第376話~ブルードラゴンとの戦いネイアの武道着~

「ブルードラゴンと地竜の混成部隊か。こんな人里に近い場所にしては強力な魔物が現れたな」


 俺たちの前に現れた魔物はドラゴンの混成部隊だった。

 ロッキード山脈も遺跡があるという大分奥の方へ行けばかなりドラゴンが出現するという情報を俺たちは冒険者ギルドで仕入れて来ていたのだが、まさかまだロッキード山脈に到着していない段階で現れるのは意外だった。


 ヴィクトリアのお父さんの話によると。


「おじい様の邪悪な意思が働いて、わざわざこうやって出てきたのかもしれないな」


 とのことだった。


 お父さんの言うおじい様とはもちろん邪神プラトゥーンのことである。

 ヴィクトリアから見たらひいおじいさんなので、お父さんから見ておじいさんで間違いない。


 ちなみにお父さん、そのおじいさんには会ったことがあるらしい。


「孫である私にはとても優しい人だったよ。もっとも裏であちこちの世界を滅ぼして楽しんでいたと知った後は幻滅したけどね」


 との話だった。


 まあ、それはともかく魔物が襲ってきた以上はさっさと退治するとしよう。


★★★


 敵はブルードラゴンが一匹と地竜が五匹の群れだった。

 地竜はともかくブルードラゴンは強敵だ。

 冷気属性のブレス攻撃が強力なことで知られていて、空も飛ぶことができる。

 並の冒険者ならあっという間にやられてしまうような相手だ。


 だが、俺たちはここの遺跡の封印を目指している。

 そのためにはもっと強敵と戦う必要があるだろう。

 こんな相手にてこずっていられない。


「おい!ドラゴンだ!全員出ろ!」


 ということで、馬車の中へ声をかけ、戦闘準備を整えるのだった。


★★★


「俺がブルードラゴンを相手にするから他のみんなは他のドラゴンを潰してくれ!」

「「「「はい!」」」」


 俺は嫁たちにそう指示をして配置を決める。

 お父さんと白狐は馬車を守ってくれるらしいので任せることにした。


「じゃあ、アタシから行くよ!」


 まず最初に突撃したのはリネットだ。


「ゴオオオオオ」


 ドラゴンは炎のブレスを放ってリネットを迎撃してくるが、リネットはそれをものともせず突っ込んで行き。


「おりゃあ」


 斧の一撃でドラゴンの首を切り落としてしまった。


 リネットに続いたのはネイアさんだ。

 リネットの後ろに隠れながらうまいことドラゴンに近づくと。


「『武神昇天流奥義 龍破撃』」


 と、奥義とやらを使って地竜の頭を一撃で粉砕してしまう。


 というか、ドラゴンの頭を素手で粉砕してしまうってどういう奥義よ。

 そう思いながら見ていると、どうやら俺がジャスティスにかつて習った生命エネルギーを込めた攻撃をしているらしかった。

 確か『武神昇天流』は始祖がジャスティスから伝授された武術らしいが、どうやら本当の話らしかった。


 まあ、今本人がブレイブの町にいることだし、今度聞いてみることにしよう。


 と、このように嫁さんやネイアさんたちが頑張ってドラゴンの相手をしてくれているので、俺としては安心してブルードラゴンに立ち向かえるのであった。


★★★


 ブルードラゴンの奴は仲間のドラゴンを前面に出して、自分だけ後方に控えて「ブオオオオオ」と、ブレスで攻撃してきていた。

 一人だけ偉そうな感じで生意気なやつだと思った。


「『重力操作』」


 ということで、魔法で一気に近づいて決着をつけてやることにする。


「グオ?」


 俺が空を飛べると思っていなかったのか、ブルードラゴンの奴が面食らったような顔をしている。

 とっても間の抜けた顔だった。


 そんなドラゴンのどてっ腹に俺は思い切り蹴りを食らわせてやる。

 本当なら首をはねて一撃で終わらせてやりたいところだが、ブルードラゴンは高く売れる。

 だから倒すにしてもなるべく体を傷つけないように倒したかった。


 ということで、隙を作って心臓を一突きにしてやるため、蹴りを食らわして地面にたたきつけてやることにしたのだった。


