今ならもれなく女神がついてきます~一族から追放され元婚約者と駆け落ちした俺。食うためにダンジョンに挑み最強の力を得たまではよかったが、なぜかおまけで女神を押し付けられる~
第361話~大渓谷の空でネイアさんと……~
第361話~大渓谷の空でネイアさんと……~
ウェストリバーを出て獣人の国の王都ブレイブへ向かう道すがら俺たちは観光に寄った。
「ここがグランバード大渓谷ですか」
目的地に着くと途端に言い出しっぺのヴィクトリアの目が輝き出した。
グランバード大渓谷。
ここは世界最大の大渓谷で、むき出しの岩肌の模様がとてもきれいなことで知られていた。
ここへ来たいと言い出したのは先述の通りヴィクトリアだ。
「ホルストさん、ホルストさん。ここ物凄く景色がいいらしいですよ。ガイドブックにそう書いてありますし」
ヴィクトリアはどうやらガイドブックでここのことを知ったらしく、行きたいとおねだりしてきたのだ。
「これは是非私も行ってみたいですね」
「アタシも大賛成!」
他の二人の嫁たちも賛成だったので、こうやって来たのだった。
「全部で七名様ですね。それでは展望台への入場料は全部で銀貨一枚と銅貨八十枚になります」
「それじゃあ、これで」
入り口でお金を払って全員で展望台へ入る。
展望台からの眺めを一言で言い表すと。
「これは爽快な眺めだな!」
爽快。その一言に尽きた。
展望台の上からは渓谷の岩肌の地層の積み重ねによるきれいな模様が一望できた。
赤や黒や青の土が折り重なってコントラストをなす様はとても素晴らしい光景だった。
「とてもきれいです」
「すばらしいですね」
「ここに来た甲斐があったね」
「こんなの初めてです」
と、嫁とネイアさんが感動しっぱなしだ。
銀とホルスターも。
「ホルスターちゃん、きれいだね」
「そうだね。どうせならもうちょっと近くでじっくり見てみたいね」
きれいな光景を見ることができて喜んでいるようだ。
というか、もっと近くで見てみたい?
よし!その案、採用だ!
★★★
「どうだ。ホルスター、楽しいか?」
「うん、楽しいよ。パパ」
「銀はどうだ」
「最高です!ホルスト様」
ホルスターがもっと近くで岩肌を見たいと言い出したので、俺が魔法で空を飛んで近くまで連れて行って見せることにした。
まずはホルスターと銀からだ。
「ホルスターに銀。俺にしっかりと捕まっているんだぞ」
「「うん」」
二人を俺にしっかり抱き着かせてから魔法で一気に渓谷の岩肌へ向かって飛ぶ。
「「とてもきれいだね」」
間近で岩肌を見て、ホルスターと銀がとても喜ぶ。
間近で見る岩肌は展望台から見るのとは違って、得も言われぬ迫力があった。
そうやって子供たちが喜ぶのを見ながら渓谷の入り口辺りを2、3周グルグルと飛んだ後、展望台へと帰る。
「楽しかったか?」
「うん、楽しかったよ」
「はい、とっても」
「そうか、それはよかった」
最後は喜ぶ二人の頭を撫でてやるのだった。
★★★
子供たちの後は嫁たちの番だった。
一人ずつ順番に連れて行く。
「旦那様、最高です!」
エリカは岩肌に近づくとそう叫びながら俺にしっかりと抱き着いて来てキスまでして来た。
エリカは普段人目がある所では絶対キスとかしてこないのだが、今は誰にも分らないと思ったのか、ここぞとばかりにキスをして来たのだった。
「ホルストさん!もっと高く飛んでください!」
ヴィクトリアは、もっと高く飛んでくれと子供のようにおねだりしてきた。
まあ、元々ヴィクトリアはここへ来たがっていたのでもっとじっくり見たかったのだと思う。
「ホルストさん、はい」
もちろん、ヴィクトリアもエリカ同様キスをして来た。エリカよりも回数は少なかったが、濃いキスを何度かして来た。
三人の中で一番大胆だったのは意外にもリネットだった。
