第413話~お父さん、天界へ帰る~
さて、お父さんも俺っとヴィクトリアのことも認めてくれたことだし、これでやっとゆっくりできるかな。
そう思っていると、お父さんとお兄さんがやって来てこんなことを言い始めた。
「獣人の国での一件も終わったことだし、そろそろ天界へ帰ろうと思うのだが」
★★★
ヴィクトリアのお父さんとお兄さんが天界へ帰ると言い始めた。
ということで、二人と神獣たちのために送別会を開くことにした。
神獣たちというのは、お父さんたちが帰ると聞いて、「それでは我々も自分たちの住処へ帰るとしましょう」と、神獣たちが言い始めたからだ。
お父さんたちの送別会は商館で行われ、うちの嫁たちとネイアさんが腕によりをかけた料理を披露してっくれた。
特にヴィクトリアなどお父さんとお兄さんの為に特別にお菓子を作ったらしかった。
「これはワタクシの新作の『ベイクドチーズケーキ』ですよ。お父様たちのために頑張って作りました」
そう言いながら、新作のケーキを切り分けて、大きめのやつをお父さんたちに渡す。
「どうですか。おいしいですか?」
「ああ、さすがはヴィクトリアだ。とてもおいしいよ」
「うむ、とてもうまいのである」
そうやって二人ともヴィクトリアの新作ケーキをおいしそうな顔で食べていたので、満足してくれたと思う。
「神獣さんたちも、たくさん食べてくださいね」
「「「ありがとうございます」」」
他の嫁さんたちは主に神獣たちの相手をしている。
神獣たちもここに滞在し始めて大分長いので、嫁さんたちも彼らの好みを十分にわかっているので、好みに合ったものを出してやっている。
また神獣たち、ここにいる間に嫁たちが作るお菓子を非常に気にいったようで。
「あら、このクッキー、とてもおいしいですね」
「このホワイトチョコのかかったクッキー、気に入りましたぞ。カリュドーンの猪にお土産として持って帰りたいですね」
「うちの兄貴が甘党なのは地獄の番犬としてどうなのかとずっと思っていましたが、ここで甘いものをたくさん食べさせてもらえて考えが変わりましたぞ。私は、このフルーツがたくさんのケーキがお気に入りですぞ」
と、デザートにたくさん甘いものを出してもらってとても喜んでいた。
こんな感じでみんなに喜んでもらいながら送別会は順調に進んで行った。
★★★
そんな送別会にも終わりの時間がやって来た。
「それでは、今までお世話になった皆様にプレゼントを贈りたいと思います」
最後は俺のその言葉通り、お世話になったお父さんたちにプレゼントを贈って締めくくろうと思う。
「白狐にネズ吉、それにオルトロスは、眷属や友達に渡せるようなお土産が欲しいんだったな」
「「「はい」」」
事前に神獣たちに対して贈り物として何が欲しいかをリサーチしたところ、友達の神獣や眷属たちにお土産として渡せるような食べ物が良いというので、食べ物を用意したのだった。
「何だ?お土産が欲しいのならプレゼントとは別に用意してやるのに」
とは言ったのだが。
「「「それなら、その分お土産を増やしてください」」」
そう三匹が言うものだから、三匹の希望通りにした。
「白狐は稲荷寿司に、お酒、お餅が欲しいんだったな」
白狐には稲荷寿司とフソウ酒、それにアンコ入りのお餅をたくさん渡しておいた。
これらを持って帰って、ナニワの町で眷属たちを招いて、人間たちが春祭りをやっている裏で狐たちと宴を開くそうだ。
狐たちだけで開かれる神社での秘密の宴。
何か神秘的で一度見てみたいものである。
そのうち機会があれば参加したいな。
そう思ったりするのであった。
それとお酒は友達のヤマタノオロチへも持って行ってやって、二人で楽しく飲むつもりらしかった。
そう言えば、ヤマタノオロチのやつ、しばらく会っていないが元気だろうか。
そのうち時間ができたら会いに行きたいものだ。
「ネズ吉はチーズとカリュドーンの猪に渡す木の実や果物がいいんだな」
ネズ吉は眷属のお土産のチーズと友達のカリュドーンの猪へあげる果物や木の実が欲しいと言ったのでそれをあげた。
ネズ吉は普段ドワーフの国の地底湖近くの森にカリュドーンにの猪と一緒にいるらしいので、お土産を持って帰って楽しく飲み食いしたいらしかった。
ネズ吉のように仲の良い友達がいるのは良いことである。
