第396話~ロッキード山脈の遺跡への旅 ホルスト、久々にヴィクトリアとイチャイチャできて喜ぶ~

ロッキード山脈の窃盗団の元アジトまで転移した俺たちはそこから遺跡へ向けて出発した。


 ちなみに、この元アジトは現在獣人の国の軍に接収され、軍の基地兼倉庫として有効活用されているという話だ。

 悪事の拠点だったこの場所が人々のために有効活用されるというのなら、それはそれでいいと思う。


 そんな元アジトを後にして、俺たちは遺跡のあるロッキード山脈へと進んで行く。


★★★


 アジトから遺跡までの道のりは結構長かった。

 しかもその道も悪路で進んで行くだけでもしんどかった。


「『天土』、『天土』」

「『精霊召喚 土の精霊』」


 俺とヴィクトリアがそうやって代わる代わる魔法で道をきれいにしながら、何とか進んでいる感じだった。

 必然的に俺かヴィクトリアが常に馬車の御者台にいるようにしているのだった。

 ちなみに今は俺とヴィクトリアの二人で御者台に居たりする。


「ささ!マールス様、お酒をどうぞ」

「うむ」

「エリカちゃん、このクッキー、おいしいね」

「ええ、買ってきて正解でしたね」

「本当ですね。とてもおいしいです」

「ネズ吉殿、チーズを切りましたの、どうぞ」

「ありがとうございます」


 なお、馬車の中ではみんなで楽しくやっているようだ。

 酒を飲んだり、お菓子を食べたりしてくつろいでいるようだった。

 楽しくやっているみたいで何よりである。


 それよりもちょっと気になったことがある。

 他人が馬車の中で楽しそうにやっているのを見ると、必ず羨ましがって宴に自分も参加したがるヴィクトリアの奴が大人しいのだ。


 一体どうしたんだろうか。

 何か変なものでも食べたのだろうか。


 そんな心配をしていると。


「ホルストさん、春とはいえまだちょっと寒いですね」


 そう言いながら、俺に近寄ってくると思い切り抱き着いてきた。

 そのヴィクトリアの態度を見て、珍しく宴のことを言わなかったのはこれをしたかったからなのかと思った。


 まあ、最近お父さんがいたせいであまり構ってやれなかったからな。

 お父さん、俺とヴィクトリアがいちゃいちゃしていると機嫌が悪いし。

 一回俺とヴィクトリアが抱き合っているのを見て、怒って不機嫌になってしまい、旅行に連れて行って機嫌を取ったなんてこともあったし。


 だから俺たちもしばらく控えめにしていたので、俺としてはこうしてヴィクトリアを抱けるのは嬉しかった。


「ヴィクトリア」


 抱き着いてきたヴィクトリアに俺はそっとキスをしてやる。

 すると、ヴィクトリアも感情が高まったのか、俺にもっと激しく抱き着いてきた。

 しばらくはそのままの状態で過ごし、やがて我に返ると抱き合うのを止める。


「あ、ちょっと興奮しすぎて少し喉が渇きましたね。お茶出しますね」


 そして、ヴィクトリアがあらかじめ用意したのであろう温かいお茶を収納リングから出し、一緒にそれを飲むのだった。

 久しぶりにこうやってヴィクトリアとイチャイチャできた俺はとてもうれしく思ったのだった。


★★★


 こんな風に旅はのんびりとした感じで進んでいたが、もちろん魔物だって出てきてそれらとも戦ったぞ。

 しかも、この周辺に出てくる魔物は。


「また、ドラゴンですね」


 そうやってヴィクトリアがぼやく通り、ドラゴンばかりだった。

 ドラゴン何か今更という気がしないでもないが、それは出てくるのが地竜だけならばの話だ。


「今回はアースドラゴンが一匹に、レッドドラゴンが一匹、それにお供に地竜が三匹、ワイバーンが二匹だね」


 と上位種のドラゴンがかなりの数混ざっていた。


「これだけ、上位種のドラゴンが多いということは……何と言うかRPGだと、クリアまでもう少しという感じがしてきましたね」


 この状況を受けてヴィクトリアが相変わらず訳の分からないことを言っていたが、クリアまであと少しという点には賛同できた。

 これだけドラゴンばかり出てくるということは、遺跡まであと少しなのだろうと俺も思う。


 まあ、それはともかくとして、目の前のドラゴンを片付けないとな。


「おい、敵襲だぞ!」


 俺は馬車の中に声をかけ、残りの嫁たちとネイアさんを招集するのだった。


★★★


 結論から言うと、今回のドラゴンとの戦いはそんなに苦戦したりしなかった。


「リネット。俺とお前の二人でアースドラゴンとレッドドラゴンに対応するぞ」

「おう!」

「他のみんなは残りを始末してくれ」

「「「はい」」」


 そうやって分担を決めて、戦いを進めて行く。


「『神強化』。『フルバースト 一点突破』!」


 まず俺が必殺剣を使ってレッドドラゴンに突撃して行く。

 グサッと俺の愛剣クリーガが心臓を一突きにしてレッドドラゴンを瞬殺する。


「『戦士の記憶』よ、力を貸して!『フルバースト 飛翔旋回撃』!」


 リネットは愛用の斧を自分の体を軸に振り回して、遠心力で勢いをつけてアースドラゴンの首を狙っていく。

  ドサッ、とそれだけでアースドラゴンの首が落ち、アースドラゴンが絶命する。


 そうやって俺とリネットが上位種のドラゴンを始末している間に残りの三人で他のドラゴンを始末する。


「「『武神昇天流 龍殺飛翔撃』!」


 ネイアさんは素早い動きでワイバーンに取りつくと、そうやって必殺技で一撃でワイバーンの頭蓋骨を粉砕し、あっという間に二匹のワイバーンを片付けてしまう。


「『極大化 聖光』」

「『極大化 金剛槍』」


 エリカとヴィクトリアのペアは、まずヴィクトリアが魔法で地竜共の視界を奪った後、エリカが天から何本ものダイヤモンドの槍を降らせて、地竜共の生命活動を司っている脊髄せきずいを狙う。

 ゴキッ、という鈍い音とともにダイヤモンドの槍は次々に地竜共の脊髄を保護している骨を貫いて、地竜の脊髄を破壊し、地竜共の命を奪っていく。


 俺たち五人でここまでするのに十分とかからなかった。


 俺やエリカが冒険者になりたての頃は、地竜一匹倒すのにも苦労したものだが、今ではドラゴンの群れ相手でもこの通りだ。

 それを考えると俺たちも随分強くなったのだと実感できた。


★★★


 さてドラゴン共を倒した後は楽しい回収タイムだ。


 ドラゴン共の遺体を地面に丁寧に並べた後、ヴィクトリアが収納リングで回収して行く。「相場を見ながら後で売却するんだからな。丁寧に回収して少しでも良い状態で保管しておくんだぞ」

「ラジャーです」


 丁寧に回収するとは言っても、特にやることに変わりはない。

 ヴィクトリアが回収する時に気持ちを込めるだけだ。

 それだけの違いだが、それだけでも保存状態が良くなる気がする。

 もちろん気休めだけどね。


 こんな感じで楽しい回収作業も終わったことだし、また嫁たちと楽しく過ごすためのお金もできそうだった。

 ということで、一本桜への旅を再開しようと思う。

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