「高い所はちょっと寒いね」
そうやって寒がるふりをしながら俺にしっかりと抱き着いてきた。
その上で。
「ホルスト君、行くよ」
他の二人同様俺にキスをして来た。
しかも、高い所を飛んでいるせいで興奮しているのか、俺のコートの中に手を突っ込んできて何やらゴゾゴゾしている。
まあ、今晩はリネットの日だからな。
それも相まってちょっとはしゃいでいるのだと思う。
と、こんな感じで俺は嫁たちとの渓谷見物を終えたのだった。
★★★
「ネイアさんも見学に行きませんか」
嫁たちとの遊覧飛行が終わった後はネイアさんにも遊覧飛行のお誘いをかけた。
まあ、折角みんなで一緒に来たのにネイアさんだけのけ者にできないからな。
俺としては当然のお誘いなのだが、最初ネイアさんは遠慮してきた。
「いいえ、それは良くありません。奥様方の目の前でホルストさんに抱き着いて飛ぶとか。世間体が良くないです」
ふむ。どうやら嫁たちが俺に抱き着きながら飛んでいたのを見て、自分がああいう形で俺と飛ぶのは良くないと思ったらしかった。
ならば、と俺はこう提案してみる。
「別に俺に抱き着かなくても空を飛ぶことはできるので大丈夫ですよ。少々離れていても全然飛べますよ」
「そうなのですか?でも、それだとちょっと怖い気が」
「だったら、俺と手を繋いで飛びましょう」
「でも、それでも……」
「いいから、行きましょう」
なおも渋るネイアさんを俺は強引に連れて行った。
え?そんなことをして嫁たちは何も言わなかったのかって?
多分、大丈夫だ。
嫁たちとネイアさん、ここ一か月くらい一緒に旅をしていてすっかり仲良くなったからな。
だから、俺がネイアさんを誘っても笑顔で見送っていたぞ。
ということで、俺はネイアさんを連れて渓谷へと飛んだのだった。
★★★
ネイアです。
今、ホルストさんと一緒に手を繋いで渓谷の上を飛んでいます。
私、こうやって空を飛ぶのは初めてなのですが……とっても気持ちいいですね!
何というか、こうやって空を飛んで他人が見ることができない景色を見ているというだけで不思議な高揚感を得ることができます。
それでその肝心の景色なのですが、最高ですね!
展望台から眺めるだけでも地層の重なりのコントラストはとてもきれいなのですが、ここまで近くまで来ると太陽の光が地層の中のピカピカな石に反射して光る様子が確認できて、とてもきれいです。
そんな風に私が景色を楽しんでいると、ホルストさんが声をかけてくれます。
「大丈夫?空を飛ぶのは怖くない?景色は楽しめてる」
「はい、怖くないです。それにこんなに間近で素敵な光景を見られるなんて。最高です!」
「そうか、それは良かった」
そう言うとホルストさんはニッコリと笑ってくれました。
とてもいい笑顔です。
こういうホルストさんの笑顔、私は好きです。
何というかとても無邪気で、私好みの笑顔です。
そんな笑顔を見ながら、私はホルストさんの手をギュッと握ります。
すると、ホルストさんの手からホルストさんの暖かさが伝わってきます。
ホルストさんってとても暖かい人なんです。
その暖かさがとても気持ち良くてずっと触っていたい気持ちになってしまいます。
できる事なら一生その暖かさを感じていたい。
ついそう思ってしまうほどの心地よさです。
……って、いけないですね。
ホルストさんには奥様がいらっしゃるというのに私は何てはしたないことを考えているのでしょうか。
反省、反省。もっと自重しないといけないですね。
でも、今だけ。今だけはこうしてホルストさんの暖かさを感じていたいです。
そう思いながら、私はホルストさんの手をさらに力いっぱい握るのでした。
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