俺は小さい頃、一族の中で孤立していたからあまり友達と呼べるような存在はいない。
まあ、今は冒険者仲間のフォックスたちという友達がいるけど。
そう言えば、最近あいつらと顔を合わせていないが上手くやっているだろうか。
ノースフォートレスに帰ったら飲みに誘ってみようと思う。
「それで、オルトロスは肉と甘いお菓子がいいんだな」
オルトロスはロッキード山脈の近辺で一緒に住んでいる眷属のために肉を持って帰るつもりのようだ。
肉はドラゴンの肉にしておいた。
本人がここで食べた肉の中であれが一番おいしかったと言っていたからだ。
それと眷属に甘いお菓子を普及させてみる、とか言っていた。
「きっと、眷属の者どもも気に入ると思いますので」
まあ、犬……じゃなかった狼は雑食だから食べてくれるとは思う。
俺も気に入ってもらえたら嬉しい。
「それと、このお菓子は地獄にいる兄にも持って行ってやりたいと思います」
そんなことも言っていた。
何でも地獄にいるお兄さんのケルベロスは甘党らしいので、お菓子を持って行ってあげたいらしかった。
そういえば、前にお父さんがオルトロスを地獄へお使いにやった時に、ヴィクトリアがケルベロスあてのお土産のお菓子をオルトロスに持たせていたようだ。
ケルベロスに何かお願いがあってヴィクトリアはそうしたらしいが、何をお願いしたのだろうか。
多分、地獄にいるデリックとルッツのことについてだろうが、そうなるとヴィクトリアのやつ、お菓子でオルトロスを手なずけたということなのだろう。
そう考えると、ヴィクトリアも随分と世渡りが上手になったものだと思う。
まあ、別に構わないけどね。俺もあの二人には不幸になってほしいし。
と、こんな感じで神獣たちへのプレゼントの贈呈は終わったのだった。
★★★
それで、神獣たちの次はお父さんたちへのプレゼント贈呈だ。
「「「今までお世話になりました」」」
俺とエリカとリネットとネイアさんの四人は、そう言いながら二人にワインを贈った。
何がいいか聞いたら、「「お酒がいい」」と二人とも言っていたのでそうしたのだった。
そして、ヴィクトリアは俺たちとは違う贈り物を用意した。
「お父様とお兄様のためにマフラーを編みました。もう冬は終わっちゃいましたが、また寒い所へ行く時にでも身に着けてください」
と、お父さんたちに手作りのマフラーを渡したのだった。
マフラーをもらった方のお父さんたちは狂喜乱舞した。
「ヴィクトリアがこんな物をくれるとは!お父様、一生大事にするぞ!」
「これはヴィクトリアの愛情を感じられる逸品なのである。私の部屋に飾って永遠に宝物にするのである!」
そんなことを言いながら、ヴィクトリアからもらったマフラーを大事そうに抱えて部屋中をうろうろしながら喜びまくっていた。
大袈裟だと思うが、二人ともヴィクトリアラブだし、ヴィクトリアが天界にいた頃は手作りの品など望むべくもなかったわけだから二人ともヴィクトリア製のマフラーがよほどうれしかったのだと思う。
と、こんな感じでお父さんたちへのプレゼントの贈呈も終わった。
★★★
こうして俺たちからの感謝のプレゼント贈呈は終わったわけであるが、最後に銀がお母さんである白狐に何か渡したいそうなので、それを持って締めとする。
「お母様、これ、銀が作ったプレゼントです」
そう言いながら、銀が白狐に渡したのは。
「まあきれいなビーズ玉でできた腕飾りだこと。それにこのちっちゃな鈴もかわいらしいわね」
銀がビーズを組み合わせて自分で作ったという腕飾りだった。
ビーズは前に俺たちが買い与えたもので、鈴は自分のおやつ代を貯めて買った物らしかった。
こんなきれいな物を娘からもらったら、親としては嬉しくてたまらないだろう。
実際、白狐も嬉しかったらしく。
「大切に使わせてもらうわね」
そう言いながら、銀の頭をなでなでしっぱなしだった。
しかし、俺たちの所へ来た時はまだまだ子供っぽかった銀がお母さんに手作りのプレゼントをあげられるくらいには成長していただ何て……銀を預かっている俺としてはとてもうれしい。
それは嫁たちも同じ思いのようで。
「「「銀ちゃん、立派になりましたね」」」
と、銀がプレゼントを渡しているのを見て涙ぐんでいた。
さて、これでプレゼントの贈呈も全部終わったことだし、そろそろ皆を送って行こうと思う。
