第416話~慰安旅行~

 さて、獣人の国でやるべきことは終わった。

 ということで、嫁たちとの約束通り、慰安旅行と行こうと思う。


 行き先はドワーフの国のテルメ温泉。

 ここの『アドバンステルメ』というホテルが目的地だ。

 このホテルはこの温泉一番のホテルで嫁たちもお気に入りだ。


 前に嫁たちの家族とも行ったこともある。

 嫁たちの家族は基本身分の高い人たちばかりで、その人たちでさえ「良い温泉だね」と言っていたので、本当に良いホテルなのだと思う。


「でも、行く前にアタシのおじい様の所へ寄ってね」


 そうそう温泉に行く前にリネットのおじいさんのクラフトマン宰相家へも行く予定だった。

 しばらく会っていないので、リネットがぜひ会いたいらしいからだ。

 なので、温泉へ行く前にそちらへも寄ることにする。


「それでは、お世話になりました」

「お気をつけて」


 今までお世話になったブレイブの町のヒッグス家の商館の人たちにお礼を言って町を出る。


「『空間操作』」


 そして、町を離れて少しした所で一気に転移魔法でドワーフ王国へと飛んだ。


★★★


「おじい様方、お久しぶりです」

「おお、リネットよ。元気でやっていたかね?」

「リネットちゃん。よく来たわね」

「リネットお姉さま、会えてうれしいです」


 温泉へ行く前にリネットのおじいさんの所へ行くと、おじいさんを始め、叔母のセリーナさん、従妹のスーザンと家族全員で歓迎してくれた。


「今回は獣人の国へ行ってきたので、お土産のチーズです。おいしいワインもありますので、今晩はこれでも食べながら、獣人の国での出来事をお話ししましょう」

「わーい!お姉さまと今日はゆっくりお話しできる!」


 そうやってリネットが今晩泊まって行くことを告げると、スーザンが喜んでリネットに飛びついて行っていたので、その歓迎ぶりが分かるというものだ。

 まあ、リネットもおじいさんたちと久しぶりに会えてうれしいだろうし。


「グローブよ。リネットたちのために歓迎の食事を用意するのだ」

「はい。旦那様」


 おじいさんも歓迎して食事の用意までしてくれているし、俺たちも今日はのんびりしようと思う。


★★★


 翌日。


「それでは、気を付けて行ってくるんだよ」

「はい。おじい様たちもお元気で」


 俺たちはリネットのおじいさんの屋敷を出て、テルメ温泉へと行った。

 まあ、行くと言っても魔法で行くから一瞬なんだけどね。


「『空間操作』」


 魔法を使って空間転移すると、もう目の前にはテルメの町が広がっていた。


「さて、それでは『アドバンステルメ』に行くぞ。


 着くなり、俺たちはそのまま宿泊予定のホテルへと向かうのだった。


★★★


「いらっしゃいませ、ホルスト様。本日はご宿泊ですか?」

「ああ、スイートルームに泊まりたいのだが」

「畏まりました。ご用意致しますので少しお待ちしてください」


 ホテルの受付へ行き宿泊の申し込みをすると、すぐさま従業員さんが対応してくれた。


 というか、このホテルに二回来ただけの俺たちのことを覚えてちゃんと挨拶してくれるとか、さすがは一流ホテル!。普通にすごいと思う。

 まあ、俺たちが前に来た時、ドワーフの国一番の貴族であるリネットのおじいさんの紹介で来ているからな。

 覚えておいて損のない相手だと思惑もあるのだと思う。

 俺としては特別扱いをしてもらってありがたいことだと思う。


 それは良いとして、前の時と違って今回は予約してきたわけではないので、スイートルームの用意にしばらく時間がかかるみたいだ。


「それまでのんびり待つか」


 別に急いでいるわけでもないので、それまで少しの間受付で待とうと思う。


★★★


 ネイアです。


 今、私たちはドワーフの国のテルメ温泉という所に来ています。

 エリカ様たちのお話によると、ここはとても良い温泉だということで、私も非常に楽しみにしています。


 ちなみに、今回私は休暇をもらってここに来ています。


「ネイアさんは今回非常に役に立ってくれたので休暇を与えてください。父からも許可をもらっています」


 エリカ様が支配人にそう言ってくれたので、私もお休みをいただけて、ここへ来たのです。

 そして、今から奥様方と私で作戦会議です。


「旦那様は宿泊の申し込みに行っていますし、ホルスターと銀ちゃんは庭の方へ遊びに行っていますし、今のうちですね」


 エリカ様のお話によるとそういう事らしいので、今からホテルのレストランで作戦会議という訳です。


「お待たせいたしました」


 店員さんが運んで来てくれた飲み物を飲みながら、いざ会議開始です。

 最初に口火を切ったのはエリカ様でした。


「さて、今日はこれからみんなで温泉に浸かってゆっくりする予定ですが、今回の目的がそれだけでないのはわかっていますね?特にネイアさん」

「はい、わかっています」


 エリカ様の言葉に私はコクリと頷きます。


「わかっているのならばいいです。私とヴィクトリアさんとリネットさんの三人でちゃんと時間を作ってあげますからね。その間にうまい具合にやるのですよ」

「はい、頑張ります。一応手は考えてきましたので」


 私はこの日のために考えてきた作戦を思い浮かべながら、そう返事しました。

 それを聞いて、奥様方が大変うれしそうな顔になります。


「そうですか。なら、頑張りなさい」

「そうですよ。頑張ってください」

「応援しているからね」


 そうやって皆さんでエールを送ってくれるのでした。


「それでは作戦会議はこの位にしておきましょうか。そろそろ旦那様の手続きも終わる頃合いでしょうし、ホルスターたちも呼びに行かなければなりません。そして、まずは温泉を楽しみましょう」


 これで簡単ながらも作戦会議は終わりました。

 私たちは残っていた飲み物を飲み干すと席を立ちます。

 これからホルストさんたちと合流して、温泉へ入ろうと思います。

 そして、あわよくばホルストさんともっとお近づきになりたいです。


 本当、どうなるか楽しみです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る