は独特だからな。
食べ物もお米を中心としたほかの国ではあまり食べられないものだし、着ている物だって着物とかいうちょっとひらひらした感じの変わった服装だし。
とはいえ、これはこれでありだと思うので別に文句は無いけどね。
前にここの花火大会に参加した時、うちの嫁たちも浴衣とかいう着物の亜種を着ていたしね。
そんなことを思いながら、あちこち見て回っているネイアさんの後をついて行くと、ネイアさんの視線がある一か所で止まったことに気がついた。
何だろうと思って見ていると、ネイアさんは一つの首飾りをじっと見ていた。
その首飾りは変わった形の宝玉のような物に組紐をつけた首飾りで、俺も見たことが無い代物だった。
何だろうと思った俺は店主に聞いてみる。
「すみません」
「何だい?」
「このちょっと変わった首飾り。気になるので見せてもらえないですか?」
「首飾り?ああ、このヒスイでできた勾玉まがたまのことだね」
「勾玉?この首飾りは勾玉というんですか」
「そうだよ。この形の首飾りは昔からある物なんだけど、最近この国でブームになってね。結構流行っているんだよ」
「ふ~ん、そうなんですね」
なるほど流行の宝石という訳か。そういえば、周囲を見ても身に着けている人が結句いるな。
俺はネイアさんの方をちらりと見る。
すると、ネイアさんは目を輝かせながらずっと勾玉のことを見ていた。
ここは男を見せねば!
そう思った俺はネイアさんに声をかける。
「ねえ、この勾玉、買ってあげようか」
「え?そんな……私ごときにいいんですか?」
「別にいいよ。ネイアさんにとても似合いそうだし。この勾玉も似合う人に買ってもらった方が喜ぶと思うよ」
「まあ、ホルストさん。お口が上手ですね。でも、そこまで言っていただけるのなら、是非買ってほしいです」
「わかった。ということで、オヤジさん。これください」
「あいよ。銀貨二十枚だよ」
俺は財布の中からお金を取り出すと、店主に支払った。
そして、買ったばかりの勾玉をネイアさんの首にかけてあげる。
俺に勾玉をかけてもらったネイアさんはニッコリと笑い、お礼を言ってくる。
「ありがとうございます」
そう言いつつ、そのまま俺に抱き着いてきた。
こんな大勢の人がいる商業区で抱き着くとか、ネイアさんて意外に大胆なんだな、そう思った。
もっとも、その後俺もネイアさんのことを抱きしめたので人のことを言えたものではないけどね。
そうやってしばらく抱き合った後、正気に戻った俺たちは急に恥ずかしくなって、両者赤面して大変だったが、何とか耐えきると、そのまま次の場所へと移動するのだった。
★★★
ナニワの街で買い物をした後は一気に場所を移動する。
ナニワからフソウ皇国の皇都キョウの町へと魔法で一気に飛んだ。
ここへ来た目的は。
「ネイアさん、あそこです。あそこの宿屋がそうです」
「まあ、ここが懐石料理とやらがおいしいという料亭ですか」
前に俺たちが利用したことがある高級料亭兼宿屋だった。
ここの懐石料理はとてもおいしかったので、フソウ皇国まで来たのならネイアさんにも食べさせたいなと思って連れてきたのだった。
「いらっしゃいませ」
店に入るなり女将さんがそうやって出迎えてくれ、すぐに部屋へと案内してくれる。
高級な店だけあっておもてなしもばっちりで、部屋にはあらかじめ暖房をきかせてくれているなどお客様への心づかいが満ち溢れていた。
そんな女将さんたちの心づかいを感じながら席に着くと、料理が次々に運ばれてくる。
「とてもおいしいですね」
懐石料理はとてもおいしかった。
食前酒と前菜から始まって、刺身、焼き魚、お肉に季節の物と、おいしい料理がたくさん出てきた。
料理が出てくる速度も、こういう店では客の様子を見ながら出してくるので、お腹が段々と一杯になって来る感じがしてちょうどよかった。
「こちらが、季節の果物の盛り合わせになります」
そして、最後にデザートとして果物が出てきたので、それを食べて食事は終わりだ。
「おいしかった?」
「はい!大満足です」
俺がネイアさんに食事の感想を聞くと、大変満足そうな顔をしてくれたので、俺としても連れて来た甲斐があったと感じられてとても良かった。
さて、これで晩の食事も終わったことだし、デートも終了だ。
そろそろネイアさんをブレイブの町へ送り届けなければ。
そう思い、声をかける。
「名残惜しいけど、そろそろ帰ろうか」
すると、ネイアさんは俺のその発言に対して首を縦に振らず、俺にピタリとくっついて来て俺の耳元でこうささやくのであった。
「私、今日は帰りたくないです」
「えっ?」
その言葉を聞いた俺は、胸のどきどきが止まらなくなり、つい戸惑ってしまうのだった。
★★★
その後、一旦宿屋を出た俺は近くの花屋で花束を買ってくる。
え?花束何かどうするのかって?
決まっているだろうが!こうなった以上、ネイアさんとはきちんとしなければならないだろうが!
そのために花束を買ったんだよ!言わせるな!恥ずかしい!
帰ってくると、宿屋のリビングで待っていたネイアさんの前に座る。
そして、ネイアさんの前に座ると、こうプロポーズする。
「ネイア。好きだよ。こんな俺で良ければ結婚してくれないか」
「はい、よろこんで!」
そうやってプロポーズした後はキスをした。
ネイアさんの唇はとても柔らかく、甘酸っぱかった。
★★★
結局、その日は懐石料理を食べた宿屋に泊まって行った。
「私、初めてなので優しくしてくださいね」
お風呂から出て来た後、ネイアさんはそう言いながら俺の前に座ると、そのまま俺に抱き着いてきた。
「大丈夫だよ。安心して俺に任せてよ」
そんなネイアさんを俺は優しく抱きしめると、一晩中二人でイチャイチャしたのだった。
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