★★★
それから俺は神獣たちを次々と住処へと送り届けた。
「それじゃあ、達者でやれよ」
「そちらこそ、お達者で」
神獣たちとの別れはあっさりとしたもので、そうやって簡単な挨拶をすると、自分の住処へと戻って行くのだった。
ただし、白狐を送って行った時だけは。
「お母様、お母様と離れるのは寂しいですけど、引き続きヴィクトリア様の所で頑張ります」
「ええ、頑張りなさい」
銀が泣きながら母親にお別れの言葉を言っていたので、その点だけは見ていて辛いと思った。
★★★
神獣たちを送って行った後はブレイブの町へ帰ってお父さんたちを見送る。
「それでは、お父様、お兄様、お元気で」
「ああ、ヴィクトリアこそ元気でな」
「妹よ。元気でやるのだぞ」
ヴィクトリアが最後にそう挨拶をした後。
「それでは、お元気で」
皆に見送られてお父さんたちは天界へと帰ろうとした。
が、突然何かを思い出したのか、急に振り返ると俺にこんなことを言うのだった。
「そうだ。一つ言い忘れたことがあるのだが」
「何でしょうか、お父さん」
「お前たち、4魔獣を全部倒して、遺跡の封印も完了したと思い込んでいるようだが、実は一か所、封印していない遺跡があるぞ」
お父さんの話を聞いた俺は目を丸くして驚き、聞き返す。
「え?どういうことでしょうか?」
「ほら、東のキングエイプの所の遺跡。あそこの封印がまだ終わっていないはずだぞ」
「え?そんなはずは。確かにキングエイプは倒しましたよ」
「だが、その後、遺跡の封印をしていないだろ。よく思い出してみるがよい」
そうお父さんに言荒れた俺は、あの時の出来事を思い出してみる。
あの時確かキングエイプを倒して、その後地脈の封印をして……いない!
キングエイプを黒い球体に押し込めて終わりで、確かに遺跡の封印はしなかった。
そのことに気がついた俺はお父さんに聞く。
「そう言われれば確かにしていないです。ということは、また封印に行かなければならないということですか?」
「無論だ」
「それで、遺跡の場所はどこですか?キングエイプのいた火の山ですか?」
「いや、あそこはちょっと特殊な所でな。敵をかく乱するために魔獣と地脈の封印を施す場所を別々にしているのだ」
「そうなのですか?それで、遺跡はどこに?」
「ガイアスの町とナニワの町の間の海底だな」
海底?
「そんな場所どうやって行けばいいんだよ!」
俺は思わずそう叫んでしまった。
だが、俺の叫びを聞いてもお父さんの方は冷静で俺にこうアドバイスをしてくれるのだった。
「まあ、落ち着きなさい。お前たち、神聖同盟から潜水艇を手に入れたとか言っていたではないか。それを使って行けばよい。それに、お前、セイレーンの所の『海の主』とも契約しているんだろ。あの海竜の力も借りればよい。そうすれば海底遺跡へ行くこともできるだろう。ちなみに海底遺跡は、海底にある『人魚の国』の近くにあるからな。まずはそこへ行ってみることだな」
それだけ言い終わると、お父さんは俺の肩をポンポンと叩き、励ましてくれたのだった。
それに対して俺は、
「頑張ります」
と、言うしかないのであった。
「それでは頑張るのだぞ」
最後に重要な情報を教えてくれた後、そう言い残すとお父さんたちは天界へと帰って行った。
残った俺は嫁やネイアさんたちと話し合う。
「何か仕事が増えちゃったけど、あとちょっとだから頑張ろうか」
「まあ、しょうがないですね。遺跡の封印が残っているのですからやらないわけにはいかないですしね」
「いいんじゃないですか。それにワタクシ、人魚の国って前から行ってみたいと思っていたんです。滅多に行ける場所ではありませんし、いい機会だから行ってみたいです」
「そうだね。人魚の国。行ってみたいよね」
「私もおとぎ話でしか聞いたことが無い人魚の国。是非行きたいです」
すると、全員やる気満々だったので、俺もやる気にならねばなるまいと思い、何だか投資がわいてきた気がした。
「それじゃあ、次は海底の遺跡の封印を目指して頑張るぞ!」
「「「「おおおお」」」」
と、こんな感じで俺たちは次の遺跡の攻略へ向けて動き出したのであった。
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