第393話~ネイアさんの武道着、完成する~

 ホルスターの婚約が決まった後もジャスティスの修業はまだ続いている。


「さあ、今日も元気に訓練するのである!」


 ジャスティスのそんな掛け声と共に訓練が開始される。


「えいさ、ほいさ」


 そうやって声を出しながら、みんな必死になって訓練をする。


 訓練が始まってしばらく時間が経ったこともあって、皆かなり上達してきていた。

 その中でも特にネイアさんの上達ぶりがすごかった。


「ネイア!中々やるようになったのである」

「ありがとうございます」


 ジャスティスがそうやって珍しく褒めるくらいには上達していた。

 最初に始めた『人の行』と『地の行』の段階の修業については既に合格点をもらっており、今では俺やリネットと一緒になって、『天の行』すなわち神気を使いこなす修行をもっぱらやっていた。


「弟子一号に二号。それにネイアも良く神気を使えているのである。人間の身でここまで神気を使えるとは、天晴あっぱれなのである」

「「「ありがとうございます」」」


 最近ではジャスティスもそう言ってくれるようになったので、この国の遺跡へ向けて出発するまでにはもう一段上へ行けそうな感じだった。

 ということで、遺跡へ向かうまでにもうひと頑張りしようと思う。


★★★


 ある日の昼。

 朝の練習が終わり、朝飯も食べ、商館の居間でのんびりしていると。


「ホルスト様、仕立て屋さんからお使いの人が見えられていますよ」


 そう商館の従業員の人が知らせに来てくれた。


 仕立て屋さん。

 多分、前にネイアさんの武道着の作成を頼んだ店のことだろう。


 武道着の作成を頼みに行ってからすでに二週間以上経過している。

 そろそろできる頃かな。

 そう思っていたのだが、ようやく完成したみたいだった。

 まずはそのお使いの子に会いに行って、事実かどうか確認してみる。


「ホルスト様、ご注文の品物の方できておりますので、取りに来てください」


 お使いの子に会うとそう教えてくれたので、今度はネイアさんに知らせに行く。

 商館の事務所へ行き、仕事をしているネイアさんに話しかける。


「ネイアさん!」

「あら、ホルストさん、何か御用ですか?」

「ええ。さっきこの前武道着を頼んだ仕立て屋さんからお使いの子が来たんですよ。それでその子の話によると、例の武道着出来上がったそうですよ」

「ああ、とうとうできたのですね」

「そうみたいです。それで、その武道着、仕事が終わった後に取りに行きませんか」

「そうですね。いいですよ。私も早く出来上がった武道着を見てみたいので是非行きましょう」


 ということで、話はまとまった。

 ネイアさんの仕事が終わったらネイアさんの武道着を取りに行く。

 そう予定が決まったのだった。


★★★


「ほら、出かけるぞ」

「「「「はい」」」」


 ネイアさんの仕事が終わった後、俺はネイアさんと嫁たちを連れて出かけた。

 嫁たちまで一緒なのは。


「「「私たちもネイアさんの武道着、見てみたいです」」」


 と、嫁たちが言ったからだ。

 まあ、嫁たちもネイアさんの武道着に滅茶苦茶興味があるみたいだから、当然ついてくるだろうとは思っていたので、嫁たちの思い通りにさせることにする。


 ちなみにホルスターと銀はお留守番だ。


「ホルスターちゃん。今日は銀姉ちゃんと一緒にお絵かきしましょうね」

「うん」


 と、二人で遊ぶ約束をしているらしいので、今頃は家で仲良く遊んでいると思う。

 ホルスターと銀も婚約したことだし、この調子でずっと仲良くやって行くのだと思う。


 さて、そうこうしているうちに俺たちは問題の仕立て屋さんに辿り着いた。


★★★


「ネイア様、お待たせいたしました。こちらがご注文の品となります」


 仕立て屋さんに入って来店した旨を告げると、店主さんが出てきて出来上がった品物を出してきてくれたのだった。


「では、早速試着してみます」


 店主から品物を受け取ったネイアさんは早速試着を始めた。

 店の奥へ行き、そこで着替え始める。


 ネイアさんが着替え終わるまで五分ほど待ち、再び俺たちの前に姿を現したネイアさんの姿を見た俺たちは。


「「「「おおおおーーー」」」」


 と、感嘆の声をあげる。


 結論から言うと、武道着はネイアさんにとても似合っていた。

 青色のドラゴンの革の生地にドラゴンの刺繍が入った武道着はとてもカッコよく、細身で筋肉質の体系のネイアさんが着ると、スラッとして見え、これぞ武道家という感じがした。


 武道着は見た目が良いだけではなく機能性もばっちりだった。

 まず所々にスリットが入っていて、ネイアさんの動きを阻害することがなくとても動きやすい構造になっている。

 後、素材がブルードラゴンの革製なので、防具としての防御能力も高い。

 物理的防御能力はもちろんのこと、魔法防御能力やブレス攻撃への態勢も高く俺やリネットのオリハルコン製の武具に迫るほどである。


 とても素晴らしい出来の武道着であった。

 よくこれだけの物を作ってくれたものだと思う。


「これはすごいです!とても動きやすいですし、デザインもすごく良いです。とても気に入りました」


 ネイアさんも気に入ってくれたようでとても喜んでいる。

 こんなネイアさんのまぶしい笑顔を見ることができるなんて!

 この武道着を作って本当に良かったと思った。


「ネイアさん、とっても素敵ですよ」

「本当です~。似合っていて、とても羨ましいです~」

「うん、これだけの武道着となると最早芸術品といっても良いレベルの出来だよね」


 嫁たちも武道着のことをべた褒めで、ネイアさんが武道着を手に入れたことを我が事のように喜んでいた。


 そんなネイアさんや嫁たちを見ていると、この人たちのためにこれからも頑張らなくちゃな、改めて決意するのだった。

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