第358話~密猟団殲滅へ向けて~

 翌日。俺たちは密猟団捕獲のための情報収集を開始する。

 町の警備隊やギルドの冒険者たちから情報を収集することにする。


 酒場には行かない。


「ならず者って、酒場なんかによくたむろしていますよね」


 と、ヴィクトリアが主張するのでやめておくことにした。

 他の全員も同意見だったからだ。


 ということで、まずは冒険者ギルドで情報収集だ。


 とは言っても、相手は冒険者。

 初対面の相手にそう簡単に情報はくれない。そこで情報交換を持ちかけることにする。

 他に稼げそうな情報と引き換えに情報を得るつもりだ。

 特にノースフォートレス付近のダンジョンの情報が喜ばれた。


「今、ノースフォートレス付近では新ダンジョンが結構出現して稼ぎやすい状況みたいですよ。アダマンタイトやミスリルのようなレアメタルも手に入るみたいで、かなり稼いでる冒険者も多いですよ」

「後、この前のスタンピードの影響か、ノースフォートレスのあたりでは最近魔物が多いので、そっちの方でも稼ぎやすいですね。ワタクシたちも最近稼がせてもらいましたし」

「そうなのか?それだったら出稼ぎに行くのもいいかもな」


 冒険者たちは常に稼ぎたいと思っているので、有益な情報には敏感だ。

 俺たちの話を喜んで聞いてくれ、代わりに密猟団の情報をくれる。


 その情報を総合すると。


「どうやら密猟団は森の中に潜伏しているようですね」

「密猟団は獣人と人間の混成部隊らしいね。お互いに足りないところを補い合っていて結構手強いみたいだね」


 というような情報を得ることができた。

 その後自警団で事情を聞いたら。


「潜伏場所は不明ですね」

「夜中に動物たちが寝静まっているところを襲うようですね」


 という情報も得ることができた。

 全体的に見ると、冒険者たちからの方が有益な情報を得られたので、やはり稼ぎがかかっている分、冒険者の方が情報には敏感なのかなと感じた。


 さて、これらの情報を元に作戦を立てることにする。


★★★


 その日の夕方ごろ。

 俺たちは平原と森の境目くらいにいた。

 密猟団は夜に狩りをするために森から出て来るらしいので、そこを襲撃しようという腹積もりである。


 密猟団に見つからないように馬車を岩陰に隠す。


「『精霊召喚 土の精霊 風の精霊 木の精霊』」


 そしてヴィクトリアに精霊を何体か召喚させ、捜索させる。


 これで準備は整ったのでご飯にする。

 とはいっても、火を使って料理をすると密猟団に見つかる可能性があるので、パン屋さんで買ってきたパンを食べる。

 具がたくさん入ったサンドイッチやクリームたっぷりのクリームパンなどの菓子パン、おやつのケーキなどが並んでいる。


 若干甘いものの比重が高い気がするが、嫁や子供たち、ネイアさんと甘党揃いなので誰も文句を言わない。

 それどころか嬉しそうに食べている。


「このクリームパン、とってもおいしいです!」

「私はシフォンケーキがいいですね」

「アタシはメロンパンが良かったな。ネイアちゃんは?」

「私はイチゴのショートケーキがおいしかったです」

「ほら、ホルスターちゃん。プリンが口についてるよ。銀姉ちゃんが拭いてあげる」

「うん、お願い」


 と、楽しそうに食べている・

 俺的には今日はもうちょっと塩辛いものを食いたい気分だったが、皆が満足しているようなので何も言わないことにする。


 そうこうしているうちに夜が来た。


★★★


「ホルストさん、来たようですよ」


 夜になった頃、ヴィクトリアの精霊から報告があったらしくヴィクトリアがそんな発言をする。


「それじゃあ、ホルスターと銀は大人しくしているのよ」

「うん、行ってらっしゃい」

「ホルスターちゃんのことは銀にお任せください」


 ホルスターと銀を馬車に残して他の者で出かける。


 え?子供だけで危なくないかって?

 大丈夫だ。

 ホルスターはエリカと同じように探知魔法に長けているので、密猟団程度では気づかれずに近づくなんて不可能だ。


 後、前にヴィクトリアの叔母さんのセイレーンからもらったペンダントを渡してあるので、いざという時は俺たちに連絡するように言ってある。


 その上、この前ヴィクトリアのお母さんにもらった『究極結界魔法陣』なる最強の防御魔法が付与された魔法剣を持たせてある。

 魔法を司る女神であるヴィクトリアのお母さんが付与した最強の防御魔法を密猟団程度がどうこうできるわけがない。

 俺たちでも突破できるか怪しいくらいなのに。


 ということで、後顧の憂いなく俺たちは密漁団に挑めるのだった。


★★★


「来ました!あれです!」


 森の近くに俺たちが潜んでいると、密漁団がやって来た。

 全部で二十人くらいいるらしい。


 密猟団の狙いはこの周辺の希少動物だ。

 ここらの平原には狐やウサギ、狼といったどこにでもいるような動物が生息しているのだが、その中に一定の割合でここにしかいない希少な種類が混じっていることで知られている。


 耳や尻尾の形がちょっと変わった狐だったり、ピンク色の毛を持ったウサギ、金色の犬歯を持ったオオカミなどだ。

 そういった動物たちはヴァレンシュタイン王国でも獣人の国でも保護動物になっていて捕獲が禁じられている。


 しかし、密猟団はそれらの動物たちを積極的に捕まえに行っている。

 遠くの国の好事家に売り飛ばせば高く売れるからだ。

 そして、その過程で普通の動物たちも狩ることになり、餌が減った魔物による被害が増えているというわけだ。


 密猟団はもちろんそんなものを欲しがる奴らもあさましい連中だと思う。


「まあ、お金儲けのために無秩序に動物を狩るとは許せませんね」


 連中の行状を聞いて、狐族の長の娘である銀も相当怒っていたが、その意見に俺も全面的に賛成だ。

 そんな連中はさっさと捕まえてしまって、官憲に引き渡して痛い目に遭ってもらうことにしようと思う。


★★★


「お前ら、準備はいいか?」

「「「「はい」」」」


 馬車から出た後、俺たちは密猟団捕獲のための配置についた。

 この辺りの地形は昼間俺とリネットで航空偵察をして把握済みだ。

 なので密猟団襲撃に適切な位置に隠れて機をうかがう。


 しばらくすると、人の気配がした。

 俺が生命力探知で確認すると、ヴィクトリアの報告通り二十名ほどの人数がいた。

 密猟団で間違いないようだ。


「攻撃開始!」


 そんなわけで、俺隊は早速攻撃を開始する。

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