第368話~銀、奪還作戦!~
さて、これから銀の救出に向かうわけだが、その前に役割分担を決めておく。
「まず、エリカはここに残り冒険者ギルドへ連絡して、国王陛下に面会できるように手配してくれ。何せ相手は国の上の方とも繋がりがあるらしいからな。一応こちらとしても国王陛下の依頼を断るように偽装の行動を起こしておかないと銀が危ないからな」
「はい、畏まりました。そのように手配いたします」
「ああ、頼むよ。それとネズ吉もここに残って引き続き情報収集に励んでくれ。ネズ吉の配下のネズミたちはまだ頑張ってくれているみたいだからな。何か人さらい共や窃盗団の関する有益な情報を取ってくるかもしれない。だから、その辺のことを頼むよ」
「はい、了解しました」
「それとリネットとヴィクトリア、ネイアさんは俺と一緒に来てくれ。人さらい共を成敗するぞ!」
「「「はい」」」
と、こんな感じで俺は各自の役割を決めたわけだが、ここでホルスターがこんなことを言い出した。
「ねえ、パパ。僕も銀お姉ちゃんの救出に連れて行ってよ」
「え?ホルスターもパパたちと一緒に行きたいのか?」
「うん、僕も銀姉ちゃんを助けたい!」
俺はどうしようかと思った。
正直言うと俺はホルスターを危険な場所に連れて行きたくない。
子供を危険な目に遭わせたくない。
親としては当然の感情だ。
だが、ホルスターは銀が攫われたことに対して負い目を背負っている。
もし、今回ホルスターを連れて行かなかったらこの子は一生そのことを背負い続けるだろう。
それも親としては避けてやりたいことだった。
なので、俺はホルスターの目を見た。
うん、すごく真剣な目だ。
絶対に銀を助けたい!
そんな思いがひしひしと伝わってくるような目つきだった。
そんな息子の目を見た俺は決断した。
「よし、わかった。それじゃあ、ついて来い!」
「ありがとう、パパ」
こうして俺たちは四人で人さらい共のアジトへ乗り込んでいくことになったのだった。
★★★
「よし、お前ら、これから地下水路へ入って行くけど準備はいいか?」
「「「はい」」」
俺たちはネズ吉配下のネズミたちに導かれてブレイブの町の地下に広がっている地下水路へと入って行く。
地下水路の入り口は町の色々な場所にあるのだが、俺たちが入ったのは町の中央広場の近くからだ。
ネズ吉によるとここが一番人さらい共のアジトに近いという話だった。
今の時刻は午後十時ごろ。
銀が攫われてから数時間ほど経っている。
というか、銀の奴、人さらい共にもう数時間も軟禁されているのか。
銀は一見気丈そうに見えるが寂しがり屋な所があるので、今頃しょんぼりとしている頃だと思う。
そう考えると、銀を早く助けてやりたい!俺は切実にそう思うのだった。
ということで、さっさと進むことにする。
「それじゃあ、頼むぞ」
「チュー、チュー」
ネズ吉配下のネズミたちの案内で水路を進んで行く。
水路の構造は真ん中に太い水路が流れていてその両側を人が通れるくらいの小さな歩道が通っている感じだ。
俺たちはその歩道をネズミたちに導かれて進んで行く。
基本的にサクサクと進んで行けた。
ただ、完全に障害がなかったわけではなく、途中魔物が出たりもした。
「スカイフィッシュにビッグアリゲーターか」
とは言っても今までに何度も出会ったことがあるような魔物で大したことはない。
「『天ら……』」
俺がサクッと魔法で魔法と倒そうとしたが、その前にホルスターが動く。
「『電撃』」
さっと俺たちの前に立つとそうやって電撃の魔法を放ち、たちまち魔物たちを駆逐してしまう。
さすがは俺とエリカの息子!
やることが手早い。
これだけの実力があれば大人の魔法使いでも歯が立たないと思う。
親としては息子の実力が見られてうれしいのだが、ちょっと張り切り過ぎているような気がする。
多分、銀を救いに行くという大きな目標があるので気合が入っているのだと思う。
ということで、俺はホルスターの頭を撫でて落ち着かせることにする。
「ホルスター。銀を助けたいと強く思っている気持ちはよくわかるが、焦りは禁物だぞ。もうちょっと落ち着いて行動しなさい」
「うん、わかったよ。パパ」
「よし、いい子だ」
そして息子が俺の言う事を聞いてくれたことに満足した俺は、もう一度ホルスターの頭を撫でるのだった。
★★★
そうこうしているうちに目的の場所に着いた。
水路の歩道の壁の所に大きな扉があるのが見えた。
早速扉に近づいて中の様子を探ってみる。
「『生命力感知』」
生命力感知の技を使って中の様子を探ってみる。
すると。
「おお、中からたくさんの人の反応を感じる」
壁越しに中から多くの人の生命エネルギーの反応を感じた。
ネズミたちの報告によると、ここには銀の他にも攫われた人たちや人さらいの一味の奴らもいるということだったから、これだけ多くの生命反応を感じるのだと思う。
ということで、ここが人さらい共のアジトで間違いなかった。
「さて、問題はどうやって中へ入るかだな……」
アジトが特定できたのは良かったのだが、問題は進入方法だった。
一番手っ取り早いのは扉を破っての正面突破だが。
「それだと攫われた人たちが危ないかもね。銀ちゃんの他にもたくさんいるみたいだし」
リネットの言う通りだった。
人さらい共なんかどうでもいいが、攫われた人たちが被害を受けるのは避けたかった。
「ということは、どこか別の所から侵入するしかないですね」
「そんなに都合の良い場所があるのでしょうか」
「わからないけど、探すしかないだろう。ということで、ホルスターも……」
手伝ってくれ、と俺が息子に声をかけようとしたときホルスターの姿が見えないことに気がついた。
すぐに全員で行方を捜す。
すると。
「ホルストさん、ここに小さい子なら通れるくらいの通風孔があります」
すぐ近くの壁に子供が通れるくらいの小さな通風孔があるのをヴィクトリアが発見した。
「『魔力感知』」
俺はすぐにその穴を魔力感知の技で調べる。
「うん、結構魔力の高い者がその穴を通った痕跡が残っている。どうやらホルスターの奴、その穴から中へ入ったようだな」
多分、この中に銀がいるとわかって我慢できなくなって入ったのだと思う。
ちょっと褒められた行動ではないが、それだけ銀のことが大事だから、つい先走ったのだと思う。
先走ったことは後で叱るとしても、他人のために行動できるのはすごく偉いと思う。
「って、余計なことを考えている場合じゃないな。お前ら!俺たちもホルスターに続くぞ!」
「「「はい」」」
ということで、俺たちもホルスターに続いて通風孔から入って行くのだった。
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