第382話~ホルスト デリックとルッツを引き渡してもらう~

 国宝のオリハルコンの剣の奪還に成功した。

 ついでに窃盗団も壊滅させて獣人の国の治安も回復させた。


 以上のように多大な功績をあげたので、俺たちは意気揚々と獣人の国の王都ブレイブへと帰還する。


 俺たちが怪物と化した窃盗団の首領を討伐した後、警備隊の大部隊が窃盗団のアジトへと突入し、俺が魔法で召喚した狼たちに負傷させられ動けなくなった窃盗団の連中が次々と捕らえられていった。

 予想通り一部アジトの外に脱出した奴らもいたが、それらも待ち構えていた警備隊の人たちによって捕えられてしまった。


 そうやってお縄になった窃盗団の数は軽く千人を超える。

 その連中が数珠つなぎに繋がれて王都へと連行されて行く様子は見ていて爽快だった。


「この鬼畜外道!」

「お前らのせいで父ちゃんは死んだんだ!父ちゃんを返せ!」


 窃盗団の奴らは人々の恨みを大分買っていたようで、街道を連行されて行く途中、そうやって沿道の人々から罵声を浴びせられ、中には石を投げつけられる奴までいた。

 警備隊の人たちも人々のそういった行動を見て見ぬふりをしているので、窃盗団の奴らはどんどんボロボロになって行くのだった。

 本当、悪党の末路とは哀れなものである。


 え?そんな状況が嫌になって逃げだそうとするやつはいないのかって?

 いたかもしれないが、俺は見なかったね。


 大体窃盗団同士で固く縄で繋がれているから簡単に逃げることなどできないし、逃げ出そうとした奴は切り殺してもよいことになっているから、それが怖くて逃げだすやつはいなかったね。

 逃げたら確実に死ぬけど、このまま大人しく取り調べされて裁判を受ければ死ななくて済むかもしれないのだ。

 ならばどちらを選んだほうがましか、子供でも分かるからね。


 まあルーメンスさんの話によると、連中の場合、最低でも鉱山送りの刑が待っているそうだから、どの道地獄行きは確定なんだそうだけど。


 このように窃盗団の連中を連行しつつ王都へ俺たちは向かったのであった。


★★★


 結局王都へ着くのに二週間ほどかかった。

 窃盗団の連中という余計な荷物を抱えての旅だったので結構時間がかかったが、無事に着くことができて何よりだ。


「おら!さっさと歩け!」


 そうやって窃盗団の連中が牢屋へ放り込まれて行くのを見物しつつ、俺たちは王宮へと直行する。


「ホルスト殿。よくぞ戻られた」


 王宮へ着くと王様の使いの人が入り口の所で俺たちを歓迎してくれ、そのまま謁見の間へと案内してくれる。


 謁見の間へ行くと、すでに王様が玉座に座っていて、ニコニコ顔で俺たちを出迎えてくれた。

 謁見の間に入ると同時に俺たちは王様の前まで行くと、その場に膝まづく。

 そして、そんな俺たちに王様が声をかけてくれる。


「ホルストよ。この度は見事依頼を果たしてくれたようだな」

「は!何とか依頼を果たすことができました。その成果がこれでございます」


 そう言いながら俺は王様に国宝のオリハルコンの剣を差し出す。

 王様の横に控えていた近侍が俺からそれを受け取ると、剣を王様に渡す。

 王様は渡された剣を鞘から抜くと、中身が本物であるることを確認してにっこりと笑い、再び俺たちに声をかけてくる。


「うむ。この剣は本物で間違いない。よくぞ取り戻してきてくれたな。褒めてつかわすぞ」

「はは、ありがたき幸せ」

「それにその方らの活躍のおかげでこの国の治安を乱していた窃盗団もあらかた捕まえることができた。見事な働きである!その方らのおかげで我が国の国民たちもこれからは安心して暮らせるであろう。国民に代わって余がその方らにお礼を言うとしよう。ありがとう」


