第417話~ネイアさんと急接近!~
久しぶりの温泉はとても気持ち良かった。
「ああ、生き返るな~」
そう言いながら湯船の中で体を伸ばすと、たまっていた疲れが抜けて行くような気がして何とも言えず心地よかった。
ちなみに嫁たちはホルスターと銀を連れて女風呂だ。
きっと今頃は皆で楽しくやっていると思う。
そんな中、俺は一人で入っていて少し寂しい気もするが、女湯に入りに行くわけにもいかないので仕方がない。
「まあ、俺は俺でのんびりするとしよう」
ということで、俺は俺でゆっくりしようと思う。
★★★
ヴィクトリアです。
ワタクシたちは現在温泉でゆっくりしながら、一生懸命ネイアさんの体を洗っています。
「ネイアさんは、これからホルストさんにアピールしなければいけないのだから、きちんときれいにしておかなければならないですよ」
そう言いながら三人で一生懸命ネイアさんの体を磨き上げます。
ネイアさんはくすぐったそうな顔をしながらも、大人しく体を洗われています。
女のワタクシから見てもネイアさんのお肌ってすべすべしていてきれいなんですよね。
この分なら、ホルストさんもきっと気に入ってくれて、ワタクシたちの仲間が一人増えるのは間違いないと思います。
そのためにも、ネイアさんには頑張ってほしいですね。
★★★
「旦那様、私たちはちょっとお散歩に行ってきますね」
温泉から出て部屋に戻ると、エリカが他の嫁たちや子供たちを連れて外へ出かけてしまった。
そして、なぜか部屋には俺とネイアさんだけが残される形となった。
ネイアさんと二人きりになってしまった俺は緊張した。
この前、二人だけで買い物に行った時のことを思い出してしまったからである。
あの時のネイアさん、妙に積極的だったが、今日はどうなのだろうか。
そういうちょっとした期待を胸に抱きながら、どうなるのだろうとワクワクしながら待っていると。
「温泉気持ちよかったですね」
そうネイアさんの方から声をかけてきた。
「ええ、気持ちよかったですね。ネイアさんはどうでしたか」
「もちろん私も気持ちよかったですよ」
「それは良かった。ここに来た甲斐があるというものです」
「本当にそうですね。ところで、ホルストさん」
「何でしょうか?」
「ここで、もう一段階気持ち良くなる方法があるのですが、試してみないですか?」
「えっ?」
急にそんなことを言われて、俺は動揺し、「いや、それは……」と、断ろうとするが、ネイアさんはそのくらいで諦めたりしない。
「大丈夫です。こういうのを男性にするのは初めてですけど、大丈夫です。上手くやりますから」
そう言いながら強引に俺に迫って来る。
そして、欲望に抗いきれなかった俺はネイアさんに気持ち良いことをされてしまうのだった。
★★★
「どうですか、ホルストさん。気持ちいいですか?」
「うん、とっても」
「それは良かったです」
今現在、俺はネイアさんに気持ち良いことをされている。
気持ち良いこと。すなわちマッサージである。
武道をたしなんでいるネイアさんはとても力強く、しかも揉み方も非常に上手なので、肩を、背中を、首を揉んでもらうたびにたまっていた疲れが抜けて行く感じがしてとても気持ち良かった。
嫁たちが旅行先で風呂上りによく美容マッサージなどをやってもらっているが、風呂上がりのマッサージがこんなに気持ちの良いものだと初めて知った。
俺が気持ちよさそうなのを見てネイアさんがほほ笑む。
「私、早くに両親を亡くしてしまったので、従妹のマロンの家で育てられたのですけど、マロンのお母さんの肩をよく揉んであげていたんですよ。だから、マッサージとか、結構自信があるんです」
「へえ、そうなんですね」
「そうなんです。だから、ホルストさんももっと気持ちよくしてあげます」
そう言いながら、ネイアさんは俺を揉む手にさらに力を込めてくる。
それが気持ち良さ過ぎて、気がついたら俺は眠ってしまっていた。
★★★
「すーすー」
そんな誰かの寝息の音で俺は目が覚めた。
あれ、俺は確かネイアさんにマッサージしてもらっていて、それで気持ち良くて、うとうとして、それから……寝てたのか。
目が覚めると同時にそんなことを思う。
そして、ハッとする。
え?それじゃあ、今俺の側で寝ているのって?
