第391話~ホルスターの婚約者~
エリカのお兄さんの所に子供が生まれた。
ワイトさんの所に続いてこの春二件目の慶事である。
この報告を受けてうちの嫁たちがはしゃいでいる。
「私たちも来年こそは子供が欲しいですね」
「その通りだね。アタシも来年こそは……ね。ちなみにアタシは女の子が希望だけど、二人はどう?」
「ワタクシは男の子がいいですね」
「私は二人目の子は女の子がいいですね」
そうやって次は自分たちの番だと張り切っている。
俺もその三人の意見には賛成だ。俺もホルスターの弟や妹たちの顔を早く見たい。
ちなみに俺としては次生まれてくる子は女の子が希望だ。
希望通りに行くとは限らないが、何せ俺には三人も嫁さんがいるからな。
誰か一人くらいは女の子を産んでくれるのではないかと期待している。
それはともかく、お兄さんの所に子供が生まれたと報告があった以上挨拶に行かないわけにはいかない。
「それじゃあ、お前らエリカの実家へ行くぞ!」
俺は家族を引き連れてお兄さんの所へ向かうのだった。
★★★
エリカの実家へ行くと、エリカのお父さんたちが居間に集まって、ベビーベッドを囲んで楽しそうに談笑しているのが目に入った。
俺たちがそんなお父さんたちに近づいて行くと、お父さんも俺たちに気がついたのか声をかけてくれた。
「やあ、ホルスト君たち。よく来てくれたね」
「はい、この度はおめでとうございます」
「ああ、ありがとう」
「それでこの子がお兄さんの子供ですか?」
そう言いながら、俺たちがベビーベッドを覗き込むと、そこには天使のように愛らしい顔をして眠っている一人の女の子の姿があった。
「ああ、そうだよ、ホルスト。この子が僕の娘のミラだよ」
俺たちが赤ん坊を見ているとお兄さんがそうやって紹介してくれた。
それを受けて嫁たちが赤ん坊に近づいて行って、顔を覗きながらちやほやとはしゃぎ始める。
「ミラちゃん、初めまして。あなたのお父さんの妹のエリカお姉ちゃんよ。これからよろしくね」
「ワタクシはヴィクトリアお姉ちゃんだよ。ミラちゃん、よろしくね」
「アタシはリネットお姉ちゃんだよ。よろしくね」
そう挨拶をした後、手を触ったりなぜかベッドを触ったりして赤ん坊のことをあれこれ話している。
というか、エリカも含めて全員が自分のことを”お姉ちゃん”と呼ばせているし。
どうあっても”おばちゃん”とかは呼ばせる気はないようだ。
そういう点、三人とも女の子なんだと思う。
★★★
そうやって嫁たちが赤ん坊を愛でて、ついでに俺も赤ん坊の顔を見させてもらった後はみんなで集まって雑談をする。
「これで子供が生まれたので、お義兄さんもお義姉さんも一安心ですね」
「本当ですね。お兄様もお義姉さんもずっと子供を欲しがっていましたから、無事に生まれて良かったと思いますよ」
「ああ、そうだね。僕もこれで一安心だ」
「私も実家の方から、『早く子供を!』という圧力がすごかったので、今回子供を産んだことでそれから解放されそうなので、精神的に楽です」
本当にその通りだった。
お義姉さん、ずっと実家の方から『子供!』という圧をかけられていて、それで俺たちにも『何とか子供を授かる方法はないでしょうか』と相談してきていたくらいだから、相当精神的につらかったのだと思う。
何せお兄さんの所の子は本家の子なのだから、将来ヒッグス一族を引っ張って行く責任があるのだ。
そのプレッシャーたるや相当のものだったと思う。
それでも今回子供が生まれたのでとりあえず安心だと思う。
これで万が一お兄さんたちに何かあっても、本家の家系は続いて行くことができるからだ。
だからみんなの顔も自然と笑顔になる。
「それにしてもミラちゃん、かわいい子ですね。お母さんにそっくりでとても美人ですよ」
「そうだね。それにユリウスさんの子なら魔法の才能もありそうだから、将来が楽しみだね」
「みなさん、うちの娘を褒めて下さりありがとうございます」
そんな感じで和気あいあいとした感じで雑談が進んで行く。
その一方で、ホルスターと銀の二人はずっと赤ん坊のことを見続けていた。
「ホルスターちゃん、ミラちゃんかわいいですね」
「うん、そうだね」
二人してベッドに体を預け、足をバタバタさせながらずーっと赤ん坊のことを見続けていた。
特に銀など尻尾までバタバタと激しく振っているので、余程赤ん坊の顔を見るのが嬉しいのだと思う。
まあ、子供らしくてとてもかわいらしい所作なので俺は良いと思うけどね。
嫁たちやエリカのお父さんたちも。
「まあ、ホルスターや銀ちゃんたちもミラちゃんのことを気に入ってくれたのね」
と、喜んでいるし万事オーケーだ。
そんな光景を見ながら、俺はこんなのんびりとした日がずっと続けばいいのになあ、と感じるのだった。
★★★
さて、そんな感じで楽しく過ごしていたわけだが、それでも時間というものは無慈悲にも過ぎ去って行くものである。
とうとう帰らなければならない時間がなったので、エリカの実家から帰ることにした。
「それじゃあ、俺たちはもう帰ります」
「ああ、また来てくれよ」
「はい、また来ます」
最後にそう挨拶をして屋敷を出ようとした時。
「ああ、そういえば一つ言い忘れていたな」
エリカのお父さんがそう俺に声をかけてきた。
「何でしょうか?」
「前に言っていた約束、覚えているかな?」
「約束?」
「ああ、ユリウスに娘が生まれたらホルスターと結婚させるという約束だよ」
そういえばそんな約束もしていたな。
と、俺は過去のことを思い出す。確かにお父さんたちとそんな約束をした。
お父さんに頼まれて俺もエリカもそのことを承諾した。
いまさらその約束を破ることなどできなかった。
だから、こう言うしかなかった。
「ええ、もちろん覚えていますよ」
「そうか。じゃあ、今度ミラのお披露目をするときにそのことを発表をしてもいいよね」
「もちろんですよ」
と、こんな感じで話はまとまったわけだが、俺たちがそう言う話をしている横で非常に驚いている人物が一人いた。
「うそ!ミラちゃん、ホルスターちゃんのお嫁さんになるって決まっていたの……」
それは誰あろう銀だった。
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