 そう言うと、国王陛下は本当に俺たちに対してぺこりと頭を下げてきたのだった。

 国王陛下に頭を下げられた俺は慌てて返事をする。


「いえ、国王陛下に頭を下げていただくなど、恐れ多いことであります」

「いや、そなたたちはそれだけの事を成したのだ。もっと誇るがよい」

「ありがとうございます」


 と、こんな感じで王様は俺たちを称賛してくれ、謁見は順調に進んだのだった。


★★★


「ところで、窃盗団の首領が怪物になって暴れ回ったという話を聞いたのだが、本当の話なのか?」

「ええ、間違いないです。退治したのは私どもですので」

「そうなのか。しかし、どうして首領はそんな化け物になってしまったのであろうな」

「それは窃盗団の奴らが『神聖同盟』の奴らの資金源となっていたみたいで、その繋がりで怪物に名rための薬をもらったみたいですね」

「『神聖同盟』とな?そいつらは何者なのだ」


 王様は神聖同盟について知らなかったらしく俺に聞いてきた。

 それに対して俺はこう答えた。


「神聖同盟はこの世界に封じられた邪悪な存在の復活を試みている組織ですね。表ざたにはなっていない話なのですが、世界各国で邪悪な存在を封じ込めるための遺跡を荒らしまわっています。実は私どもがこの国へ来たのも神聖同盟の企みを阻止するためなのです」

「ほう、世界はそんなことになっているのか。というか、なぜそなたたちはそのようなことをしておるのだ」

「はい。それはとある遺跡で女神アリスタ様にお会いして、神命を授かったのです。それで、神聖同盟と戦っているという訳なのです。私たちの力もそのために紙から授けてもらった力なのです」

「何と、アリスタ様に。……にわかには信じがたい話ではあるが、そなたたちの圧倒的な力を見れば確かに納得できる話である。信じるとしよう。それで、ホルストはこれからどうするつもりなのか」


 俺たちの話を信じてくれた王様が今後の話を聞いてきたので、俺はこう答えた。


「準備が整ったらロッキード山脈の奥にあるという封印の遺跡に行こうと思っております」

「何?ロッキード山脈の遺跡とな。そのような遺跡があるという話は聞いたことがあるのだが、本当にあるのか」

「あります。ロッキード山脈に住むという白い狼の神獣に聞いたので間違いないです」

「白い狼?それはマールス様の使いだという白い狼のことか!そんな伝説の狼とそなたらは知り合いなのか?……中々信じがたいことだが、そなたたちなら可能であろう。そういう事なら、遺跡の探索も頑張るがよい」

「はは、頑張らせてもらいます」

「それとそういう事情ならば余も協力するとしよう」

「と、申しますと」


 王様が協力してくれるというので、具体的にどうしてくれるのかと思い聞き返してみる。


「実はな。情けない話ではあるが、今回の件で数多くの役人どもが窃盗団にかかわったことが判明しておる。余はそれらの者たちを処分するつもりなのだが、その前に厳しく取り調べを行うつもりである。それらの過程で、神聖同盟や遺跡に関する情報が得られたらそなたらに伝えることにしよう」


 その王様の提案はありがたい話だった。

 神聖同盟の奴らはあちこちの国で悪さをしているが、今まではうまく隠蔽されてきた。

 だから俺たちが得られた情報は少ない。


 しかし、今回は情報をもってそうな奴らが大勢捕まっている。

 そういう中少しでも情報を得られる可能性が出てくるのはありがたいことだった。


 だから俺は王様にお礼を言った。


「ありがとうございます。そういうことなら是非お願いします」


★★★


 そうやって王様と話をしているうちにも謁見の終了時間が近づいてきた。

 ということで、最後に王様がご褒美の話をしてくる。


「それでホルストよ。この度の依頼の報酬を渡そうかのう。財務官よ、ホルストに例の物を」

「は!」


 王様が側に控えていた財務官に命令すると俺に褒美を渡してきた。


「はは、ありがたき幸せ!」


 俺は褒美の品を受け取ると心の中で思わずニンマリした。

 褒美の品は手形で、かなりの金額が書き込まれていたからだ。

 これだけあればまた嫁さんたちに良い思いをさせてあげられる。

 そう考えると嬉しかった。


 それに王様の褒美はこれだけではない。


「それとデリックとルッツだったかな。人間の魔法使いだったな。確か、ホルストはそいつらを引き渡してほしいのだったな」

「はい、その通りでございます。その二人は前にも言った通り私の一族の人間でして。そのような者が窃盗団で暴れていたと世間に知られますと、一族の恥になりますので、一族の方で処分したく思います。そのような訳で、引き渡しの件、何卒よろしくお願いします」

「あい、わかった。そなたの希望通りその二人は引き渡そう。すでにその二人の取り調べは終わり調書も作成済みだそうだから、それも一緒に渡そう。後はそなたたちが好きに処分するがよい」

「は、ご配慮ありがとうございます」


 と、こんな感じでデリックとルッツのアホ共も引き渡してもらえることになった。

 前に言った通りエリカのお父さんには連絡済みなので、後は二人を連れて行って罰を与えるだけだ。

 あいつらがどんな末路をたどるか……本当今から楽しみである。

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