何となく嫌な予感がした俺は恐る恐る俺の横で寝ている人物を見る。
「ネイアさん?」
「すーすー」
すると、当然のように俺の横にはネイアさんが寝ていた。
多分、俺を揉んでいて疲れて寝てしまったのだと思う。
いや、そんなことはどうでもよい。
この状況は非常にまずい!
どう考えても事後にしか見えない。
こんな所を嫁たちにでも見られたら……。
そう思った俺は慌ててネイアさんを起こそうとしたが、もう手遅れだった。
「ただ今です!」
部屋の入り口の扉が開いて、ヴィクトリアの声が聞こえてきた。
その声に俺がおたおたしているうちに嫁たちが部屋へと入って来る。
そして、現場を目撃し、声をあげる。
「旦那様。ネイアさんと何をしているのですか?」
★★★
その後、俺は嫁たちにこっぴどく怒られた。
「いや、マッサージをしてもらっていただけなんだ」
そう言い訳もしたが、もちろん無駄だった。
「旦那様、独身の女性と一緒に寝ておいて言い訳がましいですよ」
「そうですよ。手を出しておいて知らないでは、ネイアさんがかわいそうですよ」
「そうだよ。ここは男として責任を取るべきだと思うよ」
そうやって嫁たちに責め立てられるのだった。
というか。嫁たちの責め方が変だ。
ネイアさんの方は怒らないで、俺ばかり責められている。
むしろ、ネイアさんの方は同情されていて。
「「「大丈夫です。旦那様にはきちんと責任を取らせますので、大船に乗った気持ちでいてください」」」
「はい」
……って、ネイアさんも満更でもなさそう顔で返事しているし。
そういえば、ホルスターたちはホテルのキッズルームという場所に置いて嫁たちは帰って来たみたいで、ここには俺と嫁たちとネイアさんしかいない状況にされてしまっている。
そこで俺はハッと気がつく。
俺ってもしかして嫁たちの策謀に嵌められている?
そう思ったが、別に不快な気持ちにはならなかった。
まあ、別にネイアさんはかわいい人なのでそれはそれで構わない気がする、とまで思った。
と、俺がそんなことを考えている間にも嫁とネイアさんの間で話がトントン拍子で進んで行き。
「「「それでは、こうなった以上旦那様にはきちんとしてもらうということで。ネイアさんもそれでいいですね?」」」
「はい、喜んで」
そうやって話がまとまり、俺たちがノースフォートレスに帰った後も、時々ネイアさんを家に遊びに来させて、嫁たちと遊んだり、俺とちゃんとした交際をするという話になっていた。
「旦那様もそれで構わないですよね?」
「はい」
こうなった以上、俺に拒否権などなく、俺はネイアさんと無事交際することになってしまっていた。
何か嫁たちにはしてやられた気がしてならなかったが、これでネイアさんとのことも嫁たち公認ということになったわけで、収まるところに収まった気がしないでもない。
こんな感じで、慰安旅行はとんでもない結末を迎えたわけだった。
★★★
結局、その後数日を温泉宿で過ごして俺たちは帰ることになった。
「「「ネイアさん、また遊びましょうね」」」
「はい」
「ネイアさん、この連絡用のペンダントを渡しておくから、気軽に連絡して。俺が魔法ですぐにでも迎えに行くから」
「ありがとうございます」
最後はそうやって連絡用のペンダントを渡した後、ネイアさんと別れた。
とは言っても、どうせすぐに会うことになるのだろうけど。
他の嫁がいるので今回は別れの挨拶に特別なことはしなかったけれど、今後送り迎えする時にはそういう恋人らしいこともするのではないかと思っている。
「じゃあね」
名残惜しい気もするが最後にそうやってネイアさんと別れると、俺たちはノースフォートレスの町へと帰還する。
さて、こうして俺たちの慰安旅行は終わった。
ということで、次はヴィクトリアのお父さんの言う通り人魚の国を目指そうと思う。
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