第419話~久しぶりの楽しい飲み会~
リネットの実家と妹の所へお土産を持って行った翌日。
今度は冒険者ギルドへ行った。
「相変わらず朝の冒険者ギルドは賑やかだな」
いつものごとく朝の冒険者ギルドは大勢の人で賑わっていた。
まあどこのギルドも朝一で依頼が張り出されるからな。
その中でも実入りの良い依頼は極一部で、しかも早い者勝ちだ。
だから、皆血眼になって良い依頼を受けようと朝から並んでいるわけだった。
「おや?あの金髪の子はフレデリカって名前だったかな」
見ると、妹のチームの子もいた。
朝からここにいるということは彼女も依頼を探しに来たのだろう。
妹たちの姿が見えないのは、多分他の場所にいるからだと思う。
ギルドの暗黙の了解として、複数のメンバーがいるチームの場合、混雑を避けるため、朝はチームの代表者一人だけが依頼を探すことになっているのだ。
だから一人しか姿が見えないのだと思う。
声をかけようかなとも思ったが、競争の邪魔になると悪いので止めておいた。
「さあ冒険者の皆さん。依頼書の張り出しの時間ですよ」
そうしているうちにギルドの職員さんがやって来て、依頼書を掲示板に張り出す。
「わー」
張り出されると同時に冒険者が群がって、依頼書をもぎ取って行く。
そして、そのまま依頼書を持って受付へ行っている。
見ていると、フレデリカも受付で並んでいる。ここで俺は声をかける。
「よお。今から仕事か?」
「あ、ホルストさん。おはようございます。はい、今から仕事へ行ってきます」
「そうか、頑張れよ」
これで、フレデリカへの挨拶が終わったので、他の冒険者たちへも挨拶をする。
「ホルストだ。今帰ったぞ!」
「あ、ホルストさんだ」
「ホルストさん、お帰りなさい」
するとかつて訓練所で指導した冒険者の子たちや知り合いの冒険者たちが次々に声をかけてくる。
俺はそういった子たちにお土産のお菓子を差し出し、こう言う。
「これは獣人の国のお土産のお菓子だ。ここへ置いて行くからみんなで食べてくれ」
「ありがとうございます」
そう言って掲示板の所へお菓子を置くと、冒険者たちみんなが次々にお菓子を取って行くのだった。
本当遠慮がないやつらだ。でも、俺はお前らのそういう所、好きだぞ。
★★★
「ダンパさん、お久しぶりです」
「ホルスト殿。無事に戻って来たんだね」
その後はギルドの職員さんたちにもお土産を渡し、ギルドマスターのダンパさんと面会する。
「獣人の国ではどうだった?」
「色々と忙しかったですよ」
ダンパさんとはそうやって獣人の国での思い出話をしながら、捕獲した魔物の売却や頼まれていた商品の売却の件などの仕事の話をした。
「それではその手筈で」
交渉がまとまり、後日商品の納入などを行うことが決まり、この日はギルドを退出することにした。
そして、ギルドマスターの執務室を出て、受付へ行ったところで声をかけられた。
「よお。ドラゴンの。帰って来たのか」
それは誰あろう、友達の冒険者フォックスだった。
★★★
「それでは、旦那様。私たちは先に帰っておりますので。あまり飲み過ぎないうちに帰ってっ来てくださいよ」
「ああ、わかっているよ」
フォックスと会った俺はお土産を渡して帰ろうとしたのだが、「たまには飲みに行かねえか?」と、誘われたので飲みに行くことにした。
場所は『ラブ&ピース』。ギルド内の酒場である。
ここの酒場のマスターとは知り合いなので、例え俺が酔い潰れて帰れる状態でなくなったとしても、俺の家に連絡を入れて嫁の誰かが迎えに来てくれると思うので、安心して飲める場所である。
それはともかく。
「カンパ~イ!」
俺たちは酒場に入るなり早速飲み始めた。
参加者は俺とフォックスにフォックスのチームの冒険者だ。
フォックスたちはさっきちょうど仕事を終えて帰って来たところだったらしく、暇を持て余しているらしかった。
