閑話休題62~その頃の妹 妹、投資に失敗する~

 私、レイラ・エレクトロンは今日も青春を謳歌していた。


「あー、おいしい!ケーキ、最高!」


 そう言いながら、仕事帰りにカフェによって仲間たちとケーキを食べていた。

 もちろん、全部私のおごりだ。

 そして、この原資はすべて私が投資で稼いだお金である。


「最近、レイラ妙に気前がいいけれど、お金は大丈夫なの?」

「平気、平気!臨時のアルバイトの収入が結構あるから、このくらい大丈夫!」


 気前が良いことを仲間に訝しがられてもそうやって誤魔化しておいた。

 別に秘密にする気はないのだが、投資で稼いでいるとか知られたら仲間に心配をかけてしまうのではないかと思ったのでそうやって誤魔化している。


 しかし、毎日こうして仲間たちと楽しく過ごすのは本当に楽しかった。

 こうやっておやつを食べながら他愛もない話をするだけなのに、それだけで気持ちが高まり、楽しく過ごせた。


「また、明日も来ようね」


 一通り喋った後はそう言いながら家に帰り、明日に備える。

 まさに理想の日々だった。


 こんな日々がずっと続けばいいなあ。

 私はそう願ってやまなかったが、そんな生活が破綻する日はすぐそこまで来ていた。


★★★


「さあ、今日はお金が入ってくる日だよ」


 その日、私はワクワクしながら家を出た。

 というのも、今日は週に一回投資の配当が入ってくる日なのだ。


 受け取り場所は、例の養殖業者の本部がある建物だ。

 ここへ行って、証書を見せればお金をもらうことができる。

 そういう仕組みになっていた。


 ということで、私は家を出た後その建物へと向かったのだが……。


「あれ?何だろう?」


 建物に大分近づいたところで異変に気がついた。

 何だろうか。

 あの会社の建物の周囲に人だかりができていた。


 気になった私はその人だかりに近づいてみる。


「金返せ!」

「責任者、出てこい!」


 すると、集まっていた人たちが建物へ向かってそんな罵声を浴びせかけているのが見えた。


 というか……金返せ?責任者、出て来い?

 何でそんなことを言っているのだろうと思った私は、思い切ってその人だかりの前の方へ出てみることにした。


「ちょっと!通してください!」


 そう言いながら、人だかりの中へもぐりこんで、建物の入り口の扉の前へと辿り着くことに成功する。

 そして、何で人々が喚いているのかを知ることになる。


 なぜかというと、入り口の扉には一枚の紙が貼っていて、事情が書かれていたからだ。


「噓でしょ!」


 それを呼んだ私は愕然となり、足を萎えさせてその場にへたり込んでしまった。

 ちなみにその紙にはこう書いてあった。


『当社は先日付で倒産いたしました。現在清算中で、配当金の支払いは今後できません。元金の返済についても未定です』


★★★


 その後、近くのカフェに入った私は一人うなだれていた。

 張り紙を読んだ後、近くにいた人たちに話を聞いてみると、その人たちも私と同じ出資者だったようで、この先どうなるかと不安を抱えて、ああやって会社に向かって叫んでいたようだった。


 しかし、先週までちゃんとお金の配当があったのに急に倒産だ何て、一体何がったのだろうか。

 私は本当に訳が分からなかった。

 色々と混乱して、頭の中が真っ白になって考えがまとまらない。


「お待たせしました。ご注文のコーヒーです」


 そうしているうちにコーヒーが運ばれてきたので、ひとまずそれを飲んで落ち着いて考えてみることにする。

 すると、近くで商人風の男たちがこんな話をしているのが耳に入った。


「おい、聞いたか。この近くで養殖業をやっているとかいう会社がつぶれたそうだな。会社の前で出資者たちが騒いでいたのを見たぞ」

「養殖業?ああ、あそこの胡散臭い会社か。確かあそこの社長って、元々どこかのギャングの舎弟で、生活が派手で、その金の出所が非常に怪しいって噂があったんだ」

「そうなのか?」

「ああ、だから今回も詐欺同然の養殖業の会社を作って出資者を集めて、最初だけ配当金を渡して、出資者たちに追加の出資を出させて、金が集まったところでとんずらしたんじゃないかって噂だぜ」


 何ですと!


 二人のその話を聞いた私は驚いて、聞き耳を立てて二人の話を詳しく聞くことにした。


「それって詐欺じゃないのか?」

「ああ、詐欺だろうな。あいつらの手口としては、最初に少額の出資を出させて、それに対して過剰な配当をして信用させて、今度は大口の出資をさせて、それを持ち逃げする。まあ、昔からよくある手口だな」

「そうなんだ」

「後、あいつらが悪質なのは高利貸しと組んでたりするところかな。追加の出資をするに際して、高利貸しから金を借りさせたりするんだ。それで業者と高利貸しで利益を分配して、両方ともウハウハというわけだ」

「そいつはひでえな。騙された奴は人生詰んだな」

「だよな」


 その二人の話を聞いた私は愕然とした。

 私の状況と全く同じだったからである。


 というか、やっぱり私も詐欺られているの?

 だったらどうしよう。

 このままだと借金を返せない。

 そうなると、この二人の言う通り、私の人生本当に詰んでしまう。


 でも、もしあの社長が詐欺師で、私の借りた金融業者と組んでいたりしたら、金融業者も詐欺師の仲間だから返さなくてよかったりするのかな?

 ……ダメだ!そんな証拠はどこにもない。

 だったらあの金融業者は厳しく取り立ててくるに違いなかった。


 そうなると、私はどうやっても返さなければならず、借金の返済で一生を終えることになる。

 どうしよう。そんな一生は嫌だ。


 こうなったら兄貴に相談してみようかと思ったが、止めておくことにした。

 だって兄貴に知られるということは当然兄嫁にも知られるということで、そうなったらどんな目に遭わされるか、想像に難くない。

 これは絶対に自分で何とかしよう。


 こうして私は自分でこの件を何とかしようとするのだったが、これは大きな間違いであった。

 自分で何とかしようと思ってもがいた結果、私はどんどん破滅の道へと進んで行くのであった。



ーーーーーーー


これにて第17章終了です。


 ここまで読んでいただいて、気にっていただけた方、続きが気になる方は、フォロー、レビュー(★)、応援コメント(♥)など入れていただくと、作者のモチベーションが上がるので、よろしくお願いします。


それでは、これからも頑張って執筆してまいりますので、応援よろしくお願いします。

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