第405話~ゴッドドラゴンは総合能力最強の存在 ただし、手が無い訳ではない~

 とうとう4魔獣の最後の一体ゴッドドラゴンが復活してしまった。


 ゴッドドラゴンは金色の体を持った黄金のドラゴンでその背中に生えた翼も口から覗き見える牙もとても立派なものだった。

 その姿はある種神々しくさえ見えた。

 今まで出会ってきた4魔獣たちとはその点が違うと感じた。

 まあ、その醸し出す気配は邪悪そのものなので凶悪な魔獣である点には変わりないが。


 そんなゴッドドラゴンを見てお父さんがポツリと呟く。


「ゴッドドラゴン。4魔獣中、総合能力最強の存在か」


 総合能力最強。

 なるほどそう言われれば確かにそんな感じだった。


 他の魔獣たちは、防御力、耐久力などそれぞれの能力に特化した存在だったが、このゴッドドラゴンはそういう能力特化型の魔獣ではないらしい。

 全体的なバランスがよく総合性能では4魔獣中最強ということなのであろう。


 こういう敵って意外に厄介なんだよね。

 他の魔獣たちは特化型である分、その分野では強力だがそこさえ何とかできれば倒すことができた。

 だが、こういうバランスが良いタイプというのは隙が無く攻めにくいと思う。


 ゴッドドラゴンを見てそんなことを思いながら、


「ヴィクトリア、こっちへ来い」


と、いつものようにヴィクトリアを呼ぶ。


★★★


「はい、は~い。今行きます」


 俺に呼ばれたヴィクトリアは、すぐさま俺の側に寄って来る。

 そして、そのまま俺に抱き着くといきなりキスをしてくる。


 俺たちにとってはいつものことなのだが、この様子を見て、お父さんが怒り始める。


「き、貴様!何いきなりうちの娘と人前で堂々とキスをしているのだ!」

「何って……これは俺たちにとって『神意召喚』の儀式なのですが……」

「神意召喚の儀式だと?ふざけるな!一々キスなんかしなくても神意召喚はできるはずだろ!」

「え?そうなの?」


 俺はお父さんに衝撃の事実を告げられて唖然とする。

 そして、そう言えば最初のころは神意召喚をするのにキスをしていなかったことを思い出す。

 俺はヴィクトリアに事実確認する。


「お父さんはこう言っているけど、実際の所はどうなんだ?」


 その俺の質問に対して、ヴィクトリアは首を大きく横に振りながらこう答えるのだった。


「他の神々はどうだか知りませんが、少なくともワタクシはキスをしないとできませんよ。ワタクシの場合、気持ちが乗らないと神意召喚できませんので。実際、キスをし出してから神意召喚が確実に発動するようになったではないですか」


 そういえばそうだった。

 最初のころ、練習で神意召喚をしようと思ってもうまく発動せず、色々やった結果、ヴィクトリアがキスをしたらうまく行くようですとか言い出したから今現在神意召喚をする時にキスをしているのだということを。


 ということで、俺はお父さんにこう答えるのだった。


「だそうですよ。やはり神意召喚にはキスが必要みたいですね」

「そんなバカな!ヴィクトリア、お前はこの男に騙されているのではないか」

「ホルストさんがなぜワタクシを騙すのですか。それにキスの件はワタクシから言い始めたことですしね。あまり言いがかりが過ぎると、お父様といえども怒りますよ」

「いや、しかしだな」

「それよりも、そろそろ時間のようですね。お父様とのお話はこれで終わりです」


 ヴィクトリアがそう言い終わると同時に俺の体が光り始める。

 どうやら神意召喚が発動したようだった。


★★★


「シンショウカンプログラムヲハツドウシマス」


 そんないつもの声が俺の頭の中に響いて来て、神意召喚が発動し、俺の中に力が溢れてくる。

 そして、いつものように自分の魔法の確認をする。


『神属性魔法』

『神強化+7』

『天火+7』

『天凍+7』

『天雷+7』

『天爆+7』

『天土+7』

『天風+7』

『天罰+7』

『神獣召喚+7』

『神約+5』

『重力操作+7』

『魔法合成+7』

『地脈操作+5』

『空間操作+7』

『世界の知識+7』

『十戒+3』


 と、熟練度が大幅に上がっていた。

 多分ジャスティスと修行して、さらに神気の使い方に習熟したので、その成果が魔法にも現れたのだと思う。

 さて、自分の能力の確認も終わったことだし、ゴッドドラゴンと戦うことにしようと思う。


★★★


 そう思ったが、戦う前にもう一つ確認しておくことにする。


「『世界の知識』」


 成功するかどうか不明だったが魔法で敵の情報を確認しておく。


『ゴッドドラゴン』

 4魔獣中総合性能最強の存在。

 魔竜神王まりゅうしんおうとも呼ばれる黄金の鱗を持つ凶悪なドラゴン。

 その力は、キングエイプにこそ劣るものの、牙は鋼鉄を軽く貫き、尻尾の一撃は山をも一撃で砕くほどの力を持つ。

 防御力も、グランドタートルには及ばないものの、その黄金の鱗はありとあらゆる攻撃を防ぎ、並の武器や魔法では貫くことは困難である。

 ヨルムンガンドのような再生能力こそないものの、非常にタフであり、多少の攻撃では仕留めることは不可能である。

 その上で、炎、氷、雷と三種類のブレスまで使いこなすというまさにゴッドという名前に恥じないドラゴンである。

 まさに完璧ともいえる魔獣ではあるが弱点が無い訳ではない。

 能力のバランスが良いということは、秀でた部分が無いという事でもある。

 もし、これを読んでいるあなたがすでに他の魔獣たちと戦ったことがあるのだとしたら、最強の攻撃力、防御力、耐久力をすでに経験済みのはずだ。

 その経験を活かせば必ず活路はある。

 後はそれを信じて戦うのみである。

 "Good luck."(幸運を祈る)


 ……と、少々長いが、以上が検索結果だ。


 なるほど、ゴッドドラゴンはとてもバランスが良いが、各分野では最強ではない!、か。

 そう言われればそうなのかもしれない。

 よし!この意見は参考にさせてもらうとしよう。


「さあ!かかって来い!」


 こうして準備を整えた俺たちはゴッドドラゴンへと挑んで行くのだった。

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