第359話~密猟団殲滅~

 攻撃の準備が整ったので密猟団を捕獲にかかる。


「『聖光』」


 ヴィクトリアが目くらましのため魔法を放つ。


「うぎゃーー」


 いきなり魔法で目を潰されて密猟団の連中が悲鳴を上げる。

 そこへ俺とリネットとネイアさんの三人で突撃をかける。


 俺とリネットは生命力感知を使えるので闇夜の中でも平気なのだが、実はネイアさんも平気だ。

 ネイアさんの武道の流派である『武神昇天流』には暗闇の中でも気配だけで戦う技があるらしい。


 ということで三人で一斉に攻撃する。


「ぎゃー」

「ひい」

「お助け~」


 密猟団の連中が一人、また一人と地面に倒れていく。

 でかい叫び声が周囲にこだまする。まあ、大声をあげてここにいない仲間に注意を呼び掛けるつもりなのだろうが、その試みは成功しないと思うぞ。


「『極大化 陰話』」


 と、エリカが魔法を使っていたからこの辺にしか音は聞こえないので、森の奥にあるだろう密猟団のアジトには残念ながら警報は届かないと思うよ。

 残念でした~。と、俺に言えるのはそれだけだ。


 そんなわけで五分もかからずに密漁団を全員捕えたのだった。


★★★


「さあ、さっさとアジトへ案内しろ。言っておくけど変な気を起こしたら容赦なく首をはねるからな!」

「ご案内いたしますので、命だけはお助けを~」


 密猟団を捕まえた後は、そのうちの一人にアジトへ案内させた。


 残りの連中は縛り上げて木に吊るしておいた。

 こんな夜中でも肉食獣は活動しているみたいなので、もしかしたら襲われる可能性もあったが知ったことではないね。


 こいつらは今まで動物の命をもてあそんできた連中だ。

 木に吊るされて自分たちが動物に襲われるかもしれないという恐怖を味わえばいいと思う。

 そんなわけで密猟団の連中は放っておいてアジトへ突撃することにする。


「あそこです」


 密猟団の下っ端が指でアジトのある場所を指し示す。


 場所はさっきの所から三十分ほどの所だ。

 森の中の空き地に十棟ほどの建物が密集していて周囲を柵で囲まれていた。


 割と堅牢そうなアジトだが、俺たちには魔物の拠点をいくつも攻略してきた実績がある。

 この程度のアジトを攻略するのなんか朝飯前だ。


「よし、お前ら行くぞ!」

「「「「はい」」」」


 アジトも見つけたことだし、早速攻撃開始だ。


★★★


「『重力操作』」


 攻撃を始めるに際して、俺が魔法でアジトの奥深くに侵入する。

 中から密猟団の連中を追い立てるためだ。


「『極大化 天爆』」


 そして、上空へ向かって魔法を放つ。

 ドッゴオオオオンンン。

 上空で大爆発が発生し、周囲にすさまじい轟音が響く。


「何事だ!」

「なんだ、なんだ」


 その音を聞いて建物の中から密猟団の連中が一斉に飛び出してくる。


「『極大化 天火』」


 俺はここでさらに魔法を放ち、アジトの周囲の柵に火をつける。

 そして、建物の周囲からでも策が燃えているのが見えるようになると、『拡声』の魔法の効果がある魔道具を使って、こう叫ぶ。


「敵襲だ~!もうアジトに火がつけられているぞ~!このままでは全滅だ~!逃げろ~!」


 それを聞いて密猟団が大混乱に陥る。


「ひいいいいいい」

「お助け~」


 情けない声を発して逃げ惑い始める。


「えい、やあ」


 俺はそんな情けない密猟団の連中を容赦なくたたき伏せて行く。

 正直言えば弱すぎてゴブリンを狩るよりも楽な作業だった。


「城門の方へ逃げろ!」


 一部城門の方へ逃げて行くやつらもいるが、問題はない。

 何せこのアジトには城門が一つしかない上、その城門には俺の嫁たちが待ち構えているからな。

 ここの連中に嫁たちがどうこうできるわけがない。


 ということで、三十分ほどの作業で、俺たちは密漁団を全員捕えたのだった。


★★★


「『極大化 天土』」

「『精霊召喚 土の精霊』」


 密猟団を捉えた後は俺とヴィクトリアで即席の石牢を造り、そこに縛り上げた密猟団員どもを閉じ込めておく。


「アタシに任せておいて!」


 リネットが見張りを引き受けてくれたので、アリの子一匹抜け出すのは不可能だと思う。


 リネットがそうやって見張ってくれている間に、俺は捕えた密猟団のリーダーに捕えた動物たちの保管場所などについて聞き出す。

 リーダーは屈強そうな虎の獣人だったが、捕らえられて虜囚の身となった今では大人しく言うことを聞いていた。


「話します。話しますから、命だけは~」


 あげくそんな風に命乞いまでしてくる始末だった。

 虎の獣人ってもっとプライドが高そうなイメージだったのだが、所詮は密猟団に堕ちるような奴だ。この程度だったのだと思う。


 まあ、こんな奴のことはどうでもよい。

 それよりも動物たちを救出せねば。


 俺たちはリーダーの案内で動物たちの隠し場所へ向かう。


「こっちです」


 そうやってリーダーが案内したのは。


「地下牢か!」


 アジトの地下牢だった。

 入ってみると。


「ピー、ピー」

「ギャー、ギャー」


 捕らえられた動物たちの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。


「かわいそうに。この子たち、親や家族と引き離されて泣いています」


 俺たちの中で唯一動物の言葉が理解できる銀がそう言っているので、嘆き悲しんで泣いているのは間違いないと思う。


「さて、それじゃあサクッと助けるぞ」


 そう言いながら、俺たちは地下牢の奥の方へと向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る