第364話~これが有名税というやつか! ホルスト、ブレイブの町でもギルドマスターから頼みごとをされる~

 ヒッグス家の商館に一泊した翌日。


「ホルスターに銀。ちゃんとお留守番しているんだぞ」

「うん、パパたち行ってらっしゃい」

「お気をつけて行ってらっしゃいまし」


 俺と嫁たちは銀とホルスターに見送られてヒッグス家の商館を出た。

 ネイアさんは今日は初出社ということでもう仕事に行ったみたいだし、俺たちも仕事なのでホルスターたちは家に残しておいてお留守番させることにする。


 行き先はブレイブの冒険者ギルドだ。

 俺たちにはここへ荷物を届ける仕事がまだ残っている。


 なお荷物を届ける仕事はこれで最後だ。

 この後は、この前神獣のひ孫であるフェンに紹介された神獣に会うためにロッキード山脈に行ってみようと思う。


「ということで、さっさと仕事を片付けようか」

「「「はい」」」


 そして、俺たちは冒険者ギルドへと出かけるのだった。


★★★


 荷物の引き渡しはすぐに終わった。


「はい、確かに商品が揃っているのを確認いたしました」


 冒険者ギルドの倉庫で預かってきた荷物を倉庫係の人に確認してもらって終わりである。


「それではこちらが受取証です」


 商品の受取証をもらい、これをギルドの受付へ持って行けば仕事は完了だ。


「はい、ご苦労様でした。それでは報酬を用意いたしますね」


 受取証を受付に渡して、後は報酬を受け取るだけと思いながら待っていると。


「あの、ホルスト様。ギルドマスターがお話がしたいとおっしゃっているのですが」


 と、声をかけてきたのだった。


 俺はまたかと思った。

 ウェストリバーを出て以来、ここへ来るまでの道中の町のギルドへ依頼された荷物を届けた。

 そして、そのたびにギルドマスターに会うことになったのだった。


「ホルスト殿、お会いできて光栄です」

「ホルスト殿、是非武勇伝を聞かせてください」


 皆歓迎してくれたが、武勇伝を聞かせてくれと頼んで来る人も多く、結構な時間を取られることも多かった。

 でも、仕方がなかった。俺たちはそのくらい有名になってしまったのだ。

 変に断ると色々と面倒なことになる。


 これが有名税というものか。

 そう思って諦めるしかなかった。



ということで、ここのギルドマスターとも会うことにする。


「いいですよ。会いましょう」

「ありがとうございます」


 そして、俺たちは受付の職員さんに案内されてギルドマスターの執務室に向かうのだった。


★★★


「ホルスト殿、お会いできて光栄です。私、この町の冒険者ギルドのギルドマスターをしておりますリングストンと申します。以後、お見知りおきを」

「初めましてホルストです。よろしくお願いします」


 執務室に入るなり、俺はギルドマスターのリングストンさんと挨拶をした。


 リングストンさんはイノシシの獣人で、がっちりとした体格の人だ。

 というか、どこのギルドでもギルドマスターって体格のいい戦士タイプの人がやっているよね。


 まあ、魔法使いだと冒険者を引退しても魔法の先生とかで引く手数多だし、ギルドマスターに推されるような戦士だと、当然ながらランクが高いので屈強な人が多いから必然的にそうなるのだと思う。


 そんな感想を抱きながら俺はリングストンさんと話をする。


「いやー、ホルスト殿の噂は色々お伺いしています。何でも何十万もの魔物の軍団を撃滅したとか、凶悪なドラゴンや悪魔たちを討伐したとか。すごいお話を聞いておりますぞ」

「いや、いや。大したことはしていませんよ」

「いや、ご謙遜なさりますな。並の人間にはそのようなことはできませんよ。今日は是非その辺のお話を聞かせてくださいませんか」

「ええ、もちろん構わないですよ」


 やはりこの人も武勇伝を聞きたくて俺たちをここに呼んだのかな?

 そう思いつつも、俺はリングストンさんに今までの戦いの経緯などを話したのだった。


★★★


 結局、リングストンさんとの話は午後まで続いた。

 途中リングストンさんが昼食にサンドイッチを出してくれたので、それを食べながら話した。


「あのサンドイッチ、おいしかったですね」


 そう後でヴィクトリアが感想を述べるくらいにはおいしいサンドイッチだった。

 聞くところによると、ブレイブの町でもかなりの高級レストランから取り寄せたというサンドイッチらしかった。

 なるほど、おいしいわけである。


 そういうおいしいサンドイッチをおごってもらったので、俺たちもつい長居してしまったわけだが、それでも時間には限度がある。

 ホルスターたちも屋敷で待っていることだし、途中で何かお土産でも買って帰ろうかと思い、暇いとま乞いをすることにする。


「では、うちに帰ったら子供たちも待っていますし、そろそろ失礼させていただきます」

「今日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございます」

「いえ、いえ。大した話では……」

「これで、皆さんがとても素晴らしい冒険者だということが確認できました」


 確認できた?

 それはどういう意味だろうか?


 俺が戸惑っていると、リングストンさんはこう切り出してきた。


「実は当ギルドでは現在一つ難解な依頼を請け負っておりまして、それをこなせる冒険者を探していたのです。皆さんならその仕事をこなせると思います。どうでしょうか引き受けてもらえないでしょうか」


 そうやって、急に仕事の依頼をされたのだった。


★★★


 結局、俺たちはその仕事を引き受けた。


「是非、お願いします」



と、何度もリングストンさんに頭を下げられたからだ。

 こんな大きな町のギルドマスターにそこまでさせておいて引き受けないわけにはいかなかった。


 ということで、翌日俺たちはリングストンさんに連れられて今回の依頼主の所へ案内された。

 そして、その依頼主が住んでいるという建物を見て呆然としていた。


「まさか、ここは王宮か!ということは」

「依頼主は国王陛下ということでしょうね」


 そう。今回の依頼は国王陛下からのものだったのだ。

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