今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
閑話休題56~その頃の妹 妹、投資セミナーに参加する~
閑話休題56~その頃の妹 妹、投資セミナーに参加する~
皆様、こんにちは。
レイラ・エレクトロンです。
うちの兄貴が獣人の国とやらに仕事に行ってから約一か月。
私は頑張って貯金した。
ギルドの仕事。兄貴の家の掃除といったアルバイトの他にも仕事をしてお金を稼いだ。
「あんた、どうしたの?急に勤労意欲に目覚めて、そんなに働き出すなんて。体の調子が悪いんだったら病院に連れて行ってあげるよ」
フレデリカたちにはそんな心配とも悪口ともつかないことを言われたが。
「大丈夫。欲しいものができたからお金を貯めているだけだよ」
と、誤魔化しておいた。
そうやって頑張って働いた結果。
「何とか銀貨三十枚貯まった」
そして、私は一か月余りで銀貨三十枚を貯めたのだった。
自分で言うのも何だが、人生なるべく楽に生きたいと願っている私としては頑張った方だと思う。
大体私の人生設計としては、魔法が使えなかったはずの兄貴が家から出て行った後、素敵な旦那様を実家の婿養子にして、その人にバッチリ働いてもらって、私自身はのんびりと遊び暮らすつもりだったのだ。
私の実家の家格なら問題のない計画だった。
だが、その計画は兄貴が強大な魔法を身に着けて帰って来たことでご破算になり、その後色々あって、今はこのざまだ。
ここから私が一発逆転するには大金を稼ぐしかないのだ、
ということで、大金を稼ぐために行動を開始することにする。
★★★
それから数日後。
私はノースフォートレスの町の商業区にある貸し会議室に来ていた。
「ここで間違いないかな」
私は貸し会議室の前に置かれている立て看板を見て、聞いてきた通りだと思い、早速中へと入る。
ちなみにその看板にはこう書かれていた。
『銀貨十枚から始める海産物投資セミナー』
★★★
セミナーの会場には結構な数の人が集まっていた。
大体五十人くらいはいるだろうか。
この手のセミナーに来るのは初めてなのだが、世の中お金を儲けたいと思っている人って多いんだなと思った。
それはともかく、会場に入ってしばらく待っていると、講師らしき人が入場してきてセミナーが始まる。
講師は高級そうな服を着た背が高くて見栄えの良い人だった。
一言で言うと、成功した実業家。
そんな感じの人だった。
講師は会場に用意された壇上に着くなり、早速話を始める。
「皆様、この度は当セミナーに参加していただきありがとうございます。本セミナーは、皆様に海産物事業のすばらしさをお教えし、皆様にお金持ちになっていただくためのセミナーとなっております」
セミナーは講師のそんな挨拶とも説明ともつかない話から始まる。
「皆様はこの国で東のフソウ皇国との間の海で取れる海産物の人気が高まって来ているのをご存じですか。そのせいで王都やここノースフォートレスの町では、数多くの海産物を取り扱う料理店がオープンしております」
そう言うと、講師はセミナー室の黒板に紙を張り付け、ここ最近オープンしたという有名な海産物料理店の情報を私たちに伝えてくる。
伝えて来るだけでなく、実際にその店の料理を取り寄せてくれて参加者たちに振る舞ってくれたりもする。
それを食べた結果。
「これはおいしい!これなら確かにはやるのはわかる」
私もこの海産物事業に将来性がありそうだと感じるのだった。
私だけでなく他の参加者たちもそう感じているのか、皆一様にうんうんと頷いている。
そうやって参加者の心をつかんだ頃、講師の男はこう言うのだった。
「このように近年ヴァレンシュタイン王国では海産物の需要が増えているのですが、その需要に供給が追い付いていないのが実情なのです。そこで、我々が計画しているのが海産物の養殖事業です」
★★★
「養殖事業って、具体的には何を養殖するのですか?」
講師の養殖事業をするという発言に対して、参加者からそんな質問が飛ぶ。
それに対して講師はこう答えるのだった。
「王国でも人気の高い種類の魚、エビ、貝類の養殖を計画しております。これをご覧ください」
そう言いながら講師が私たちに見せてきたのは魔道カメラで撮った写真だった。
その写真には魚や貝がいけすで養殖されている光景が写っていた。
それらの写真を見せながら講師は続ける。
「すでに現地ではこのような形で養殖が行われております。我々としては皆さんに出資してもらってこの養殖事業を拡大したいと考えております」
どうやらここの団体は出資者を募って養殖事業を拡大するつもりの様だった。
私はこの話を聞いて、これはうまく行くのではないかと考えた。
確かに海産物の需要は伸びてきているようだし、養殖事業がすでに行われているというのであれば、それを拡大するために資金を募るという話も理解できる。
このことは私以外の参加者も思っているようで、皆話を聞いて、儲け話に目を輝かせている。
「もし今までの話を聞いてこの投資話に興味を抱いた方は明日も引き続きセミナーを開催しますので、是非ご参加ください」
今日のセミナーは講師のその言葉で終わった。
そして、私は翌日のセミナーにも参加することに決めたのだった。
★★★
ところで、私の兄嫁のエリカが大分後になってこんなことを私に教えてくれた。
「そんなに儲かる話があるのなら、なぜその人は他人にべらべら喋ったりするのですか?本当に儲けが出るのなら資金は全額自分で用意するか、もしくはせいぜい身近な人たちに声をかけて集めて、利益を独占しようとするでしょうに」
その兄嫁の言葉を聞いた時、兄嫁はなぜその話をもっと前にしてくれなかったのだろうと、私は思った。
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