第387話~ネイア、ジャスティスの修業を受け、神器『武道家の記憶』を授かる~

「それでは今から朝の修練を始めるのである」

「「「「「はい」」」」」


 ヒッグス家の商館では毎朝ジャスティスによる修業が行われている。

 参加者は俺にリネット、ホルスターに銀、それにネイアさんだ。

 俺たちはともかく、ネイアさんが参加したのにはこういう経緯がある。


「ふむ。ネイアは『武神昇天流』をやっているのであるか。確かあれは数百年前に下界に降りた時に私が授けた武術であるな。どれ、ネイアよ。どれくらいの実力があるか見せてみなさい」


 そうジャスティスが言うものだから、ネイアさんがジャスティスと組み手をしてその実力をジャスティスに見せてみることになった。


「はあああ、やあ」


 ネイアさんは全力でぶつかって行くが、相手はジャスティス。ネイアさんの攻撃はことごとく通じない。

 だが、ジャスティスはネイアさんと戦ってみて嬉しそうにしている。


「ほほう。中々やるようだな。よく鍛錬をしていると見受けられる」


 そうやってネイアさんのことをニコニコ顔で褒めるのだった。

 そして、組手が終わった後、ジャスティスはこう言ったのだった。


「ネイアの『武神昇天流』、中々のものである。もしまだ上を目指す気があるのなら、私がいる間修行をつけてやろうと思うが、どうする?」

「本当にジャスティス様が私に修行してくださるのですか?是非、お願いします!」


 と、こういう経緯でネイアさんはジャスティスに修行してもらえることになったのであった。


★★★


 ジャスティスの修業はまず基本の練習をした後、個別指導をすることになっている。

 まず指導を受けたのは俺とリネットだ。


「うーむ。中々神気の使い方が上手くなったのであるな」


 最初見た時にそう褒められ、更なる修練の方法を伝授され、以来毎日それを続け、毎朝ジャスティスにチェックされている。

 ちなみにジャスティスの評価としては。


「順調であるな。その調子で頑張るのである」


 とのことなので、俺とリネットに関してはこのまま教えてもらった練習をするつもりである。


「ホル坊と銀は引き続き基礎訓練を続けるのである」

「「はい」」


 ホルスターと銀は俺たちが盗賊団のアジトへ行っている時からジャスティスに基礎訓練を受けていたのを続けている。


 ジャスティスの言う基礎訓練とは俺とリネットが最初に受けた無駄な動きを削いで理想的な動きを身に着けるあれだ。

 前にジャスティスが言っていた『人の行』という修行だ。

 何度も同じ動作を繰り返させて、それを逐次ジャスティスが修正して理想的な動きへと導いてやっているのだ。


「ホル坊も銀も筋が良いのである」


 と、ジャスティスが二人のことを褒めているので、二人とも才能はあるみたいだ。


 まあホルスターは俺の子供だし、銀も白狐の娘だからな。

 才能を持っているに決まっている。

 後はそれをどうやって伸ばすかだけの話だからな。

 その点、武神であるジャスティスなら二人の才能をうまく伸ばしてくれそうだから任せておいて構わないと思う。


 ということで、二人とも頑張るんだぞ。

 俺は二人の修業風景を見ながら、心の中でそう応援するのであった。


★★★


 俺やホルスターはそんな感じでやっているのだが、問題はネイアさんである。


 ネイアさんは二つの修業を同時にやらされていた。

 すなわち基礎訓練の修業と生命エネルギーの修業。

 つまり『人の行』と『地の行』の修業を同時に行っているのだ。


 俺とリネットの時は片方ずつみっちりとやったのに、二つ同時にやるとか大丈夫なのかと思ったが。


「右腕を突き出す時に左腕が少し下がって隙ができているのである。そこを矯正するのである」

「はい。気をつけます」

「生命エネルギーの込め方のコントロールが甘いのであるな。もっと練習をしてその辺の加減ができないと、必要な時に最大の威力が出せないのである」

「はい、もっと練習します」


 意外にも両方の修業をうまくこなせているようだった。

 まあ、ネイアさんは元々ジャスティスが初代に伝授したという『武神昇天流』をかなり使いこなせていたし、生命エネルギーの扱いの心得もあった。

 だから上手くやれているのだろうと思う。


 それを見てジャスティスも修業の強度を高めに設定しているようで。


「ほら!もっと集中力を高めて修行するのである!だらだらした修業では意味がないのである」


 と、厳しく指導している。


「はい、頑張りますのでもっと厳しくしてください!」


 ネイアさんもそんなジャスティスの修業にちゃんとついて行っているのですごいと思う。

 というか、ヒッグス家の試験を数か月で潜り抜けて来たネイアさんだ。

 その根性と努力は伊達ではないということなのだと思う。


 こんな感じで俺たちの修業は順調に進んで行った。


★★★


 そうやってジャスティスの訓練に励んでいると、ある日ジャスティスがこんなことを言い始めた。


「ネイアも大分『人の行』と『地の行』の修業が進んできたのであるな。そろそろ『天の行』の修業を始めるとよいのである。ということで、これを渡しておこう」


 そう言いながら、ジャスティスはネイアさんにとある物を渡したのだった。


「ジャスティス様、これは?」

「これは『武道家の記憶』といってな、今まで世に現れた素晴らしい武道家たちの経験が蓄積された神器である。これをネイアにやろう」

「神器?そんな貴重な物をいただいてもよろしいのですか」

「構わぬ。これを使ってホルストたちとともに世界に平和をもたらすのだ」

「わかりました。頑張ります」


 このようにネイアさんはジャスティスから神器を授けられ、彼女の『天の行』の修業が始められたのだった。


★★★


 ネイアさんの『天の行』の修行も順調なようだ。

 相変わらず努力を怠らないネイアさんは真面目にジャスティスの修業を受け、神気の扱いを身に着け始めている。


 俺とリネットも修業としてネイアさんと組み手をしたが。


「さすがはネイアちゃんだね。こんなにも早く神気の扱いが上手くなるなんてすごいと思うよ」

「本当だよ。やっぱりネイアさんは才能があるな」


 俺とリネットが思わずそううなるほど、上達の速度が速かった。

 しかも、本人は。


「いえ、いえ。私などお二人に比べるとまだまだです」


 と、決して慢心せずに努力し続けるのだから大したものだと思う。

 それを見て、俺とリネットも「「もっと精進しなきゃな」」と、更なるパワーアップに励むのだった。


 こうやって俺たちは獣人の国の遺跡を攻略すべく、地道に努力するのだった。

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