今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第420話~潜水艇は夏頃まで使えません!~
第420話~潜水艇は夏頃まで使えません!~
ノースフォートレスの町へ帰って少しのんびりした後、俺たちはエリカのお父さんの所へ挨拶に行った。
「『空間操作』」
魔法で一気にヒッグスタウンの近くまで飛び、そこから馬車で町の中へと入る。
そして、そのままお父さんの屋敷へ向かう……と、その前に一か所別の場所に寄る。
「お、ここへ来るのも久しぶりだな」
俺がそう言いながら目的の建物の前に着くと、中へと入って行く。
なお、建物の入り口の看板には、『ヒッグス家魔道具工房』、そう書かれていた。
★★★
「レンブラントさん、お久しぶりです」
「これはホルスト様。よくぞお越しくださいました」
魔道具工房に入ってしばらく待っていると、責任者のレンブラントさんが現れて挨拶をしてくれた。
レンブラントさんは著名な魔道具職人で、前に俺の嫁たち用の杖やローブなども作成してくれた人である。
「それで、今日はどういったご用件でしょうか」
「実は今日はこれを見てもらいたくて。おい、ヴィクトリア」
「ラジャーです」
そうやって俺がヴィクトリアに出させたのは。
「ホルスト様。この船のような、亀の甲羅のような不思議な形をしたものは何でしょうか?」
「これは潜水艇だ。まあ、海へ潜って行くための乗り物だな」
以前に神聖同盟の連中から接収した潜水艇だった。
「潜水艇ですか。……どれどれ」
俺に潜水艇を見せられたレンブラントさんは目をキラキラさせながら、潜水艇をじっくりと調べ始めた。
その様子は面白いおもちゃを与えられた子供のようで、とても無邪気そうで興味津々の感情を表に出しているように感じられる。
こういう点、レンブラントさんも生粋の魔道具職人なんだと思う。
さて、そうやって一通り潜水艇を観察したレンブラントさんが俺に聞いてくる。
「それで、ホルスト様はこれを私どもにどうさせるおつもりで持ってこられたのでしょうか?」
「まずは、これが水中できちんと使えるかの検証をしてほしい。後、この潜水艇を大きく作り変えて最低でも十人くらいは乗れるようにしてほしい。後は、稼働時間の延長。俺の望みはそのくらいかな」
「わかりました。それでは機械類に詳しい部下を呼びますので、これからいろいろ調べさせてもらってもよろしいですかな」
「ああ、お願いするよ」
ということで、これから潜水艇の実験をすることになった。
★★★
実験の結果を報告すると、結構うまく行きそうな感じだった。
実験は、俺が魔法で掘った大きな穴にヴィクトリアが水の精霊を使って水を入れ、小さな池を造って行われた。
「お?いいじゃないか」
早速中に入れて潜水艇を動かしてみると、特に漏水するようなこともなく、潜水艇は水の中をすいすいと動くことができた。
これで潜水艇の性能自体に問題が無い事が判明したので、後はこれをどうやって大きくするかという話である。
それで、俺たちと魔道具工房の技術者たちで相談した結果。
「この潜水艇をちまちま改造するよりも、新規生産した方が早いですね」
という結論に至ったのだった。
「それで、新規生産するのにどのくらいの時間がかかりそうだ?」
「そうですね。もうちょっとこの潜水艦の分解調査をして、それから生産という形になると思いますので、夏頃にはできると思います」
夏頃か……。
俺は思ったよりも早いなと思った。
最低でも秋頃まではかかるのではないかと予想していただけに望外のことだった。
さすがは圧倒的な技術力を誇るヒッグス家の魔道具工房だ!そう思った。
「それじゃあ、それでお願いするよ」
「畏まりました。お任せください」
と、こんな感じで潜水艇の目途が立った俺たちは、ホッと安心するのだった。
★★★
さて、魔道具工房での用件が終わった俺たちは次はエリカの実家へ向かった。
「やあ、よく無事に帰って来てくれたね」
もちろんエリカのお父さんは大喜びで俺たちを出迎えてくれた。
「これ、獣人の国のお土産のチーズです」
「これはおいしそうな物をありがとう。早速今晩にでもワインでも飲みながら食べさせてもらうよ」
「はい、是非そうしてください」
「もちろん、ホルスト君たちも一緒に飲んで行くよね?」
と、ここでお父さんに今晩泊まって行けと暗に誘われてしまった。
普段からお世話になっているお父さんの誘いを断る選択肢など俺にはない。
だから、こう返事した。
「はい。ご一緒させてもらいます」
★★★
そんなわけで、その日俺たちはエリカの実家に泊まって行くことになった。
「そろそろホルスト君もアリスタ様から授かったという仕事が終わりそうなんだろう?そうしたら、エリカと頑張ってホルスターの弟か妹の顔を見せておくれよ」
「はい、頑張ります」
俺はお父さんとワインを飲みながらそんな他愛もない話をしていた。
その一方で嫁たちはというと。
「それでは次はワタクシが本を読む番ですね。今日は『海底王の財宝』というお話を読みたいと思います」
「ヴィクトリアお姉ちゃん頑張って!」
「ヴィクトリア様、お願いします」
嫁たちとエリカのお母さんが交代で、ホルスターと銀に本の読み聞かせをしていた。
皆が交代でお話を聞かせてくれるので、ホルスターと銀はキャッキャと喜んで大人しくお話を聞いていた。
とても家族仲が良くてよいことだと思う。
そんな感じで時間は過ぎて行き、そろそろお開きにして寝ようかという時間になった頃、お父さんが俺にこんなことを頼んできた。
「そういえば、ホルスト君。うちの馬車の中のスペースを魔法で大きくしてくれるという話だったけど、あれっていつになるのかな」
お父さんのその話を聞いた俺はそう言えばそんな約束もしていたなと思い出す。
そして、考える。
潜水艇の完成までまだ時間はかかるだろうから今は暇だ。
こういうのは早いうちにやっておいた方が、面倒くさくくなくてよい。
それにできるだけ早く改造した方がお父さんも喜んでくれると思う。
だから、こう返事しておいた。
「そうですね。今は暇ですから、明日にでもやってしまいましょうか」
「本当かい?それじゃあ、お願いするよ」
と、こんな感じで明日急遽お父さんの所の馬車を改造することが決まったのであった。
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