第380話~VS,怪物と化した窃盗団の首領~

「シンイショウカンプログラムヲキドウシマス」


 ヴィクトリアが俺にキスをすると同時に俺の頭の中にいつもの声が響き、俺の体が発光し、全身に力がみなぎってくる。

 神意召喚の効果が発動したのだった。


 神意召喚が発動すると同時に俺は自分の魔法を確認する。


『神属性魔法』

『神強化+7』

『天火+7』

『天凍+6』

『天雷+6』

『天爆+6』

『天土+6』

『天風+6』

『天罰+6』

『神獣召喚+5』

『神約+3』

『重力操作+6』

『魔法合成+5』

『地脈操作+5』

『空間操作+6』

『世界の知識+6』

『十戒+3』


 前回見た時とほとんど変わらない気がするが、若干熟練度が上がっているのがある。

 あれからそんなに時も経っていないし、こんなものだと思う。


 さて、魔法の確認も済んだことだし首領を何とかすることにしよう。


★★★


 俺が神意召喚の儀式を終えて首領の方をもう一度見ると、首領はすっかり化け物になり果てていた。

 猿のような分厚い筋肉で覆われた胸板。どこかの亀に生えていたような尻尾。そして、全身蛇のような鱗で包まれていた。


 ……って、全部どこかで見たことがあるような体のパーツだな。

 俺がそう思っていると、ヴィクトリアがズバリ指摘してきた。


「ホルストさん、あの首領の体って、今まで倒してきた魔獣のものではないですか」

「お前もそう感じるか?」

「はい。あの胸の形はキングエイプのそれですね。それに尻尾はグランドタートルのものだと思います。それにあの鱗はヨルムンガンドの鱗と同じだと思います」

「俺もそんな気がするけど、あれはどういう事なんだ」

「多分、魔獣たちの体の細胞を合成したのではないかと思います」

「合成?そんなことができるのか?」

「できるかはわかりません。ただあいつらはキメラを作ったり、本物には及ばないとはいえ魔獣たちの復活にも成功したりしています。できる可能性は高いと思います」


 なるほど確かにその通りだ。

 奴らは既にキメラを合成したり不完全とはいえ魔獣を復活させている。


 魔獣の細胞を合成する。できない話ではないと思う。

 まあ、いいや。どっちみち首領は倒すべき存在だ。

 さっさと倒してやるとしよう。


★★★


「ぐははは、見よ、この体を!恐ろしいだろう!さあ、このままお前たちを殺してくれる!」


 体を変貌させた首領は変身が終わるなりそうやって高笑いをしながら、俺たちを攻撃してきた。

 それに対しては俺が前へ出て迎撃する。


「『神強化』」


 魔法で身体能力を強化して首領に攻撃を仕掛ける。

 カラン。

 俺の剣が首領を襲うが、そんな乾いた音を立ててあっさりと弾かれてしまう。

 この防御力。グランドタートルには及ばないが、中々のものである。


 俺の攻撃を防いだ首領は反撃してきた。


「死ね!」


 力任せに腕を振り回して俺を攻撃してきた。

 俺はとっさに盾を構えてその攻撃を防ごうとしたが。


「なっ!」


 ドンという音とともに2、3メートルほど後ろに弾き飛ばされてしまった。

 この攻撃力の高さはキングエイプに通じるものがある。

 確かに首領はキングエイプの細胞の力を得たのだと思う。


 さらに。


「『振動波』」


 キングエイプの『振動波』まで使ってきやがった。まあ本物比べたら威力は大分落ちているので盾で防ぐことができたが、振動で手が震える。

 しかも首領の攻撃はこれで終わりという訳でなく。


「『荷電粒子砲』」


 尻尾から荷電粒子砲まで放ってきやがった。

 これも本物と比べてかなり威力は低かったが、盾に全神経を注がないと防げない程度には強力だった。

 それらの攻撃を何とか防いだ俺は反撃に転じる。


「『十字斬』」


 必殺技を放って首領の右腕を切り飛ばす。


「『極大化 天火』」


 切り飛ばした腕にはすぐに魔法を飛ばし、すぐに灰にしてしまう。

 ボウっと一瞬で燃え尽きたので、この程度なのかと思って俺はホッとしたのだが、それも束の間。


「旦那様、首領の腕が再生していきます」


 俺の背後にいるエリカから声がかかる。

 その言葉を受けて俺が首領の腕を見ると、首領の腕が元の様に回復しつつあった。

 それを見て、俺はこれはヨルムンガンドに通じる回復能力なのだと思った。


 とはいえ、それも本家本元に比べると大分能力的に低い。

 ヨルムンガンドの奴は頭を吹き飛ばされてもあっという間に回復していたものだったが、首領の回復能力はそこまでのものではない。

 しばらく回復する様を眺めていたのだが、一分くらいかかっていた。


 そして、そっらを踏まえて俺は首領の能力に対して結論を出す。

 首領の能力は今まで倒してきた魔獣たちのいい所取りをしたものだが、その能力は大分劣化したものである、と。


★★★


 ということで、俺が全力で戦えば首領を始末するのは難しいことではないが、何せここは地下要塞の中だ。

 全力で魔法をぶっ放せば要塞が崩壊してしまうかもしれない。

 そこで作戦を立てて行動する。


「エリカ、ヴィクトリア。風の魔法と風の精霊の準備をしろ。そして、俺が全力で奴を天井目掛けて吹き飛ばすからお前たちの魔法で奴が天井から離れられないようにしろ」

「「はい」」


 そうやってっ二人に指示した俺は早速行動を起こす。


「『極大化 神約 俺の魔力を半分消耗し首領から素早さを奪え』」


 『神約』の魔法を使い首領にデバフをかけ、首領から素早さを奪う。


 『神約』の魔法は何か対価を払う代わりに相手にデバフをかける魔法だ。

 高い対価を払うほど相手に強力なデバフをかけることができる。

 今回は俺の最大魔力の半分を対価として消費することで、首領の素早さを下げることにした。

 その効果は絶大で、目に見えて首領の動きが遅くなる。


 その隙をついて俺は一気に首領に接近する。


「これでもくらえ!」

「なに!」


 そして、足に莫大な生命エネルギーを込めて首領を天井へ向けて蹴り上げる。


「うぎゃあああ!!!」


 俺の渾身の蹴りを食らった首領は天井へ向かって吹き飛んでいき、ドゴオオンという派手な音とともに天井に激突する。

 ただ激突したはいいがこのままだと下へまた落ちて来るのですぐに次の手を打つ。


「エリカ、ヴィクトリア。やれ!」

「『極大化 暴風』」

「『極大化 精霊召喚 風の精霊』。さあ、風の精霊よ。その力で窃盗団の首領を下へ落ちてこないようにするのです」


 嫁二人の風の魔法によって、首領が天井から落ちてこられないようにするのであった。

 こうして準備万端整えた俺は、首領にとどめを刺しに行く。


「『フルバースト 一点突破』」

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