「ギャオオオオ」


 俺に蹴りつけられたブルードラゴンは予想通りに地面へと向かって急降下して行く。

 何か情けない悲鳴を上げているが、俺としては心地よい歌にしか聞こえなかった。


 ドオオオン。

 すごい勢いで地面に激突したブルードラゴンは受け身を取ることもできず、派手な音を立てて地面に激突する。

 完全に隙だらけな状況だった。


 それを見て俺も急降下してブルードラゴンへ向かって行く。


「ブオオオオオ」


 それでもブルードラゴンは何とか冷気ブレスで迎撃しようとしてきたが、無駄なあがきだ。


「『天火』」


 魔法で軽く冷気を相殺して一気に距離を詰める。

 そして。


「大人しく成仏しろ!」


 愛剣のクリーガで心臓を刺し貫く。

 俺に心臓を貫かれたブルードラゴンは「グヘッ!」と、短い悲鳴を残して絶命する。


 ブルードラゴンを倒した後、周囲を確認すると嫁たちがちょうど残りのドラゴンを退治し終えたところだった。


「これで、終わりかな」


 そう思った俺は戦闘態勢を解除すると嫁たちと合流し、収穫物の回収に注力するのだった。


★★★


「ヴィクトリア、今日の獲物は高く売れるからな。慎重に扱えよ。特にブルードラゴンは特別丁寧にな」

「ラジャーです。任せてください」


 ドラゴン共を仕留めた後、俺たちはうきうき顔でドラゴンたちの回収作業に入った。

 ヴィクトリアのお父さんと白狐は「人間が使うお金をもらっても仕方がない」と言うので、残りの全員で山分けだ。


「私もいただいてよろしいのですか?」


 ネイアさんは遠慮がちにそう聞いてきたが、もちろん分配するに決まっている。

 ネイアさんも大活躍してくれてドラゴンを倒したのだから。


 ということで、ヴィクトリアが収納リングにドラゴンたちを収納するのをみんなで手伝ったのだが、そんな中、ネイアさんがブルードラゴンをまぶしそうに見ているのに気がついた。

 どうしたんだろう。そう思い聞いてみると。


「いや、このドラゴンの青色、とてもきれいだなと思いまして、感動していたのです」


 そう言われて見てみると、確かに今日の獲物のブルードラゴンはとてもきれいな青色をしていた。

 そして、この青色、ネイアさんにとても似合いそうだなと思った。

 だから、ふと口にする。


「そうだな。きれいな青色だな。どう?このドラゴンの皮を使って武道着を作ってみたら?ドラゴンの革製の武道着は武道家にとってあこがれの品だと聞くけど、この機会に作ってみたらいいと思うよ」


 そうネイアさんに提案してみる。


 それを聞いたネイアさんが驚いた顔になる。

 どうやらそんなことを言われるとは思ってもみなかったようだ。

 だから、ちょっと困惑したような顔をしながら断ろうとしてくる。


「そんな。ドラゴンの革製の武道着なんてとてももらえないです。今使っている普通の武道着で十分です」


 だが、ここでうちの嫁たちから横槍が入る。


「まあ、青い武道着。ネイアさんに似合いそうでとてもいいではありませんか」

「そうですよ。ワタクシたちの中では、狩った獲物は皆の物ということになっています。だから、遠慮することはないです」

「そうだよ。思い切って武道着、作っちゃいなよ」


 と、口々にネイアさんにプッシュして行く。


「いや。でも・……」


 それでもネイアさんは固辞しようとしたが、嫁たちはそれに負けじとどんどんプッシュして行く。

 そして、それにネイアさんがとうとう根負けしてしまい。


「わかりました。そこまでおっしゃっていただけるのなら、いただくことにします」


 と、町に帰ったら武道着を作ることになったのだった。

 青色のドラゴンの武道着。ネイアさんにとても似合いそうだった。

 是非ドラゴンの武道着を着たネイアさんを見てみたいと思った。


 こうして、俺の楽しみがまた一つ増えたのであった。

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