まあ、だからこそ俺とこうして飲んでいるという訳だが。
「それで、ドラゴンの。獣人の国ではどうだったんだ?」
「順調に仕事を終えることができたよ」
「ほう、そうなのか?どんな仕事をやったんだ?」
「まずはノースフォートレスからの荷運びの仕事だろ。それに獣人の国の獣王陛下から請け負った仕事もやったぞ」
「獣王陛下?お前さん、すごいところから仕事もらってるな。どんな仕事だったんだ」
「詳しくは話せないんだけど、獣人の国にはびこっていた窃盗団の壊滅と、ある物の回収の仕事だ」
「それでうまく行ったのか」
「ああ、当然じゃないか。バッチリ報酬ももらったぞ」
「すげえじゃねえか。それじゃあ、今日は俺がおごってやるから、ドラゴンのやつの仕事の成功を祝ってやるぜ!おい、マスター!」
「はい」
「今、酒場にいる連中に一杯ずつ酒を出してくれ」
「承知しました」
フォックスはそう言うと、本当に酒場にいた全員にお酒をおごるのだった。
「うおおおおお。フォックスさん。最高~」
自分たちがおごってもらえると知った冒険者たちは当然大喜びでフォックスのことを褒め称えるのだった。
「カンパ~イ!」
そして、酒場にいる全員でもう一度盛大に乾杯する。
俺もグビッと一気にエールを飲み干す。
「うん、うまい!」
こうやってみんなで楽しく話しながら飲む酒はとてもおいしかった。
本当に最高の気分だった。
こうして最高の気分になった俺はさらに場を盛り上げたくて調子に乗ることにする。
「おい、オヤジさん。こうなったら俺も男を見せてやる!俺も皆に一品ずつ料理をおごるから出してやってくれ」
「はい、畏まりました」
「うおおおお、ホルストさん、最高だぜ!」
こうして酒場の盛り上がりは最高潮に達し、その雰囲気に俺は酔い、さらに最高の気分になって行くのだった。
★★★
そうやって宴もたけなわになった頃、俺はフォックスに聞かれた。
「最近、嫁さんたちとはどうなんだ?三人も嫁さんがいるのに、次の子供ができたとかいう話を聞かないんだが」
「う~ん。今は仕事が立て込んでいるからな。子供は我慢だ。ただ、もう少しで多少は落ち着くだろうから、そうなったら作りたいと思う」
「そうか、そいつは大変だな。まあ、でも仕方がないか」
「ああ、仕方がないんだ。それと、もう一人嫁さんが増えそうな感じなんだが」
「何!?四人目の嫁か!やるじゃねえか!どんな子だよ?」
「エルフの子さ。今はエリカの実家の会社で働いているんだが、元々エルフの国の踊り子団にいたんだ」
「エルフの国の踊り子団?そいつはすげえな。エルフの国の踊り子団は別嬪さん揃いだって聞くが、その子もかわいいのか?」
「ああ、とっても」
「そいつは羨ましいな。まあ、頑張れよ」
「ああ、頑張るよ。頑張って仕事を片付けて、皆と幸せな家庭を築くのが俺の夢だからな」
そうその通りだった。
幸せな家庭こそが俺の夢。
そのためにも邪神を何とかしなければな。
フォックスと嫁たちの話をしていた俺はそんなことを思うのだった。
★★★
結局、この日はフォックスたちと色々な話をしながら日付が変わるまで飲んだ。
「それじゃあな」
「ああ、また飲もうな」
それで家に帰ったら、嫁さんたちが寝ずに待っていてくれた。
「「「もう、早く帰って来てくださいって言っておいたのに、本当にしょうがない旦那様ですね」」」
嫁たちは不機嫌そうな顔をしながらも、俺を出迎えてくれると、酔い覚ましのために水を飲ませてくれたり、風呂を用意してくれたり、着替えの服を出してくれたりと、色々と世話を焼いてくれたのだった。
そんな嫁たちを見て、俺はこいつらを一生大切にしようと誓うのだった。
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