第409話~今こそお前たちの行動が試されるのだ!~

 さて、それでは遺跡の封印を行うことにする。


「こっちだ」


 ヴィクトリアのお父さんの案内で封印装置のある場所へ向かう。


「封印装置はこのフロアの地下にある」


 お父さんはその場所に向かいながらそう言った。

 巨大なゴッドドラゴンと十分に戦えたことからもわかるようにこのフロアはそれなりに広い。

 だから、封印装置のあるフロアに向かうための階段に向かうまで少々時間がかかった。


 その間、俺は嫁たちと会話をする。

 内容はこの後の旅行についての話だ。


 俺たちは、今回の獣人の国での一件が終われば、家族で温泉旅行しようということで意見が一致している。

 前にちょっと話が出た時に嫁たちが話し合った結果、そういう事になったのだった。

 嫁たちの意見を覆す力など俺にはないので、それで旅行に行くことは決定だった。


「それで、お前たち、どこへ行きたいんだ?」

「ワタクシは前に行ったドワーフの国の温泉が良いですね。あそこのホテルって、温泉もよかったしサービスもご飯も最高でしたから、また行きたいですね」

「あら、いいですね。私もあそこの温泉はお気に入りですね。是非みんなで楽しみましょう」

「うん、いいよね。ただ、あそこへ行くのならついでにおじい様の所へも行きたいな。しばらく会いに行けていないから、会いたいと思うんだけど、いいかな?」

「俺はいいよ。そのくらい簡単な話だしな」

「それでは、あそこの温泉に行きましょうか。ネイアさんもそれで構いませんか?」

「はい、是非お願いします」


 何かいつの間にかネイアさんまで行くことになっていたが、まあいい。

 ネイアさんも今回頑張ってくれたからな。

 慰労ということで旅行へ連れて行ってあげたらよいと思う。


 確かにあそこのホテルはとても良かった。

 ドワーフの国の身分が高い人方々御用達のホテルで結構値段が張るのに、今までに結局二回ほど泊まったからな。

 そのうちの一回は嫁たちの両親たちも一緒に連れて行ってあげて親睦を深めた、ということもあったりした。


 そのくらいには良いホテルだった。

 多分、ネイアさんも連れて行ったらとても喜んでくれると思う。

 と、そんなことを話しているうちに下へ降りる階段へとたどり着いた。


★★★


 階段の前には銀色の扉があり、そこには狼の意匠が描かれてあった。

 これもこのフロアの入り口にあったドラゴンの扉と同じくお父さんが作ったものらしく。


「ヴィクトリア、どうだ、これも良いものだろう。お父様が作ったのだよ」


 と、娘に自慢していた。


 ヴィクトリアの奴、まさか今度も余計なことを言ったりしないよな。

 俺はまたヴィクトリアが余計なことを言ったりしないかハラハラしながらその様子を見ていた。

 だが、いくらヴィクトリアが抜けている子だとしてもついさっきの出来事は忘れていなかったらしい。


「まあ、カッコいい狼ですね。これはオルトロスちゃんがモデルですか?」

「ああ、その通りだよ」

「さすがはお父様ですね。とてもオルトロスちゃんにそっくりに描けていると思いますよ。オルトロスちゃんもそう思うでしょ?」

「はい、ヴィクトリア様。まさにその通りです」


 と、さっきとは打って変わってお父さんのことを褒め称えるのだった。

 褒められたお父さんの方も満更でもない様子で。


「そうか。ヴィクトリアがそこまで褒めてくれるとは……お父様、非常にうれしいぞ」


 と、非常に喜んでいた。

 それを見た俺は、ヴィクトリアのお父さんって本当に単純なんだなと思った。


 まあ、いい。

 これでお父さんの機嫌も取ったことだし、先へ進むとしよう。


★★★


「それでは、オルトロス、やってくれ」

「はい、畏まりました。マールス様。……では」


 お父さんに言われてオルトロスが狼の扉の前に立つ。

 そして、扉を開けるための呪文を唱える。


「我が名は軍神マールス様にお仕えする神獣オルトロス。封印を守る狼の扉よ!我が声に応え、今封印を解き放て!」


 そうやってオルトロスが呪文を唱え終わると、ギギギッという音を立てながら扉が開く。

 そして、目の前に遺跡の封印装置へと行くための下り階段が現れた。


「さあ、行くぞ!」


 俺たちはその階段を降りて下のフロアへと向かった。


★★★


 遺跡の封印装置は階段を降りてすぐの場所にあった。

 これで封印を施せば終わりだな。

 そう思った俺は早速封印作業を開始する。


「『地脈操作』」


 そうやって魔法で装置を起動させようとした。だが。


「あれ?変だな。装置が作動しない」


 装置は作動しなかった。

 何だろうと俺がいぶかしんでいると、お父さんがこんなことを言い始めた。


「ふふふ。言っておくがその装置を動かすのは簡単ではないぞ。お前たちの今までの行動が試されるのだ!」

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