第381話~勝負決着!仮テスト合格!~
「『フルバースト 一点突破』」
俺はフルバーストを使って天井から動けない状態の首領に対して必殺剣を放つ。
フルバーストはリネットが使う神気を技に込めて放つ技だ。
リネットに教えてもらって今回実戦で初めて使用したのだった。
その威力は絶大で、一点突破の技は部屋の天井を貫通し、首領を地上へと吹き飛ばしていく。
「ギャアアアア」
と、まともに俺の必殺剣を食らった首領の悲鳴が心地良かった。
それはともかく地上へ吹き飛んだ首領にとどめを刺す必要がある。
「『重力操作』」
必殺剣で開けた穴から魔法を使って外に出ると、首領にとどめの魔法を放つ。
「『神化 魔法合成 天火と天爆の合成魔法 天壊』」
空中でのたうち回っていた首領に『天壊』の魔法を放って行く。
「ウギャアアア」
魔法は首領に見事に命中し、ロッキード山脈全体を揺さぶるくらいの大爆発が起こり、ドッゴーンというとんでもなく大きな音が周囲の空気を振動させる。
そして、再生不能なくらいに首領の体を破壊しつくしていく。
魔法によって生じた爆炎が消えると同時に首領の姿も消え失せていた。
生命エネルギー感知と魔力感知、それに神眼の能力も使って首領の生命反応を探ったが、どこにも首領の生命反応は感じられなかった。
「ようやく終わったな」
首領を始末したことで安心した俺は、ホッとした顔になり、出てきた穴を通って嫁たちの所へ戻るのだった。
★★★
さて、首領を倒した後は嫁たちと一緒にアジトの宝物庫へと入って行く。
「うん、窃盗団の人たち、かなり貯め込んでいたようだね」
リネットが宝物庫に積まれた宝の山を見て呆れている。
窃盗団の宝物庫は首領の部屋程度の広さがあったが、そこにはこの国の人々から奪ったと思われる財宝の山が所狭しと積まれていた。
これが大勢の人々を苦しめた結果ここに集められたのかと思うと、リネットでなくても呆れると思う。
是非元の持ち主の所へ返してあげたいところだが、それは俺たちの仕事ではない。
獣人の国の警備隊の仕事である。
なのでここの財宝の処理に関しては彼らに任せるとして、俺たちは自分の仕事をすることにする。
「旦那様、これではありませんか」
宝物庫の捜索を始めてからすぐにエリカが目的の物を発見する。
目的の物は宝石で飾られた金の箱に入っていた。
目的の物は他の雑多な財宝とは分けて大切に保管していたので、すぐ見つけることができたのだった。
「では開けるぞ」
俺はエリカから渡された金色の箱を開ける。
すると出てきた。
「ほう、これが国宝のオリハルコンの剣か。『世界の知識』」
俺は魔法でオリハルコンの剣を確認する。
『宝剣ヤタノツルギ』
獣人の国に伝わる宝剣。国王の権力を象徴する宝剣として代々獣人の国に受け継がれてきた。
製作者は軍神マールス。
初代国王が獣人の国を作った際にお祝いの品として贈られた物である。
と、以上が検索結果である。
どうやら本物で間違いないようだ。
これでようやく国王陛下の依頼を達成することができた。
俺は心底ホッとした。
★★★
オリハルコンの剣を回収した俺たちはアジトの外へ出ると、ルーメンスさんと面会した。
「ホルスト殿、どうなりましたか?先ほど何やらすごい爆発音がしたりしましたので何が何やらわからない状況なのですが」
「窃盗団の奴らは全員戦闘不能にできていると思う。さっきの爆発は俺のせいだな。突然窃盗団の首領が怪物になって暴れ回ったりしたから、アジトを崩壊させないように外に追い出してから魔法で始末したんだよ」
「何と!首領が怪物に!そのようなことがあったのですか」
「ああ、後で詳しく話すよ。それよりも逃げ出して来た窃盗団はいなかったか?」
「何十名か逃げ出してきましたが、全員捕獲済みであります」
「そうか、ならばいい。それよりもアジト内の窃盗団の確保と奪われた財宝の回収だな。窃盗団の奴らは怪我をして身動きが取れない状態だろうから簡単に捕まえられるだろうし、財宝は首領の部屋の奥に隠してあったから、これも簡単に回収できるだろう。それと、宝物庫には色々と資料も置かれていたから、それらを調べれば獣人の国の中で窃盗団に協力していた連中の情報もつかめると思う。ということでルーメンスさん。今こそ手柄の立て時ですよ」
「は、ありがとうございます。よし、警備隊、アジトへ突撃せよ!」
「はっ!」
そして、ルーメンスさんの命を受けた警備隊の人たちがアジトへと突撃して行く。
これで残りの窃盗団の連中も捕まって、関係者も捕まって事件は解決の方向へ向かって行くと思う。
ということで、後は警備隊の人たちに任せようと思う。
★★★
警備隊の人たちにアジトの後始末を任せた後は、キャンプ地へ戻り、お父さんたちと合流した。
合流した時、お父さんはオルトロス、白狐、ネズ吉たちと一緒にのんびりとお茶とお菓子を楽しんでいた。
三人の眷属たちのうちオルトロスと白狐の眷属は二十匹ずつほどがまだ残っており、ネズ吉の眷属は全員がすでに住処に帰っている。
住処へ帰って行った眷属たちにはお土産に食べ物を渡しておいたから、今頃住処でのんびりとお土産でも食べているのではないかと思う。
「おお、良く帰って来たな」
「「「お帰りなさいませ」」」
お父さんたちは俺たちの姿を見ると、そうやってお帰りなさいをしてくれたので、俺たちも。
「「「「「ただいま帰りました」」」」」
と、ただいまを言っておいた。
それで、帰るなりヴィクトリアがお父さんに近づいて行き、こう尋ねるのだった。
「お父様、今日のワタクシたちの活躍はいかがでしたか。見事に要塞化された敵のアジトを粉砕し、敵のボスも倒してきましたよ。これもホルストさんの作戦通りですよ。どうですか?ホルストさんはお父様の試練を受けるにふさわしい方でしたか?」
それに対してお父さんはこう答えるのだった。
「まあ、何と言うか、一応合格、かな?戦いの基本である事前の情報収集もバッチリしていたし、部隊の配置も教本通りだった。敵拠点への攻撃方法も悪くなかったし、敵首領との戦いぶりも見事であった。それでも、私に言わせればまだまだだがな。仕方がないので、試練への挑戦は認めてやろう」
と、渋々ながらも俺のことを認めてくれるようだった。
そのお父さんの返事を聞いて、ヴィクトリアがお父さんに抱き着いて行く。
「お父様、ありがとうございます。ヴィクトリア、そんなお父様が大好きですよ。ブレイブの町へ帰ったら銀ちゃんとクッキーを作る約束をしていますので、できたらお父様にも食べさせてあげますね」
「そ、そうか。それは楽しみだなあ」
そんな感じで、娘に抱き着かれたお父さんはとてもデレデレと嬉しそうに笑うのだった。
それを見て俺は思ったね。
こいつ、いつの間にかお父さんの操縦が上手くなったな、と。
実際、お父さん、最近ヴィクトリアにいいようにあしらわれるようになってきているし。
まあ、親子の仲がいいのは良いことだから別に良いと思うけどね。
それよりも朝っぱらから窃盗団のアジトを攻撃したので疲れてしまった。
とても眠いので、少しゆっくりしたい。
そしてそれが終わったら後片付けをして、いよいよブレイブの町へ凱旋だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます